【精密機器に強み】腕時計中心にデジカメ、教育関連製品手掛ける。
沖縄県・石垣島の農地で農業用薬品などの開発に取り組む山川春樹さん
九州地方に住みながら沖縄県・石垣島にも拠点を持ち暮らしている山川春樹さん(仮名、68歳)。投資歴40年のベテラン投資家だ。山川さんが株に興味を持ったのは、相場師・是川銀蔵氏の雑誌記事を読んだのがきっかけ。20代後半の頃だ。
「刺激を受けて投資について考えるようになりました。また投資の勉強が経済を学ぶことにつながるとも思いました」と山川さんは振り返る。
社会にはどんな需要があり、それを満たす企業はどこか。投資先になりそうな会社を調べるうちに、あることを思い出す。
「大学時代は水泳部に所属。仲間だった工学部の友人2人が『こんな将来が訪れる』と話していたが、気が付くと2人が話す通りになっていた。2人には先を見通す目があったと感じ、そのうちの1人が就職先として選んだ日立製作所に興味を持ち、最初の投資先として買いました」と話す。40年前のことだ。
山川さんは自らの性格を「ビビりで根に持つタイプ」と笑いながら分析。こうした性格のためか、「一度、この会社はいい」と判断した銘柄とはとことん付き合う。1回の売買で終わりにするのではなく、株価を見続けて「安くなったと思えば買い、高くなったと思えば売る」を繰り返す。買値より株価が下がれば、もちろんナンピンする。
現在、保有している日立株の平均買値は約3500円。6月上旬時点の株価のおよそ半分だ。株価が7000円を上回ったら、100円刻みで少しずつ売却していく計画だ。こうして1つの銘柄を長期で売買して資産を増やしていくのが山川さんの手法だ。
もう一つの主力銘柄、カシオ計算機とも40年来の付き合いだ。「同社の電卓には他社にない機能が搭載されており、『面白い製品を作る会社』と思って投資を始めました」
これまでの売買回数・売買株数は日立を大きく上回り、40年の間に大きな利益をもたらしてくれた。残念ながら今、保有しているカシオ株の平均買値は、現在の株価を下回り含み損の状態。だが折を見てナンピンをし、平均買値を引き下げている。
こうした投資法のため、1銘柄当たりの保有株数が多くなる傾向にある。日立やカシオほどではないが、20年ほど売買を繰り返している九州電力は今のところ、1万6000株を保有している。
こちらも現在の株価より平均買値が高く、含み損が生じている。「売却しなければ、リアルな損失にはならない。原発再稼働の思惑もあり、いずれ株価は上昇すると思い、持ち続けます」との構えだ。
現役時代、新興国の開発支援業務に従事していた山川さんは、最後に訪れた西アフリカのマリ共和国に思い入れがある。支援の肝は現地の人たちの経済的自立にあると考え、現地の資源を活用した農業用薬品などの開発ができないか活動している。そのために現地の気候に比較的近いと思われる石垣島に農地を造り、実験を行っている。2拠点生活はこのためだ。
現役時代の仕事は海外出張が続く業務だったため、体力を考えて55歳で早期リタイアした山川さん。リタイアに備え、それまでに築き上げた資産の配分を見直した。それが下のグラフだ。
金融資産はハイ・ミドル・ローのリスク別に3等分。これまでよりも株式比率を下げた形だ。この比率であれば、株式市場が暴落しても資産が大きく減る可能性は低い。「現役時代は年10%などのリターンを求めたいと思っていましたが、今は年3%程度で十分。そのためのアロケーションです」と話す。
(佐藤由紀子)
[日経マネー2022年8月号の記事を再構成]