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数枚の正常画像から異常を検出する。橋りょうの異常を検出した例(出所:東芝)
東芝は23日、数枚の正常画像を分析して異常箇所を特定する人工知能(AI)技術を開発したと発表した。インフラ点検向けを想定したもので、現場での学習が要らない。ひび割れやさび、水漏れ、異物の付着、部品の脱落など、発生の頻度が低く、かつ未学習の異常であっても、高精度に検出できるという。2023年度の実用化を目指す。
橋りょうの高架下や山岳地の鉄塔、太陽光パネルの裏側といった場所は、点検員が立ち入る際に危険が伴う。点検箇所を撮影した画像を基にAIが異常の有無を判断できれば、危険を冒さずに作業を省力化できるが、そうした人の立ち入りにくい場所では、AIの学習や判断に使う画像を大量に撮影するのが難しい。
加えて、AI技術そのものにも課題があった。同社によると、撮影した点検画像とあらかじめ用意した正常画像との間に見え方の違いがあると、正常な状態にもかかわらずAIが誤って異常とする場合(過検出)があったという。そのため、従来は過検出を想定して、人が目視で再度、点検画像を確認する手間が生じていた。
今回開発したAI技術では、点検画像の異常度をスコアマップとして表示する。
同社はまず、公開されている画像データベース「ImageNet」の写真を基に深層学習モデルを構築。それを用いて、点検画像と正常画像の深層特徴量を導出した上で、点検画像と特徴量の似た正常画像を自動で選択し、比較して差分を取ってスコアマップを計算する。これにより、少ない枚数の正常画像でも異常スコアマップを計算できる。
このスコアマップの計算までは、既に知られた技術だが、そのままでは、前述のように正常であっても異常と判断する過検出が生じやすい。そこで同社は、数枚の正常画像から同じような特徴部分を差し引き、導出したスコアマップを補正する技術を開発した。
これにより、従来課題だった異常の過検出を抑える。公開データセットを用いて異常の有無を判断する精度を検証したところ、従来の89.9%から91.7%に向上し、「世界最高精度の性能を達成した」(同社)という。
(日経クロステック/日経ものづくり 斉藤壮司)
[日経クロステック 2022年5月23日掲載]