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倉庫内を棚が「歩く」 モノタロウの新ハイテク物流

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2022/6/20 2:00
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モノタロウが新設した「猪名川ディストリビューションセンター」では、棚がこちらのほうに近づいてくる。「足元」を見ると、棚の下に自動搬送車(AGV)が潜り込んでいた

モノタロウが新設した「猪名川ディストリビューションセンター」では、棚がこちらのほうに近づいてくる。「足元」を見ると、棚の下に自動搬送車(AGV)が潜り込んでいた

日経ビジネス電子版

棚が群れをなして、近づいてくる。作業員はその到着を待ち構えるだけでよい。人が歩くのではなく、棚が「歩く」。倉庫内の作業の在り方を、根本から変えた物流施設が産声を上げた。

工具通販大手モノタロウ が、兵庫県猪名川町に新設した「猪名川ディストリビューションセンター(DC)」である。

歩行距離10キロ超が「ゼロ」に

なぜ、棚が「歩ける」ようになったのか。それは、ロボット掃除機のような形をした自動搬送車(AGV)が、棚の下に潜り込んで動かしているからだ。モノタロウは猪名川DCに日立製作所のAGV「Racrew(ラックル)」を約800台導入することで、歩く作業からの解放を狙った。

注文が入った商品を探し出し、つかみとるピッキング作業員は、これまで倉庫内を1日平均10キロメートル以上歩いていたという。「作業時間の実に6割を歩行に費やしていたのが、限りなくゼロになる。そこが一番のポイントだ」。モノタロウの鈴木雅哉社長は、そう力を込める。

モノタロウは製造業や自動車整備、建設工事などの現場で使われる工具などを約1800万アイテム販売する。人呼んで「工具界のアマゾン」。売り場の制約がないネット通販の強みを生かし、年に1度注文が入るかどうかという、極めてニッチな商品も取り扱っているのが特徴だ。

午後3時までに注文すれば、原則として当日中に出荷し、翌日には客の手元に届く。その利便性が広く知れ渡り、登録会員数は2022年3月末で700万を突破。連結売上高は毎年20%増を続け、22年12月期は2260億円と、初めて2000億円の大台に乗る見通しだ。時価総額は1兆円を超え(22年6月10日時点)、株式市場では名だたる大企業に伍(ご)する評価を受けている。

急成長を支えているのが、大量の商品を保管する物流施設だ。モノタロウにしかない商品を数多く取りそろえていることが、競争力の源泉となっている。

2000年、住友商事と米グレンジャーの共同出資で設立されたモノタロウ(当時の社名は住商グレンジャー)は、翌01年からネット通販の全国展開を始めた。最初に物流センターを構えたのは、大阪府東大阪市。150商品を在庫できる程度の小さな拠点で、「1日の出荷数が200個に達するまでは、手書きで送り状を書いていた」(鈴木氏)という。

その後、07年に兵庫県尼崎市に物流センターを移転。自動制御のコンベヤーを倉庫内に張り巡らし、50台以上のパソコンで出荷を管理するなど、このころから少しずつ機械化を推し進めていった。

14年には現在の尼崎DCが稼働を始めた。自動梱包機を初めて導入し、出荷能力を従来の2倍以上に引き上げた。しかし、ピッキング作業は「人力」のままで、作業員がカートを手で押し、センター内をぐるぐると歩き回って商品を探していた。カートにタブレット端末を設置し、端末が画像を表示して次にピッキングする商品を指示するシステムに刷新したものの、「歩きすぎ問題」の解決には至らなかった。

階をまたいだ「連携プレー」も

転機となったのは、17年。関東初の物流拠点として笠間DC(茨城県笠間市)を開業し、AGVの「ラックル」を初めて導入した。AGVが棚を持ち上げて作業員の元まで運ぶ。この「歩かない物流センター」への流れをさらに加速させたのが、22年4月20日に稼働を始めた冒頭の猪名川DCである。

大きく進化したのはAGVの使い方だ。AGVを使って棚を動かすのは笠間DCと同じだが、猪名川DCでは棚専用のエレベーターを設置した。棚がエレベーターに乗って、縦移動できるようになったのだ。

トラックで運ばれてきた商品は、まず1階の入荷スペースに到着し、作業員が棚に積み込む。すると、AGVが棚の「足」となって動き出し、棚をエレベーターまで送り届ける。エレベーターで2階に上がった棚は、扉が開くとすぐ、待ち構える別のAGVによって保管スペースへと運ばれる仕組みだ。

そして注文が入ると、該当商品がある棚の下にAGVが潜り込み、作業員の目の前まで棚ごと届ける。このとき、頭上のプロジェクターから光を当て、どの段ボールから何個商品を取ればいいかが分かるようになっている。作業員がピックアップした商品は3階に移動し、箱詰めされる。同じフロアに自動梱包機があり、商品の量に応じて高さを調節して箱を折り曲げるという流れだ。

作業員の元に棚が到着すると、棚のどの段ボールから何個商品を取り出せばいいかが、プロジェクションマッピングによる色分けで指示される

作業員の元に棚が到着すると、棚のどの段ボールから何個商品を取り出せばいいかが、プロジェクションマッピングによる色分けで指示される

自動梱包機は、商品の量に応じて高さを調整して箱を折り曲げる

自動梱包機は、商品の量に応じて高さを調整して箱を折り曲げる

笠間DCは平屋建てで、延べ床面積は約5万6200平方メートル(約1万7000坪)だった。これに対して、猪名川DCは地上6階建てで、延べ床面積は約18万9000平方メートル(約5万7000坪)と、3倍以上の広さを誇る。エレベーターとAGVによって縦方向に棚を運べるようにしたことで、階をまたいだ鮮やかな連携プレーが可能になった。

モノタロウはこれまで尼崎と笠間の2拠点で約50万点の在庫を確保してきたが、猪名川DCだけで約60万点の商品を保管できるようになる。規模はもちろん、AGVの数をみても、アマゾンに匹敵する、国内最大級の物流施設が誕生した。

猪名川DCは23年にフル稼働状態となり、それに合わせて尼崎DCは稼働を終える。今後は猪名川と笠間が国内の2大物流拠点になる予定だ。関東エリアの物量増加に対応するため、21年には茨城県内に「茨城中央サテライトセンター」という新たな拠点も立ち上げた。

猪名川ディストリビューションセンターの外観。地上6階建てで、約60万点の在庫を保管できる

猪名川ディストリビューションセンターの外観。地上6階建てで、約60万点の在庫を保管できる

東に置くか、西に置くか

モノタロウは売れ筋の商品に関しては東と西の両方の物流センターに在庫を持つが、注文頻度が少ないロングテールの商品は東か西の片方にしか置かない方針で運用している。「日本の国土の大きさを考えると、物流センターは1カ所でいい」というのが鈴木氏の持論だが、事業継続計画(BCP)の観点で、拠点を東西に分散させている。

18年の大阪北部地震の際、尼崎市は震度5弱に見舞われ、モノタロウの尼崎DCも、棚から商品が落ちるなどの被害が発生。復旧までに半日かかった。

「猪名川DCは岩盤の上に立っているので、巨大地震が起こった際も被害が少ないと想定している。建物も免震構造を採用したので、災害時のリスクを小さく抑えられる」(鈴木氏)。新名神高速道路川西インターチェンジから約2キロメートルに位置し、京阪神のいずれも約50分圏内でカバーできる、アクセスの良さも決め手となった。

新たな物流センターを建設する場合、既存施設と比べて生産性を50%以上高めるというのが、モノタロウの考え方だ。猪名川DCは、これまでにも増して「歩行の排除」を進めたが、機械が商品をつかみ取るロボットアームの採用は見送った。

「ネジや配管、継ぎ手、作業工具など、形が全然違う商品を約60万点も扱っている。商品ごとに画像を読み込ませて認識させるのは、時間もかかるし、時にはうまく商品をつかめないということにもなりかねない。そこはロボットに投資するよりも、人手をかけて対応し、浮いた費用を、作業員の待遇改善に充てるほうが最適だと考えた」(鈴木氏)

AGVが棚ごと運び、棚から商品を取り出すのは作業員が担う。機械と人との分業体制で、作業の効率と正確性を高めたのだ。

「超速配送」は目指さない

最近では、アマゾンやコンビニ大手などが最短30分から数時間という「超速配送」を売りにしている。しかし、モノタロウは、そこを目指すつもりはない。企業への配送がメインなので、「例えば午後8時に商品を届けても、業務時間は終わってしまっている。即日配送にコストをかけるよりは、翌日の仕事が始まるまでに確実に届けるほうが利便性が高い」(鈴木氏)と考えているからだ。

東西に大きな物流センターを構えることで目指すのは、当日出荷の締め切り時間を遅らせること。現在は午後3時に設定しているが、それを午後5時や午後6時にしても、翌日の午前中には届く出荷体制を整える構えだ。

ただし、配送に関しては、外部の配送業者への委託を続ける。「2000億円の売上高だと、年間の配送個数は2000万個程度。それに対して例えば、(運輸業界最大手の)ヤマト運輸さんは年間20億個を宅配している。100分の1の物量しかないのに、自前で配送ネットワークを築くのは現実的でない」(鈴木氏)という判断からだ。

しかし、トラック輸送の時間外労働規制で、ドライバー不足が懸念される「2024年問題」に直面すると、翌日中に届けられる範囲は狭まっていく可能性が高い。「運送業者に出荷個数の見通しを共有するなどして配送ルートを最適化し、生産性を高めていきたい」と鈴木氏は語る。

効率化が望めるところはコストをかけてでも自動化し、内製化しなくていいところは外部のサービスを利用する。モノタロウが10%超の営業利益率をたたき出し続けているのは、めりはりの利いたオペレーションによるところも大きい。

ただ、利用者が増え、物量が拡大するのに伴い、物流施設をどんどん拡大していかなければならないというジレンマも抱える。このままのペースで年20%の売り上げ増が続けば、3年後の25年にも次の物流センターが必要になる見通しだ。

「日本の産業分布と同じく、モノタロウの売り上げの6割は東日本が占めている。猪名川の1.5~1.6倍の出荷能力を持つ物流センターをさらに関東に新設するべく、候補用地の検討に入った」(鈴木氏)

圧倒的な品ぞろえを武器に、日本で急成長を遂げたモノタロウ。韓国、インドネシア、インドに子会社を設立し、海外展開の拡大も見据えている。アマゾンのように世界的企業になれるか。さらなる高みへと挑む、重要な局面に差し掛かっている。

(日経ビジネス 酒井大輔)

[日経ビジネス電子版 2022年6月16日の記事を再構成]

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