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監査にDXの波、AIが暴く不正会計 電子鑑識も

日経ビジネス
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2022/6/21 2:00
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日経ビジネス電子版

監査法人トーマツはこのほど不正のリスクを検出する人工知能(AI)を開発し、まずグローバル展開する30社程度に導入した。どこも海外に数多くの子会社を抱える。財務情報が膨大なため、AIで省力化しつつ不正やミスを早期に検知できるようにする。

開発はまず過去の不正データをAIに学習させることから始めた。過去15年以上の間に公開された不正事例や有価証券報告書を基に、不正特有の財務指標の傾向を抽出した。

このAIを使うと、グローバル企業傘下の子会社数百社を「不正スコア」が高い順に並べるといった芸当が簡単にできる。不正スコアを構成するのは「棚卸し資産回転期間」や「売上高総利益率」「売掛債権の増減率」といった大量の財務データだ。

決算発表日、報道機関向けに資料を投函(とうかん)する企業の担当者。膨大な財務データの中に潜んだ不正を人工知能(AI)が暴く日が近づいている

決算発表日、報道機関向けに資料を投函(とうかん)する企業の担当者。膨大な財務データの中に潜んだ不正を人工知能(AI)が暴く日が近づいている

例えば、ある子会社の棚卸し資産が連続して増え、過去の不正事案と類似しているような場合に警告が出る。過去に棚卸し資産を架空計上した企業の不正を検証した第三者委員会の報告資料といったものが、AIに判断のための知恵をもたらす。

監査法人はこの警告に従って、子会社の全在庫データの提供を要求して検証したり、内部統制の強化について提言できたりするようになる。業界平均より売上高伸び率が高いといった傾向を検知するため業種ごとの指標を設定することもできる。


指標は2000近くある。表計算ソフトで作った巨大なスプレッドシートから怪しい点を探し出すのは、専門家であっても至難の業だ。人間の処理能力を超えるAIを使うことで、見過ごしの防止や不正の兆候の早期発見につなげる。導入後、すでにある導入先企業の海外子会社の会計計上ミスを発見したという。

進化する技術が監査のデジタルトランスフォーメーション(DX)を後押しするが、まだ課題は残る。

AIが学習できる過去の不正データは不足しており、企業間で財務管理のフォーマットが統一されていないという壁もある。均質なデータがそろわないとAIが本領を発揮できないため、現時点では活用できる範囲はまだ限定的だ。今後は監査先の同意を得た上で非公開の財務情報を取り入れて、子会社に対するリスク評価の精度向上を目指す。

熟練会計士の「技」伝える

「熟練した会計士は工場の整理整頓の仕方や社長の話し方などから『この企業は要注意だ』という勘が働く」。PwCあらた監査法人の久保田正崇・副代表は話す。

若手会計士にデジタルの世界で監査を疑似体験してもらおうと活用するのが、仮想現実(VR)技術だ。新型コロナウイルスの感染拡大で職場内訓練(OJT)の機会が激減していた2020年、研修用に映像コンテンツを制作した。監査対象の企業でどのような流れで不正会計が起こるかを体験できる。

PwCあらたは不正の発生現場を体験するVR映像を研修に取り入れ、若手会計士の監査の目を鍛える

PwCあらたは不正の発生現場を体験するVR映像を研修に取り入れ、若手会計士の監査の目を鍛える

VR用ゴーグルをかぶると、目の前にオフィス風景が広がり、企業の経理部員になったかのような設定だ。経理部長から契約書を渡され、受注データがないのに「売り上げに計上しておいて」と指示される。

すぐ近くでは営業担当者が上司に怒鳴られており、業績を上げることへの圧力をリアルに感じ取れる。監査人の視点から、不正会計をした企業と打ち合わせする場面も用意した。一連の流れを臨場感をもって体感することで、不正会計の手口を学ぶ。

久保田氏は「VRはあくまで補助ツール。人間の不正を見抜くのはまだ人間だ」としつつ、「事業内容や経営者の人柄を熟知した会計士の技を、若手に伝授しないといけない」と強調する。ESG(環境・社会・企業統治)対応で企業の情報開示が増える中、監査法人の業務負担は増している。人とデジタル技術が併走する場面は確実に増えそうだ。

◇    ◇    ◇

社会も会社組織も様々な顔を持つ人間で成り立っている以上、不正は完全にはなくならない。多くの組織は内部統制の仕組みを整え、不正防止対策を講じている。それなのにすり抜けてしまう。

では、どうすればいいか。以下に不正のトライアングルを掲載する。


不正を働く「動機」、不正の実行を可能にする「機会」、自らの行為を容認する「正当化」の3条件がそろうと、不正が起こりやすくなるとされる。このうち動機や正当化はどうしても個人の捉え方に左右される面が大きいが、機会を減らすことなら企業が主体的に取り組みやすいだろう。

今回は不祥事を起こした企業に対する監査法人の最新の動きを紹介したが、それを取り入れたら不正を根絶できるといった「打ち出の小づち」はない。コーポレートガバナンス(企業統治)に詳しい樋口晴彦・危機管理システム研究学会理事は「不正対策に終わりはない。計画→実行→評価→改善を繰り返すPDCAを回す必要がある」と話す。

不正は個人の問題ではなく、マネジメントの問題である──。経営者がこう認識することが出発点となる。

不正の兆候をAIで検知、その仕組みとは?――デジタルフォレンジック調査


そのメール、不正かも──。
AIを駆使し、膨大なデータを瞬時に解析できるデジタルフォレンジック(電子鑑識)調査。不正会計や検査不正が相次ぐ中、悪事の痕跡をあぶり出すのに役立っている。東芝の定時株主総会の運営を巡る問題の調査でも使われ、注目を集めた。
力を発揮するのがメール分析だ。不正を考える人は、ばれないように慎重に行動する上、日本語は曖昧な表現が多い。キーワード検索だけでは証拠を見つけにくかった。データ解析のフロンテオは、不正が疑われる文脈を捉えられるAIを開発している。
例えば、次のような誘いのメール。「久々に飲みに行けないかと思いまして。駅前の居酒屋に8時でどうですか」という文章と、「今夜でも飲みに行きませんか。前回から日もたっていますし……いい個室の居酒屋を見つけたので……」とでは、「飲み」「居酒屋」といったキーワードが同じように入っていても後者の方が、含蓄がありそうだ。AIは「後者は不正をする可能性が高い」と判断する。


仕組みはこうだ。ここでは「情報漏洩」の疑いがあるとする。分析対象の全メールからサンプリングして、まずクライアントや専門家らが、漏洩に「関連あり」「関連なし」に分ける。ここからがAIの出番だ。関連性あり、なしに含まれる表現を比較し、関連性ありにある希少度の高い表現に重みを付ける。
例えば、頻繁に出てくる「会議」は0.2点なのに対し、社外秘は2.5点、顧客リスト1.8点、機密情報1.6点などといった具合(点数はあくまで例)だ。この最適化を繰り返し、学習モデルがつくられる。最後に、このモデルを通じて全メールを解析させると、情報漏洩と関連性が高いメールに高スコアが出る。


結果として「社外秘の顧客リスト頂けますか」というメールは高得点になり、「本日の会議は必ず参加してください」などのメールは低くなる。フロンテオの野﨑周作テクニカル・フェローは「コミュニケーションがデジタル化する中、メールだけでなく、音声やチャットデータもAIで解析できる。不正検知のニーズは今後も高まる」と話している。
フォレンジック調査などを手掛けるセキュリティーコンサルティング会社ストーンビートセキュリティ(東京・千代田)の佐々木伸彦社長は「新型コロナ後、テレワークなどが普及し情報漏洩に関する相談が非常に増えている」と指摘。「特に中小企業では情報管理体制が脆弱。デジタルを駆使したセキュリティー体制の構築は不正をあぶり出すためだけでなく、社員の潔白を証明するためにも必要だという視点を持って進めてほしい」と話している。

(日経ビジネス 薬文江/小原擁)

[日経ビジネス電子版 2022年6月17日の記事を再構成]

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