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脱炭素のカギは「レンチン」? マイクロ波に熱視線

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科学&新技術
2021/9/2 2:00
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電子レンジやレーダーなどに使われる「マイクロ波」。対象物に効率良くエネルギーを伝えられる特性に、化学をはじめとする大手メーカーが熱視線を送る。樹脂製品の資源循環を進めるカギとなるかもしれないと期待感を高めている。

マイクロ波化学の大阪事業所(大阪市)内に設けた実証設備でアクリル樹脂のリサイクルを試験している

マイクロ波化学の大阪事業所(大阪市)内に設けた実証設備でアクリル樹脂のリサイクルを試験している

6月、自動車のランプカバーなどに使われるアクリル樹脂のリサイクルを実証する設備が大阪市で稼働を始めた。廃アクリル樹脂を分解するために熱を加える際に使うのは、化石燃料ではなく、電子レンジでおなじみの「マイクロ波」だ。

この設備を建設したのは、化学大手の三菱ケミカルと、2007年設立の大阪大学発スタートアップ、マイクロ波化学(大阪府吹田市)。分解した原料からアクリル樹脂を製造し、そのコストや品質、エネルギー消費量などを検証していく。実証設備で試す廃アクリル樹脂としては、三菱ケミカルの製造工場で生じる廃材に加え、ホンダとの連携で集めた廃車のテールランプなども用いる。三菱ケミカルは24年の稼働を目指し、アクリル樹脂のリサイクル工場の建設を検討していく。

器を温めずに中身を温められる

電磁波の一種であるマイクロ波の最大の特徴が「特定の物質に対して、分子レベルでエネルギーを直接伝えられること」だ。

身近な例として、牛乳を温めるのを思い浮かべると分かりやすい。鍋に牛乳を入れてガスコンロで加熱すると、鍋全体が温まり時間もかかる。電子レンジだと牛乳を入れたマグカップ自体は熱くならないのに、中の牛乳自体はちゃんと温まっている。しかも鍋より早い。

つまりエネルギー効率が高く、省エネにもつながるといった強みがあるわけだ。マイクロ波化学はそんなマイクロ波を応用する研究をリードしてきた。従業員60人程度と小規模ながら、マイクロ波を当ててつくれる化合物の生産量は年間2万~3万トン。「化学メーカーのラボ(研究室)だとコップ1杯分くらいしか生産できない」(吉野巌社長)のと比べると能力の大きさが分かる。

この大規模な生産設備を実現したのが、社員の8割ほどを占める化学者や物理学者、電気や機械の設計者といった専門家で構成する開発チームだ。マイクロ波を当てる対象物によってエネルギー吸収の性質は異なるため、ムラなく効率良くエネルギーを吸収させるために最適なマイクロ波の周波数や強度、当て方などを地道に検証し、その結果を膨大な量のデータとして蓄積してきた。

電機メーカーだと化学者が少なく、化学メーカーには物理学者が少ししかいない。「産業のはざまでイノベーションが起こる」(吉野社長)という信条から、7年もの歳月を試行錯誤に費やしてきた。その努力が実り、世界初となるマイクロ波で加熱する大型設備を持つ工場を14年に大阪市に設けた。

それ以降、マイクロ波化学がタッグを組む産業の幅は広がりつつある。大阪事業所に工場ができた14年には東洋インキ向けにインキ原料の脂肪酸エステルを出荷開始。17年には太陽化学と共同で食品添加剤のショ糖エステルの生産工場を設けた。19年からはペプチドリーム塩野義製薬積水化学工業が共同出資で設立したペプチスター(大阪府摂津市)に出資。マイクロ波を活用したペプチド原薬の生産設備を開発している。

「脱炭素」で引き合い4倍

足元ではさらにマイクロ波化学へのラブコールは強まっている。その理由は「脱炭素」意識の急速な高まりだ。21年は前年に比べて4倍ほど引き合いが増えており、そのほとんどが脱炭素関連だという。数年前にペットボトルのリサイクルが盛り上がった際も問い合わせが相次いだが、「半年もすると世間の熱は冷めていた」(吉野社長)。今回はその時と違って「本気度を感じる」(同)という。

三菱ケミカルと実証実験を進めるケミカルリサイクルで対象とするのは、アクリル板や自動車のランプカバー、水族館の水槽などに使うアクリル樹脂「PMMA」。一連の流れで製造したアクリル樹脂は、化石資源を用いる従来のリサイクル手法と同水準の強度や透明度を持つという。その一方で、製造工程における二酸化炭素(CO2)排出量は70%以上削減できる見込みだ。

世界全体では需要が300万トンを超えるとされるPMMA。その原料となる「MMA」で三菱ケミカルは世界シェアトップ。マイクロ波でのケミカルリサイクルが実現できれば、脱炭素化を進めながら代表製品の競争力も落とさずに済む。

水素製造も視野に

マイクロ波化学の吉野社長は「他の産業は変わってきたのに、化学産業だけ大きく変わっていない」という問題意識を抱えてきた。移動手段は馬車から飛行機、自動車、今では電動車に。通信手段も文鳥から電信、電話、インターネットへ。一方の化学は巨大プラントでナフサを分解して製品を造っていく事業構造が今なお残る。

石油化学事業では、石炭火力で外部から熱を加えて化学反応を起こしている。「鍋で牛乳を温める」ような設備であり、エネルギー効率が悪く、化石燃料の消費も避けられない。原油やナフサの分解過程といった多くのエネルギーを使うコンビナートの上流でマイクロ波を活用できれば、CO2排出量の削減や生産効率の向上といった効果が期待できる。

実際、マイクロ波化学が持つ技術に他の化学大手も注目している。ひと足早く14年に独BASFとポリマーの製造工程の効率化で提携し、17年には三井化学と資本・業務提携している。現時点で実際の事業化には至っていないものの、脱炭素なども念頭に複数のプロジェクトの検討を進めているという。

化学や石油だけでなく、鉄鋼やセメント、ガラスメーカーといったエネルギー消費量の多い業界にも応用できれば、その威力はなお大きくなる。加えて、メタノールの分解にマイクロ波を活用し、水素をつくっていくことなどもマイクロ波化学は視野に入れている。

巨大プラントにおけるエネルギーの必要量を考えると、マイクロ波の応用に即時性があるとは言い難い。マイクロ波化学自身が技術や設備の大型化に7年を費やしたことからもその難しさは分かるだろう。ただ、資源循環や省エネといった課題の解決策の一つとして、マイクロ波を活用できないかどうかを検討してみる価値は十分にある。

(日経ビジネス 生田弦己)

[日経ビジネス電子版 2021年8月30日の記事を再構成]

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