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人手不足・低い積載率… 物流業界の課題解決に挑む

日経ビジネス
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2021/9/8 2:00
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「物流業界は現場が強い」と話す佐々木太郎社長。運転手、配車担当、物流センター長が便利と感じるサービス開発を意識している

「物流業界は現場が強い」と話す佐々木太郎社長。運転手、配車担当、物流センター長が便利と感じるサービス開発を意識している

日経ビジネス電子版

人手不足、長時間労働、業務の非効率──。物流業界の課題を解決するサービス開発にいそしむのが、物流スタートアップのHacobu(ハコブ、東京・港)だ。大和ハウス工業日野自動車アスクルなど業界横断で出資を集め、全産業の物流改革を目指す。

現場重視のサービス

トラック運転手の物流センターでの待ち時間は平均1時間45分、荷台の積載率は40%未満──。メーカーの製造現場に材料を送り、消費者に商品を届ける物流は産業に欠かせないインフラだ。新型コロナウイルス禍で注目度が高まる「エッセンシャルワーカー」にもかかわらず、現場は今もなお電話とファクスが主流で、非効率な業務に追われる。

受発注や配送の進捗など全体像を把握できないため、物流センターの前でトラックが長時間の待機を余儀なくされ、離職率が高く慢性的な人手不足。Hacobuはそんな課題に挑んでいる。

搬送先にトラックが到着する時間を予告して待機時間を減らすシステムを軸に、トラックの位置情報を共有する管理システム、受発注や配送業務の進捗を荷主と運送会社に「見える化」するなど、様々なサービスを「MOVO(ムーボ)」ブランドとして展開する。

企業間物流は、メーカーの工場と物流センター、卸業者の倉庫、小売業者の物流センターや店舗といった多くの拠点が絡む。また、大手物流会社が元請けとなり、中小運送会社が下請け・孫請けとなるなど、こなしきれない仕事を運送会社同士で融通し合う複雑な業界だ。現状を効率化するには、「会社の枠を越えたデータ共有が必要」と佐々木太郎社長が2015年に創業した。

「出稼ぎ」で物流と出合う

佐々木氏は、創業前まで全く物流業界に縁がなく、「物流といえばクロネコヤマトか佐川急便などの宅配のことだと思っていた」。Hacobuは、消費者にモノを届ける物流市場が2.5兆円ほどに対し、企業間物流は約14兆円とみる。

待ち時間の削減は物流業界の課題の1つだ

待ち時間の削減は物流業界の課題の1つだ

佐々木氏が物流と出合ったのは、2回目の起業時だった。食のネット通販を手掛けていたがうまくいかず、アクセンチュア出身という経歴を生かして、ある乳業卸売会社のコンサルティング業務で「出稼ぎ」をしていた。このグループが抱える物流会社10社は、インターネットが当然となっていた14年当時、配送の受発注にファクスを使っていた。依頼内容はコスト削減だったが、書類を見ても請け負っている仕事の全体像が分からず、有効な手立てが出てこない。「こんなに遅れた世界があるのか」と衝撃を受けた。

メーカーや小売業が事業拡大を狙って販売地域を広げる際、傘下に販売会社や運送会社を新設するケースが多かった。こうして生まれた複数の運送会社が整理されないまま残存し、不効率の温床になっていた。また、物流を専業とする会社も、受注する仕事の振れ幅が大きくなりがちなため、元請け、下請け、孫請けの多重下請け構造でリスクを分散する傾向があった。

運送会社の再編統合という道もあるが、買収後に運転手が転職したら残るのはトラックだけ。業者の数が多いので買収資金もかさむ。企業の枠を越えて、荷主から元請け、下請けへの配送案件の流れと、その完了が一元管理できるシステムを開発しようと決意した。

なくてはならないものを作る

今のモデルにたどり着くまで、方針転換の連続だった。最初はトラックに搭載するタコグラフを格安で製造し、運送データを集めようとしたが、ハードウエアの開発が難航。次にスマートフォンでトラックの運行管理ができるサービスを始めたが、中小・零細の運送業者はIT(情報技術)投資に関心が低く、営業しようにもアポすら取れない。続いて配送の受発注を仲介するマッチングサービスを始めて軌道に乗り始めたが、結局、オペレーターが電話で仲介する必要があり、業界の構造問題を解決できなかった。

Hacobuの売上高推移。大手顧客との契約をきっかけに成長した

Hacobuの売上高推移。大手顧客との契約をきっかけに成長した

事業が上向くきっかけは、物流効率化の課題を抱えていた大和ハウス工業や花王など大手企業との出合いだった。物流工場にやってくるトラックがいつ、何を運ぶかの「納品予約システム」の開発依頼を受け、運行データが集まり始めた。大手が予約システムを使い始めると、関係する運送会社も使うようになり、加速度的にサービスが広まった。

コロナ禍も追い風になった。人手不足がさらに深刻化し、経営陣の関心が高まったからだ。従来の物流はコスト削減の対象部門になりがちだったが、トップが改革の意思を示すことで投資の決定がスムーズになった。

Hacobuは佐々木氏にとって3度目の起業だが、創業前、実は、外資系スタートアップの日本トップ就任の誘いもあった。前述のように2社目の経営はうまくいかず、「まずはお金を稼いで、起業の資金にすればいい」とも言われたが、「物流業界の課題を解決したいという内なる衝動を止められなかった」。

1社目の化粧品関連含め、過去の2社は、いずれも「あったら楽しいね」というサービスだったが、Hacobuは「なくてはならないものを作る使命感」が湧いた。起業前、物流業界の関係者に相談した際「物流領域は難しい」と止められたことも闘志をかき立てた。

サービスの拡大で運送データが集まってきたことで、別々の会社や拠点の荷物を同じトラックで運ぶ「共同配送」の提案も始めた。佐々木氏は、「現状は顧客ごとに提案するテーラーメードだが、いずれクリック一つで共同配送のアイデアが提案できるようにしたい」と語る。

(日経ビジネス 鷲尾龍一)

[日経ビジネス 2021年9月6日号の記事を再構成]

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