【M&Aで多角化】建設コンサルと建設、人材派遣、介護の事業を展開。
写真はイメージ=PIXTA
「中長期投資家にとって、IPO(新規株式公開)相場が軟調なこのタイミングは狙い目だ」。こう話すのは、会社員投資家の弐億貯男さん(ハンドルネーム)。ページビューが毎月約100万に上る人気投資ブロガーだ。2002年に投資を始めたこの投資家は、ハンドルネームの由来でもある「運用資産2億円」という目標を19年に達成したスゴ腕でもある。
今年前半のIPO市場では、初値が公募・売り出し価格(公開価格)を下回る公募割れ銘柄が相次いだ。だが、「これは相場全体の地合いの悪化によるところが大きい」と弐億さん。「直近のIPO銘柄の中には好業績にもかかわらず、連れ安になった割安成長株もある」と続ける。
上場した後に売買する「セカンダリー投資」を得意とする弐億さん。候補となる銘柄探しは上場前からではなく、上場から一定時間が経過した時点でスタートする。
「上場直後は人気化して株価が上昇しやすく、割安とは言えない。そのため少し時間を置いてから、公開価格に対して株価が低い銘柄を探していく」(弐億さん)
その後は株価指標の他、目論見書や成長可能性に関する説明資料、上場した時の社長のインタビュー動画などを分析して有望株を割り出していく。
株価指標の中で弐億さんが特に重視するのは、PER(株価収益率)だ。PERは利益の安定性と成長性で決まる指標。「割安度を測るのにPER以上に適した指標はない。最初のふるいにかける際、PERが15倍以下の銘柄を選ぶようにしている」
実際、ウクライナ・ショックで相場が大きく揺れた1~3月は、PERが低い銘柄ほど、下落率が低かった。「たとえ相場全体に連れ安しても、業績が堅調な低PER銘柄は、いずれ下げ止まる。有事の際の強さも魅力だ」(弐億さん)
また銘柄選定の際は、企業業績も重視する。売上高が年20%程度伸びている企業を狙い目に置く。中でもストック型ビジネスモデルの企業は、成長性が予測しやすく、安心して投資ができると話す。
利益成長が確認できれば、時価総額は気にしない。弐億さんは現在、優待株を除く17銘柄に約400万円ずつ投資をしている。実際、20億~30億円未満の時価総額でも十分に売買できる出来高があれば成長性を優先する。
そんなスゴ腕の弐億さんが今年苦戦を強いられたのは、3月に上場したイメージ・マジックだ。同社はTシャツやマグカップなどにデザインや文字などを印刷するオンデマンドプリントを手掛ける企業だ。
「成長性がある」と見越して投資を決めたのもつかの間、6月に22年4月期業績予想の下方修正を発表。損切りを余儀なくされたという。この経験から「上場後は一度決算を通過するのを待ってから、セカンダリー投資に参戦することにしている」(弐億さん)。
弐億さんが現在有望視する銘柄の一つは、今年の上場第1号のRecovery Internationalだ。同社は訪問看護サービスを手掛け、22年12月期の売上高は30%超の成長率が予想されている。「訪問看護は事務所のコストがかからず、投資回収も早い」
また、2月に上場した家事代行サービスを手掛けるCaSyは「参入障壁が低く同業他社が多いが、市場が成長しており、高い業績成長に期待ができる」(弐億さん)。
昨年末に購入したのは、建設コンサルタントや人材派遣などを手掛けるメイホーホールディングスと、メール配信システム大手のユミルリンクの2銘柄だ。前者はM&A(合併・買収)を通じた事業拡大を続けている点、後者は顧客の解約率が低いストック型の収益モデルに魅力を感じた。
兼業投資家の弐億さんは、生活費を賄う給与振込用の銀行口座と証券口座をきっちり分割し、株式購入のための追加入金はしない。また、証券口座の半分程度を現金に置くことで、株価下落局面で買い増しができるよう常に買い付け余力を残している。投資を武器に早期退職する「FIRE」は、50歳で達成しようか――。そんな考えもよぎり始めたという。
(井沢ひとみ)
[日経マネー2022年9月号の記事を再構成]
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