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2021年6月19日(土)
5401 : 製鉄・金属製品 日経平均採用 JPX日経400採用

【粗鋼生産世界大手】国内の粗鋼シェア1位。大型株の代表的銘柄。

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日本製鉄に迫る中国・宝山鋼鉄 「爆速」で研究開発

日経ビジネス
コラム
環境エネ・素材
2021/5/17 2:00
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日本製鉄の橋本英二社長は中国の脱炭素製鉄技術の開発強化を警戒する

日本製鉄の橋本英二社長は中国の脱炭素製鉄技術の開発強化を警戒する

日経ビジネス電子版

日本製鉄が業績のV字回復を急ぐ。鉄鋼生産設備の再編による損益分岐点の改善に一定のメドがつき、さらに鋼材値上げで利幅を増やす方針。中国最大手の宝武鋼鉄集団の脅威が日に日に増していることが背景にある。

「徹底して固定費を削った成果が出てきて、トンネルをなんとか抜けつつある」。7日の決算説明会で日鉄の橋本英二社長はこう述べ、業績の最悪期は脱したとの認識を示した。橋本社長はパンデミック(世界的大流行)を引き金に浮き彫りとなった国内鉄鋼事業の余剰生産体制にメスを入れ、生産設備の集約を進めてきた。構造改革に伴う巨額の減損損失や事業再編損によって2021年3月期まで2期連続で最終損益は赤字を計上したが、22年3月期の最終損益は2400億円の黒字を見込む。直近2年で取り組んできた固定費や変動費の削減による効果が業績を押し上げる。

費用削減だけに頼らず業績を安定回復するには何が必要か。今期は世界的な鉄鋼の需要回復に支えられて日鉄の単独粗鋼生産量は3期ぶりに4000万トンを回復する見込み。しかし人口減による国内鉄鋼需要の構造的な先細りは避けられず、日鉄は26年3月期の単独粗鋼生産量が3800万トン程度と10年前に比べて約20%減少すると見込む。橋本社長は数量が低水準でもしっかり稼ぐには「鋼材値上げ、『ひも付き価格』の是正が欠かせない。営業部隊が頑張って進めてきたが、まだ途上で、ほふく前進してグローバル水準に是正する」と課題を挙げる。

ひも付き契約は自動車メーカーなど大口需要家と鉄鋼メーカーが交渉し、価格や数量、品質など取引条件を決めて鋼材を生産販売する契約を指す。鉄鋼メーカーにとって製鉄所の稼働率維持につながる。受注生産に近いため、顧客にとっては成分やサイズ、加工の仕方などカスタマイズができる利点があり、大量購入による値引きも要求しやすいという。

鉄鋼メーカーにとってはデメリットもある。ひも付き契約の鋼材価格は原料炭や鉄鉱石など主原料の過去の価格を基に値決めするが、副資材も含めて原材料市況の上昇局面では転嫁が遅れやすい。一方、海外鉄鋼メーカーは原料のスポット市況変動に応じて即座に鋼材価格に転嫁するケースも少なくない。

こうした販売形態の違いは国内の鋼材価格が海外より低い要因になっていて、実際に日鉄の鋼材平均価格は前期にトン当たり8万6100円だったが、世界的には足元でトン当たり1000ドルを上回る。橋本社長は「海外に比べて国内価格は陥没したレベル」と説明する。ドルベースでトン当たり200ドル近い差は大きく、海外勢との業績回復のスピードに差が出ている。

ゼロカーボン・スチールでの競争

日鉄が焦る理由もよく分かる。鋼材価格を引き上げ、少しでも早く業績を立て直し、利益を再投資に回さなければ、世界の粗鋼生産の6割を握る中国鉄鋼メーカーに太刀打ちできなくなるからだ。

日本製鉄は生産体制の見直しで費用を削り業績を回復させる

日本製鉄は生産体制の見直しで費用を削り業績を回復させる

脅威の中心にいるのは粗鋼生産で世界2位の9547万トンを誇る宝武鋼鉄集団だ。その中核上場子会社の宝山鋼鉄は20年12月期の純利益が前期比1%増の127億元(約2146億円)とコロナ禍でも黒字をたたき出し、21年1~3月期の純利益は前年同期比約3.5倍の53億6000万元(約906億円)だった。

21年も宝山鋼鉄は規模、効率性、技術の3領域で市場のリーダーを目指し、攻めの姿勢を貫く。まず生産設備の強化や改良によって、粗鋼生産量を5100万トンに増やす。日鉄の連結粗鋼生産量を上回り、中国でも最大規模だ。宝山鋼鉄の強さは「デカさ」だけではない。コスト削減にも抜かりがない。販管費や物流費の削減や製鉄プロセスの運転効率化によって21年は前年比7億元の費用削減を目指す。

「年間を通じて鉄鋼技術のリーダーを目指して6つの製品を市場投入し、12の画期的な技術革新を起こした」。決算説明資料でこう強調するほど、宝山鋼鉄は先端技術の研究開発にも注力する。電気自動車向けの超軽量鋼材「BCB EV」、同じく送配電の変圧器、電気自動車のモーターに使う電磁鋼板、低炭素の金属材料製造、製鉄所でのリモート運転化など基礎から応用まで様々な技術を開発し、20年は売上高の3.1%に相当する87億5000万元(約1479億円)を研究開発投資に充てた。21年も3%以上を投資する方針だ。

一方、日鉄の研究開発費は直近3年間で約2200億円の計画で、20年3月期は776億円と売上高に占める比率は1.3%にとどまった。日鉄は中国勢に比べ技術的に優位性がある高付加価値の戦略商品の比率を高める方針。しかしこのまま宝山鋼鉄が「爆速」で研究開発を進めていけば、いつまでリードを保てるか分からない。

まして世界の鉄鋼産業は温暖化ガスを排出しない製鉄技術「ゼロカーボン・スチール」の研究開発という大転換期に本格突入する。「中国政府の製造業の戦略はカーボンニュートラルで世界の覇権を握ることで、鉄鋼業には今からゼロカーボン・スチールに向けて本格検討せよと指示している」と橋本社長は主張する。つまり素材や新技術開発に脱炭素製鉄技術という新たな要素が加わり、研究開発費に振り向けられる営業キャッシュフローの多寡がこれまで以上に企業の優劣につながっていく。

日鉄は水素還元製鉄など超革新技術を開発するには、「当面想定できる最小限の水準で約5000億円の研究開発がかかる」(日鉄)と試算している。日鉄はこうした巨費を吸収するべく、本業の稼ぐ力を根底から立て直す。再投資の原資を得るため適正な価格で鋼材を販売することはその一里塚にすぎない。「海外鉄鋼大手に比べて肝心要の本体製鉄事業の収益性がまだ低い。構造改革も途上でまだコストが高いが、価格も圧倒的に安い」(橋本社長)。技術敗戦は国内鉄鋼産業の存続すら揺さぶる事態となる。中国追走の気配を真後ろに感じながらも、日鉄はひた走るほかない。

(日経ビジネス 岡田達也)

[日経ビジネス電子版 2021年5月12日の記事を再構成]

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