【半導体関連装置】半導体検査・計測装置が主力。
光海底ケーブルに欠かせない湖北工業の部品「光アイソレータ」。一方向の光のみを通す
「ニッチトップ企業は独自の製品・サービスで顧客を囲い込み、安定的に稼ぐ力を持つ」
こう評価するのは、投資スクールの「複眼経済塾」を運営する塾長の渡部清二さんだ。中小型株の有望銘柄の発掘を得意としている。渡部さんは、有望なニッチトップ株を見極めるためには3つのポイントがあると指摘する。いずれかが当てはまれば、業績を伸ばす可能性が高く、株価が上昇する見込みも大きいという。
1つ目のポイントは、「事業対象の市場が成長している」。例えば、半導体検査装置で高シェアのレーザーテック。半導体市場の拡大を追い風に業績を伸ばし、2018年末と比較して株価は約12倍になった(4月1日時点)。渡部さんは市場の拡大が見込める銘柄として、古紙で作る包装材のトップメーカーで脱プラスチックの恩恵を受ける大石産業と、光海底ケーブル用部品で世界シェア首位の湖北工業を挙げる。
大石産業のパルプモウルド。農産物のトレーや家電製品の緩衝材などに使用される
古紙をリサイクルして作る大石産業の包装資材、パルプモウルドの国内シェアはトップクラス。傷みやすい農産物のトレーや、家電製品の緩衝材に使われる。「脱プラスチックの流れで、同社製品の利用拡大が期待できる」(渡部さん)
湖北工業の光海底ケーブル用部品は、世界シェアが5割を超えている。車載用や通信機器向けに使われるアルミ電解コンデンサー用リード端子も、世界シェア4割だ。「売上高営業利益率は20%超と非常に高い」と渡部さん。
2つ目は、「海外事業を拡大している」。事業対象の市場が拡大せずとも、顧客を広げれば業績を伸ばせる。ニッチトップ企業は国内シェアを十分に獲得しており、国内で顧客を増やす余地は少ない。そこで注目したいのが海外展開だ。
旭有機材の樹脂製バルブ。化学プラント、浄水場、半導体工場の配管などに使用される
例えば渡部さんが注目するのが、樹脂製のバルブを販売する旭有機材。配管に流れる水などの流量を調節する樹脂製のバルブを世界で初めて製造・販売した。プラント用で世界シェア首位に立つ。さびにくく、薬品や海水を流す配管などに使われる。
同社はリーマン・ショック後から積極的に海外投資を行ってきた。その効果もあり、米国をはじめ海外での売り上げを伸ばしている。足元では、半導体工場向けの需要が拡大している。
有望なニッチトップ株を見極めるための3つ目のポイントは、「既存の市場で新製品への転換を進めている」。駅構内の地図広告などを手掛ける表示灯はその一例だ。国内の主要な駅の8割超で同社のアナログ看板が設置されており、現在はデジタルサイネージの導入を進める。足元の業績は東京五輪特需の一巡などが響くが、「中長期で見て投資妙味がある」と渡部さんは指摘する。
「10年後には確実に看板のデジタル化が進んでいる。圧倒的なシェアを誇る同社は、既存市場に新製品を導入することで売り上げを伸ばせる。こうした"置き換え"で伸びる企業は投資家から見逃されやすく、狙い目と言える。耳目が集まる前に仕込みたい」と続ける。
(大松佳代)
[日経マネー2022年6月号の記事を再構成]