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発表日:2023年03月06日
世界初、10空間多重光信号の空間モード多重増幅中継伝送に成功
〜従来の10倍以上の長距離・大容量光ネットワークの実現へ貢献〜
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、これまでの光ファイバと同じ直径を保ちながら伝送容量を10倍に拡大可能な空間モード多重光ファイバによる、世界最長(1300 km)の10空間モード多重信号の光増幅中継伝送に成功しました。
本成果により、従来技術では困難であった10以上の空間多重数拡張と長距離伝送の両立が可能になるため、光ファイバあたりの伝送容量の飛躍的な向上を見込めます。これにより、将来的なクラウドサービス拡大などにより増大する通信トラヒックを収容可能なペタビット級の超多重スケーラブル光ネットワークの実現に貢献します。また、NTTが提唱するIOWN(※1)構想・Beyond 5G/6G時代を支える大容量光ネットワークの実現に貢献する次世代の伝送基盤技術として期待されます。
今回の成果は、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催される光通信技術に関する国際会議OFC2023(The Optical Networking and Communication Conference & Exhibition)の伝送部門において査読委員から最も高く評価されたトップスコア論文(※2)として採択され、3月6日(現地時間)に発表されます。なお、本研究成果の一部は,国立研究開発法人情報通信研究機構の「Beyond 5G研究開発促進事業」の委託研究(採択番号01001)により得られたものです。
*参考画像は添付の関連資料を参照
1. 研究の背景
5Gサービスの開始や分散型社会への生活様式の変化に伴い通信需要は継続して増えており、これまで長年にわたり情報通信インフラを支えてきた既存の光ファイバを用いた光通信システムが提供できる伝送容量の限界が近年見えつつあります。キャパシティクランチ(※3)と呼ばれるこの伝送容量の危機を回避するために、次世代の光通信システムを実現する基盤技術として空間分割多重技術が現在注目を集めています。空間分割多重技術は、これまで主に利用されてきたシングルモード光ファイバ(SMF)と比べ、光ファイバの中の光の「通り道」の数(これを多重数といいます)を増やすことで光ファイバあたりの伝送容量の飛躍的な向上が期待されている次世代の有望な光通信技術です。
空間分割多重技術の一つの形態として研究開発が進められている空間モード多重伝送技術では、マルチモードファイバ(MMF)と呼ばれる空間モード多重光ファイバを利用します。MMFは、複数の空間モードを用いてそれぞれ異なる情報を送ることで伝送容量を多重数(空間モード数)に応じて増やすことができ、特にこれまでのSMFと同じ直径(標準クラッド径)を維持したままでも単一の光ファイバで10以上の多重数へ容易に拡張できる点が特長です。一方で、送られた光信号から受信側で情報を取り出す際には、伝送途中に発生する異なる空間モードの光信号の混じり合い(空間モード結合)や、各空間モード光信号の受信器への到着時間ずれ(モード分散)によって生じる信号波形歪みを、受信機におけるMIMO(Multiple-input multiple-output(※4))型デジタル信号処理によって取り除く必要があります。特に、より多数の空間モードを使うほど、また距離が長くなるほどモード分散の影響は大きくなり、それに応じて要求されるMIMO信号処理の処理量がボトルネックとなるため、これまで空間多重数の拡張と光信号の長距離伝送を両立することは困難となっていました。
*以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
参考画像
https://release.nikkei.co.jp/attach/650609/01_202303061648.png
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/650609/02_202303061648.pdf