【串カツ専門店】串1本は100~200円。関東圏を中心に展開。
11月4日、飲食店の店舗運営を管理するアプリ「V-Manage(ブイマネージ)」がリリースされた。開発したのは、国内最大級のフード業界向けプラットフォームを運営するインフォマートと串カツ田中ホールディングス(HD)による共同出資会社Restartz(リスターツ、東京・港)だ。
このアプリは、飲食店の開店準備から閉店後までの作業をリスト化して表示し、実施状況を記録する。仕事の進捗具合を管理することができて、本部からの指示も受け取ることができる。店舗運営を「見える化」するとともに、アルバイトだけで運営できるような体制を目指す。
発表会見に参加したインフォマートの中島健社長(左)、Restartzの箱崎竜太郎代表取締役(中)、串カツ田中HDの坂本壽男社長
期待される効果として、まず社員の採用費と教育費の削減がある。現在、串カツ田中では1店舗につき1人以上、店長か社員が出勤していて、アルバイトへの指示出しや本部からの業務連絡などを行っている。これらの役割をアプリが「仮想マネジャー」として担う。
アルバイトの店員は、いつ、どの作業(タスク)を行うべきかアプリで確認できるため、店長や社員は指示を出す手間を削減できる。アルバイトは、実施した作業を入力したり、写真を送付したりして報告する。そして、この先に見えてくるのが「店長、正社員が不在な店舗運営」である。遠隔地からでもタブレットで作業の実施状況を確認できるため、必ずしも店長などが店内にいなくていいわけだ。
将来的には、1人の店長や正社員で、複数の店舗を管理する体制を目指す。実現すれば、慢性的な人手不足に悩まされている外食業界にとって、大きな力となる。
串カツ田中HDの坂本壽男社長は、「1年間で約150人の正社員を採用しており、採用活動に約1億円かかっている。これらを削減できれば、販売管理費をかなり圧縮できる可能性がある」と話す。同社は、約300店舗でアプリを導入する予定だ。
アプリのタスク管理画面。その日の何時に何をする必要があるかが表示される。実施したものにチェックを入れると、店長などの管理者が遠隔地でも確認できる
6月下旬から試験的にアプリを導入している一部店舗では、すでに効果が出始めている。
従来は厨房内に作業のチェックリストを貼っていたが、ホールとキッチンに1台ずつタブレットを設置して代替した。導入から約1カ月で、社員が指示を出さなくてもアルバイトが自分の作業をタブレットで確認し、自発的にこなすようになったという。さらに約2カ月後、3店舗で試験的にアルバイトだけでシフトを組んだところ、「特に問題はなかった。新システムを導入してから能動的に動ける従業員が増えた」と串カツ田中東日本営業部統括ジェネラルマネジャーの糠森理氏は効果の実感を語る。
外食店の仕事は、賃金水準の割に比較的労働時間が長く、業務も煩雑であるため、従業員が集まりにくい。リクルートの調査研究機関「ジョブズリサーチセンター」によると、2022年9月の三大都市圏(首都圏・東海・関西)におけるフード系の平均時給は1069円。全業種の平均よりも72円安い。坂本氏は「アプリの活用で削減できたコストは従業員の給料や福利厚生など、待遇の改善に充てたい」と話す。
三大都市圏(首都圏・東海・関西)のフード系の平均時給は全業種の平均よりも低い
アプリを展開するリスターツは、23年中に70社、1100店舗への導入を目指す。外食店では外国人労働者も多いため、今後は多言語対応が課題となりそうだ。
ウィズコロナで外食需要が回復し、インバウンド(訪日観光客)需要も見込まれるなか、外食店の人手不足解消は喫緊の課題だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)による業務改善に加え、店長や社員の役割や働き方の見直しなども、今後、改善が求められるだろう。
(日経ビジネス 藤原明穂)
[日経ビジネス電子版 2022年11月16日の記事を再構成]
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