【物流大手】子会社の佐川急便は宅配便国内2位。企業向け配送に強み。
軽自動車EVのデザインを発表する三菱自動車の加藤隆雄社長(14日、千葉市)
軽自動車で電気自動車(EV)の発売が2022年以降で相次ぐ。三菱自動車が14日、日産自動車と共同開発し今春以降発売する軽EVの実車を初公開したほか、ホンダやスズキ、ダイハツ工業も25年までの発売を計画する。軽自動車は新車販売の4割を占め低価格が売り物だ。主要部品の電池を始めコスト低減が課題で各社は航続距離を抑えるなどの試行錯誤を続ける。
三菱自は同日、カスタムカーの展示会「東京オートサロン2022」で、日産自動車と共同開発する軽EVの実車を初披露した。今春以降発売予定の車両の外観は、ガソリン車で人気の軽「eKクロス」とほぼ同じデザイン。車台は軽EV専用で両社共通だ。「22年は軽EV元年になる。EVは特別な車ではなくなる」。三菱自の加藤隆雄社長は狙いをこう説明した。
国の補助金を使った実質価格は約200万円から。日常の短距離移動を見込み、1回の充電で走る航続距離を約170キロメートルに抑えることで電池容量を減らしコストを下げた。高速道路で同一車線を維持する日産の運転支援なども入れ、軽ながら高機能であることもPRする。「ガソリン車よりはまだ高いが、走行時の静かさなど十分競争できる」(加藤社長)
日産・三菱自が先陣を切る軽EV市場には、日本車大手の参入が相次ぐ。ホンダは24年までに、軽二強のダイハツとスズキは25年までに軽EVを売り出す計画。ダイハツとスズキは実質で100万円台と日産・三菱自より価格を下げる考えだ。航続距離を抑えるなどの割り切り戦略でコスト低減できるかが開発の焦点となる。
ダイハツの奥平総一郎社長は「顧客が思う軽の価格とメーカー側のコストにはまだ隔たりが大きい」と指摘する。
他社との提携戦略もカギになる。ダイハツは親会社のトヨタ自動車と一緒に調達することで電池などのコストを抑える。すでに「一部の電池についてはトヨタグループ内での調達にめどがついている」という。トヨタと資本提携するスズキもダイハツやトヨタとの共同調達の枠組みに加わることを視野に入れる。
軽EVなど小型EVは中国勢との競争も本格化する。トラックなど商用車では中国企業の存在感が増している。東風汽車集団系メーカーが物流大手のSBSホールディングスにEVトラックを供給するほか、広西汽車集団もSGホールディングス傘下の佐川急便が使う軽EVを生産する。
軽自動車市場は21年に前年比4%減の165万台だった。14年がピークで21年まで3年連続のマイナスと減少傾向にあるが地方を中心に需要は底堅い。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは「軽の競争軸はEVなどの電動化になる」とみる。日産首脳も「軽がEV普及のカギを握る」と強調する。車両価格とともにガソリン車の燃費に相当する電費(電池の消費効率)の良さなどコストを意識した商品戦略が欠かせない。