【テープ基幹の総合材料メーカー】液晶・半導体、医療用など多角展開。
毛織物の老舗ニッケは、学生服向け高機能複合素材の開発で高い技術力を持つ(写真はイメージ=PIXTA)
技術的な観点から有望銘柄に注目する「工藤特許探偵事務所」。過去2年間におけるYK値(下囲み参照)の成長率が高い銘柄を、業種ごとに紹介していく。今回は「繊維製品」に着目する。
「繊維製品」分野で大きく注目されているのは、機能性繊維素材に関する技術だ。衣類はもちろん、エアバッグやタイヤ、繊維強化プラスチック、医療用機器、2次電池部品(セパレーター)など、その応用製品は多岐にわたる。生活に身近な製品が多く、ハイテクな印象はあまりないかもしれないが、実際は技術開発競争が激しい業種だ。「繊維製品」に属する銘柄から、YK値成長率の上位4銘柄を紹介する。
第1位はニッケ。制服向けの機能性の高い繊維材料を手掛けており、ウールと合成繊維の複合素材で技術力を伸ばしている。この素材はウールに特殊な製法で合成繊維を織り込んだもの。ウールの風合いを維持しつつ、合成繊維の特徴である耐久性や弾力性を備える。羊毛を原料とするウールを活用する同社の製品は、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも優れている。時流に乗って今後も成長をしていくと予想する。
第2位の住江織物は、インテリアや車両内装向けの繊維製品を手掛ける。インテリアと車両内装向け製品が主力。リサイクル製品にも注力しており、環境関連の表彰制度で複数の受賞歴がある。技術力が伸びているのは樹脂シートなどに立体模様を加工する「エンボス」という技術。意匠性を高めながら、生産性向上も図っている。同社の得意分野であり、さらなる発展も期待できる。
第3位のセーレンはエアバッグや合成皮革など、自動車向け製品が主力の企業。近年は新規事業として人工衛星も手掛けており、既に3基を打ち上げている。YK値を伸ばしているのは、産業用高精細インクジェットシステムに関する技術だ。繊維だけでなく、セラミックス、プラスチック、様々な素材に微細なデザインを施すことができる。凹凸を作ったり、電子回路を印刷したりできるため、応用範囲は広い。インクジェット印刷は多品種少量生産に向いているので、多様化しているマーケットのニーズに着実に応えていくだろう。
第4位のゴールドウインはスポーツウエアの製造・販売を主力とする会社。YK値が伸びているのは、水着など、体に密着しながらも動きやすい衣類の製法に関する技術。従来の製法に比べて、着心地、デザインの自由度、生産性などの向上が期待できるという。コロナ禍が収束すれば、スポーツに取り組む人々は増えると考えられ、同社への恩恵も期待できる。
紹介した4銘柄以外では、消防ホースや防火服に強みがある帝国繊維、肌着の大手で機能性素材も手掛けるグンゼ、繊維製品に加え、化成品やメカトロ関係も強いクラボウなどが技術優良銘柄として挙げられる。
[日経マネー2022年7月号の記事を再構成]