日本の中央銀行。上場しているが、株式の取引量は少ない
地方債とは、都道府県や市などの自治体が資金調達するために発行する債券のことです。自治体の主な歳入には地方税や地方交付税、国庫支出金などがあり、地方債はこれらに並んで重要な財源です。
地方債には幅広い投資家に買ってもらう市場公募債と、特定の金融機関を対象に割り当てる銀行等引受(縁故)債があります。総務省によると、2021年時点では東京都や北海道、京都市、北九州市など59の自治体が市場公募債を活用しています。
各自治体が個別に地方債を出すほか、複数の自治体が集まって発行することもあります。共同発行市場公募地方債という名で、03年4月から毎月発行されています。現在は37の自治体が共同で発行しており、各自治体は発行額全額について連帯債務を負います。
自治体は地域ごとに産業構造や人口動態、税収額が異なり、当然財政状態や信用力も同じではありません。ただ、地方債の発行市場では長らく「同じ月内に発行される同じ年限の地方債は全て同じ条件」という慣例が続いています。
例えば23年1月6日に条件を決めた京都市の10年債の利率は国債利回りに0.30%を上乗せした0.8%で、その後同月12日に条件決定した岡山市などの10年債も同じ利率でした。共同発行地方債も同様です。
厳密には信用力が異なる自治体の間で発行条件が同じなのはなぜでしょうか。SMBC日興証券の岩谷賢伸シニアクレジットアナリストは「リーマン・ショックを経て各自治体が財政健全化を進めたほか、もしもの際には国からの財政支援も期待できるため、それぞれの自治体の財政状況の違いがあまり注目されていない」と解説しています。
この「同じ月内なら同じ条件」という慣例に、最近変化の兆しが出てきました。背景にあるのが、国債市場の不安定さです。利回りを決める際の基準となる長期金利が日銀の金融政策で抑えられ、指標性への不信感が拡大。従来の利率水準では資金を集めにくく、金利の上乗せを迫られています。22年11月18日に起債した横浜市の10年債利率は0.499%で、先に条件を決めていた他の自治体の10年債よりも0.05%高くなりました。
グリーンボンド(環境債)などESG(環境・社会・企業統治)債の広がりも、慣例の変化につながっています。ESG債への投資は環境貢献につながるため投資家からの人気が高く、その一方で、発行量はまだ限定的です。結果的に需要が供給を大きく上回り、ESG債ではない普通の債券に比べ利回りが低く抑えられる(価格は割高になる)「プレミアム」がつく場合があります。
22年10月に三重県が出した10年物の環境債は利率が0.439%と、同じタイミングで出た福岡県や千葉県の10年債よりも0.01%低く決まりました。ESG債の広がりとともに、地方債の発行条件もさらに柔軟になっていく可能性があります。