【投資持ち株会社】中国・アリババ集団などを保有。ファンド運用も。
日本電産は4月21日、関潤社長が兼務する最高経営責任者(CEO)を、永守重信会長が引き継ぐ人事を発表した。昨年6月に創業者の永守氏から関氏がCEO職を引き継いでから1年足らずのことである。
慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。
永守氏は過去にも2度ほど経営トップを引き継ぐトライをしており関氏への交代は当時、本人いわく「三度目の正直」だったそうだ。
後継者への引き継ぎに苦心するのは日本電産だけではない。ソフトバンクグループの孫正義氏は高額年俸でニケシュ・アローラ氏を候補として連れてきたがバトンタッチへの考え方が合わず白紙に戻っている。
ファーストリテイリングの柳井正氏は50代で玉塚元一氏に社長の座を譲るも、業績悪化を受けて復帰している。いずれも一代で巨大企業を築いたカリスマ創業経営者だからこその難しさなのだろうか。
しかしカリスマ創業経営者が興した米国テック企業に目を転じると様子が違う。ビル・ゲイツ氏が創業したマイクロソフトは現在3代目のCEOをサティア・ナデラ氏が務める。ナデラ氏は1992年にマイクロソフトに入社し2014年にCEO就任。つまり22年間、マイクロソフトに勤務している。
アップルではスティーブ・ジョブズ氏の次のCEOとして1998年に入社したティム・クック氏が2011年に就任している。勤務期間は13年だ。グーグルの現CEOであるサンダー・ピチャイ氏は2004年に入社して11年後の15年にCEOに任命されている。21年、アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏の引退を受けて2代目CEOになったアンディ・ジャシー氏は24年間アマゾンに在籍していた。
後継者を外部からスカウトしてきている日本と生え抜きから指名している米国という違いが興味深い。米国のように雇用の流動化が激しい環境において1つの企業にて長く活躍してきた人材がカリスマ的創業者の後継に抜てきされている。つまり企業文化こそが後継者問題を解くカギなのではないか。
先日、米国を代表するベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツの創始者で「HARD THINGS」などの著作で知られるベン・ホロウィッツ氏の話を直接聞く機会があった。
「アップルで優先されるのは美しいデザインを生み出すこと。50億ドルもかけておしゃれな新本社ビルを造った。アマゾンのジェフ・ベゾスはすべてに倹約を徹底し社員には10ドルのデスクを使わせていた。どちらの文化もうまくいっている。アップルは美しい製品を生み出しアマゾンは早く安く顧客に価値を届ける」と企業文化の大切さを語った。
固有の企業文化とともに長く過ごし育ってきた後継者こそがカリスマ創業者の引退後も企業を大きく飛躍させられるようだ。
[日経産業新聞2022年5月27日付]