【総合電機大手の一角】防衛・宇宙関連機器でリード役果たす。
三菱電機は6月をめどに生産を終える熊本県の液晶モジュール工場について、電力を効率的に制御するパワー半導体の工場にする方向で検討に入った。脱炭素の機運が世界的に高まるなか、電気自動車(EV)や家電など幅広い分野で需要が高まっているパワー半導体の生産に力を傾ける。
パワー半導体の工場に転用を検討している熊本県菊池市の液晶モジュール工場
転用を検討するのは子会社のメルコ・ディスプレイ・テクノロジー(MDTI、熊本県菊池市)の工場。現在は車載用などのパネルを含む中小型TFT液晶モジュールを製造している。海外勢との競争激化を受け、2020年に液晶事業からの撤退を表明。子会社は清算する予定だが、生産終了後の工場建屋の活用方法は決まっていない。
三菱電機はパワー半導体を成長のけん引役と位置づけて強化している。既存のクリーンルームを活用できる点に加え、近隣の熊本県合志市にもパワー半導体の工場があり、立地上のメリットも期待できることから、パワー半導体拠点への転用が有力だ。半導体のウエハー上に回路を形成する「前工程」を担わせるよう検討する。
パワー半導体は三菱電機や富士電機、東芝など日本メーカーが存在感を示す。ただシェア首位の独インフィニオンテクノロジーズなども投資を積極化し、競争が激しさを増している。三菱電機は広島県福山市の新工場を22年春から本格稼働させるなど、今後5年間で設備投資に1300億円を投じる方針。既存工場の活用も含めて生産体制を強化し、海外勢に対抗する構えだ。