【電線中堅】JX系。電線・ケーブルのほか電子材料も手掛ける。
古河機械金属は海底鉱物の採掘装置に関する技術を伸ばしている。写真は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の海洋資源調査船
技術的な観点から有望銘柄に注目する「工藤特許探偵事務所」。過去2年間におけるYK値(下囲み参照)の成長率が高い銘柄を、業種ごとに紹介していく。今回は「鉄鋼」と「非鉄金属」の2業種に着目する。
「鉄鋼」と「非鉄金属」分野で注目されているのは、高性能な鉄鋼や非鉄金属素材自体に関する技術。これに金属素材を加工する方法や、その応用製品、鉄鋼生産用の炉などに関する技術が続く。「鉄鋼」と「非鉄金属」に属する銘柄から、YK値成長率の上位4銘柄を紹介しよう。
第1位は古河機械金属。鉱山開発などに用いる削岩機の国内大手だ。車載用クレーンや産業用ポンプ、半導体などに使用される電子材料にも強みを持つが、海底鉱物の採掘に関する装置などでYK値が上昇している。これは海底に穴を掘り、その内部に存在するレアメタル(希少金属)を採取するためのもの。レアメタルは電子部品の製造に必要な重要素材だが、産出が一部の国に偏っているなど、供給面での懸念がある。このため、日本近海の海底に大量に存在するレアメタルの採掘技術が注目されている。将来的に大きな産業となる可能性があるため、注目したい。
第2位の三井金属は電子部品向け素材などを製造・販売する企業。ニッケル水素電池の電極に使用できる水素吸蔵合金や全固体電池の固体電解質など、電池関連の技術でYK値が伸びた。特に全固体電池は、EV(電気自動車)の電池を大容量化することが可能な点が注目を浴びているが、そのキーデバイスとなるのが固体電解質だ。EVの普及に合わせて需要も増えていくだろう。
第3位はタツタ電線。電線の他、電子部品を手掛ける。成長分野として、電磁波シールド関連のほか、医療機器関連の事業に注力しており、強みを持つ電磁波シールドフィルムに関する技術がさらに伸びている。電磁波シールドフィルムは、スマートフォンやタブレットなど、電子モバイル機器の内部回路を保護するために必要な部材。高速通信規格「5G」普及による通信端末用の需要拡大の他、EVに搭載する電子部品向けの需要増も見込まれる。
第4位の大同特殊鋼は特殊鋼専業メーカーとしては世界最大級の企業。東アジア市場を中心に高機能材料拡大に向けた取り組みを強化している。得意とするステンレス鋼やチタン合金に関する技術をさらに伸ばした。これらの特殊合金は高性能なEVや次世代の航空機には必須となるもの。コロナの収束後は輸送機器関連の需要が大幅に回復すると見込めるため、同社の業績も伸びていくのではないか。
今回取り上げた企業は、海底資源採掘やEV、5Gなど次世代を担う分野の技術に強みを持つ企業だ。さらなる飛躍を予想する。
紹介した4銘柄以外では、資源開発、製錬、素材開発の3つの技術を高い水準で併せ持つ住友金属鉱山に注目。また特殊鋼の他、磁気センサーにも強みがある愛知製鋼、チタン最大手の大阪チタニウムテクノロジーズなどが、「鉄鋼」と「非鉄金属」分野の技術優良銘柄として挙げられる。
[日経マネー2022年6月号の記事を再構成]
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