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居心地激変「空間テック」 フィルムやミストで演出

日経ビジネス
コラム
環境エネ・素材
科学&新技術
2021/6/15 2:00
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AGCはスクリーンとガラスの両方の機能を持たせるフィルムを開発した

AGCはスクリーンとガラスの両方の機能を持たせるフィルムを開発した

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人間の感性に働きかけることで、商業施設やオフィスなどの空間の価値を高めようとの動きが広がってきた。可視光をコントロールするフィルムやミストに映像を投映できる装置など、その手段は様々。コロナ禍で外出が制限され実空間の意義が改めて問われたことで、こうした「空間テック」の普及が進みそうだ。

リゾートホテルから眺めるオーシャンビュー。海岸から見た海はやや緑がかっていたが、部屋の窓からはなぜか鮮やかなターコイズブルーに映る。海の青色の部分を濃く鮮明に見せているのが、三井化学と空間デザインを手掛ける丹青社が開発した「ポジカフィルム」だ。

両社は人間の感性や感情に訴える素材の開発や社会実装を目指しており、2021年5月に発表したポジカフィルムは協業の第1弾となる。三井化学合成化学品研究所の西本泰三主席研究員は「人間は8割の情報を視覚から得ている。五感の中でも視覚に着目しフィルムを開発した」と話す。

人間の視覚情報には、光が大きな影響を与える。太陽やライトなどの光源から出た光は物にぶつかると、様々な方向へと反射する。反射した光を目で受け止めることで、人間は物体を認識する。ポジカフィルムが対象物をくっきりと見せるのも、反射して目に入る光の色を調整する機能を持っているためだ。

貼るだけで窓からの景色が良くなる

光は電磁波の一種で波の性質を持ち、人間の目に見える「可視光」の波長はおよそ400~770ナノ(ナノは10億分の1)メートルだ。同じ光でも、虫が見えている紫外線、また電波などはこの範囲に入らないため、人間の目には見えない。

可視光の波長を長さの順に見ていくと、一番長いのは赤、そしてオレンジ、黄、緑、青と続き、紫色が一番短い。ポジカフィルムは黄色の波長部分にあたる550~650ナノメートルの光だけを吸収する化合物をフィルムに混ぜ込み、黄色の波長をカットする。風景や物体のくすみを和らげ、よりくっきりと見えるようにする。

三井化学と丹青社が開発した「ポジカフィルム」の仕組み。黄色の光をカットし、物体を濃く見せる

三井化学と丹青社が開発した「ポジカフィルム」の仕組み。黄色の光をカットし、物体を濃く見せる

「窓に貼れるような耐久性のある素材と化合物が合うかどうかなど、よいあんばいの材料を見つけることが開発のポイントだった」と西本氏は話す。仮に黄色の光の波長を吸収できても、フィルムに使う材料の分子が壊れてしまえば効果がなくなってしまう。過去の素材開発のノウハウや候補となる物質を見つける計算化学を駆使しながら、膨大な材料の中から適切なフィルム素材を見つけ出した。

ポジカフィルムは主にホテルや結婚式場、展望台、水族館など、大型の窓があり景観が重要な施設での需要を見込んでいる。商品のパッケージにも活用でき、眼鏡のレンズに貼れば読書の際に文字がはっきりと見えるようになるなど、建物以外での用途も想定される。

新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う働き方の変化により、新たな需要を見込むのがオフィスビル向けだ。

丹青社の企画開発センター企画部の菅波紀宏部長は「在宅勤務の増加で会社に行くことが特別になるなか、窓からの景色を良くするなど特別なオフィス環境にしたいという企業側のニーズがある」と話す。日常的に使うとは限らなくなったからこそ、居心地のよい空間にするというわけだ。

素材開発に強い三井化学と、デザインや社会実装に強い丹青社がタッグを組むことで、さらに空間の価値を向上させる製品開発を増やす。両社は今後、共同開発する製品を拡充し、25年度に20億円の事業規模を目指している。

こうした既存の空間を活用し、新たな価値を見いだす動きは他にもある。

AGCは既存のガラスに貼り付けて使うフィルム「グラシーンF」の販売を始めた。普段はどこにでもありそうな透明なガラスが、グラシーンFを貼るとプロジェクターの映像を表示できるスクリーンに様変わりする。

これまでもこうした機能を持つガラスはあった。ただ2枚のガラスに特殊なフィルムを挟む構造のため、既設の建物に導入するためにはガラス全体を取り換える必要があった。

それに対し、グラシーンFは巨大なラップを貼るのと同じ要領でガラスに後から貼り付けることが可能だ。スクリーンの用途や建物の大きさに合わせてフィルムのサイズを決められるようにした。

巨大な液晶テレビなど大規模な画面は数多くあるとはいえ、ガラスとスクリーンはもともとは技術的には矛盾する物同士だ。スクリーンの基本的な原理は、光の粒を屈折させることで光の透過量を少なくし、人間の目に映像を見せるというもの。一方、ガラスは光の透過量を増やすことで、ガラスの向こう側の像を見せるようにしている。

昼はガラス、夜は広告パネルに

AGCのビルディング・産業ガラスカンパニーアジア事業本部産業ガラス部の久保田雅樹マネージャーは「スクリーンとガラスといったトレードオフの関係にある2つのもの同士のバランスをいかに取るか。材料開発にその秘密がある」と言う。

グラシーンFでは特殊な微粒子を混ぜ合わせた樹脂を使い、フィルムの上にこの樹脂を載せていく。微粒子は、透過性を維持しながらスクリーンとして活用できるようにするためのものだ。

フィルムの厚さは150マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルほど。樹脂をフィルムに成膜する際に微粒子の濃度を間違うと透過しなくなる。樹脂を塗る印刷工程で少しでも分厚い部分が発生すれば、ガラスとして光を透過しなくなる。「微粒子の開発、成膜、プリントのそれぞれの技術が複合的に求められている」とAGCの久保田氏は話す。

グラシーンFは既に自動車販売店やアパレルショップといった大型ガラスのある店舗などで導入されている。昼間は通常のガラスとして使い、来店客が減った夜間などは広告を出すことも可能で、これまで活用できていなかった資産を最大限に生かすことにもつながる。

AGCはセンサー技術などを使って、スクリーンにタッチすることで映像が変化するような双方向の機能も打ち出し、映像を見せるだけではなく、ゲームといった用途も見込んでいる。

既存の空間を使って演出するだけではなく、「触れる」ようにする。そんな空間演出の技術も出てきた。

超音波関連の機器を手掛ける星光技研(長野市)が開発したのが、ミストに映像を映し出す専用装置「ミストスクリーン」だ。燃え上がる炎や自由に泳ぎ回る熱帯魚の映像をミスト上のスクリーンに映し出す。ミストを手で触れたり、人間がくぐり抜けることもできるといった新しい体験につながるため、ライブなどでの演出方法としても利用できる。

安定した大きさの粒を霧状に作り出し、噴き出すことで、ミストスクリーンを可能にしている

安定した大きさの粒を霧状に作り出し、噴き出すことで、ミストスクリーンを可能にしている

水の粒でできたミストスクリーンに映像を投映し、人が入ったり触ったりすることもできる

水の粒でできたミストスクリーンに映像を投映し、人が入ったり触ったりすることもできる

同社はもともと超音波加湿器などを開発・製造していた。「触れるスクリーン」を開発するきっかけとなったのは、12年に地元の長野工業高等専門学校の学生が同社を訪ねてきたことだ。

文化祭の出し物として「ミスト状の画面に映像を流すスクリーンを作りたいので、部品を購入したい」と相談に来た。だが学生がゆえに予算が少なく、購入資金が足りなかった。そのため同社がデモ機を貸し出し、学生にアドバイスする形でミストスクリーンの開発がスタートした。

ミストスクリーンの基盤技術となったのが、牛舎やビニールハウス内に小さな粒の消毒液を噴霧する技術だ。星光技研の制御技術を使い、4~5マイクロメートルの粒を作り出す。小さな粒を安定的に作り出すことができれば、ミストスクリーンを触っても人がずぶぬれになったり、映像を投映しても乱れたりすることがない。

同社の坂本真悟社長は「風速などミストを送り出すペースと粒の大きさを合わせ、安定的に噴き出すようにすることで、映像をきれいに流すスクリーンになった」と話す。長野高専の文化祭でも触れるスクリーンの展示は成功し、星光技研は装置の商用化に乗り出した。

コロナ禍で問われる実空間

ミストに映像を映し出す技術は海外では存在していたが、専用の装置が大きく施設に搬入できないなどの問題があった。

星光技研は装置の横幅が最小60センチメートルのタイプを開発し、ライブ会場やショッピングモールなどで使用する際に装置を連結して使えるようにした。既に商業施設の横浜ワールドポーターズ(横浜市)内の展示会場などで導入されている。

同社は今後、ミストに触らずに映像を楽しめる非接触型のタイプも検討する。新型コロナウイルスの感染拡大によりミストを触ることを敬遠する人も少なくない。「ミストスクリーンにモーションセンサーを掛け合わせ、触れることなく、スクリーンを体験できる装置も開発していきたい」(坂本氏)

パナソニックは21年6月に雲の浮かんだ空の風景や木々が揺れる様子を仮想的な天窓へ流す「天窓Vision」という空間演出システムの提供を始めた。自然や森林などに触れて仕事をすると業務効率や幸福度が増すといわれる「バイオフィリア」と呼ばれる概念に基づいて開発した。風景に沿って、リラックス効果のある音楽を流す機能もある。

コロナ禍によりオフィスや店舗を訪れる機会は減った一方、オンライン会議などデジタル空間で過ごす時間は増えている。コミュニケーションの取りやすい仕掛けやリラックス効果など、リアル空間の価値を高める技術の進化は続く。

(日経ビジネス 大西綾)

[日経ビジネス 2021年6月14日号の記事を再構成]

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