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【航空大手】10年1月に破綻後、市場にスピード復帰。路線別採算管理を徹底。

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稲盛和夫さんの経営哲学に学び、株式投資に生かす

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株式投資
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2023/1/18 11:00
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株式投資で大事なのは将来有望な企業を見つけることだが、その鍵は経営者が握っている。経営者の考え方に共感できれば、相場状況が悪い時もその株を長く持ち続けることができる。では、経営者とは具体的にどんなことを考えて企業のかじ取りをしているのだろうか。京セラや第二電電(現KDDI)などを創業し、日本航空を再建したことでも知られる名経営者、稲盛和夫さんの残した言葉や肉声からその真髄に近づいてみよう。必ずや株式投資の参考になるはずだ。

2010年4月、JALグループの入社式でメッセージの書かれた紙飛行機を飛ばす稲盛さん

2010年4月、JALグループの入社式でメッセージの書かれた紙飛行機を飛ばす稲盛さん

どうすれば会社経営はうまくいくのか。そんな経営者たちの悩みに答えるのが、今回紹介する本、『経営12カ条』(稲盛和夫著、日本経済新聞出版)だ。

「経営というと、複雑な要素が絡み合う難しいものと考えがちですが、理工系の出身だからでしょうか、私には、物事を本質に立ち返って考えていく習性があるようです。(中略)そして、物事の本質に目を向けていくなら、むしろ経営はシンプルなものであり、その原理原則さえ会得できれば、誰もがかじ取りできるものだと思うのです」と、著者の稲盛和夫さんはまえがきで述べている。

稲盛さんは、中小・中堅企業の経営者が多数集まる私塾「盛和塾」で、若い経営者たちに自分の経営の考え方や方法を話してきた(2019年末閉塾)。その中で、「どうすれば会社経営がうまくいくのか」という経営の原理原則を分かりやすく説明するために考え出されたのが、この「経営12カ条」だ。

半世紀以上にわたる経営の実践の中で生み出された12の経営の原理原則。本の中では、それぞれの原理原則がどうやって生まれたのか、なぜそれが必要なのか、どんな意味を持ち、どんな場面で力を発揮するのかが、ご自身の経験――京セラ創業時や第二電電(現KDDI)設立時、日本航空を再建した時のエピソードとともに語られている。

■長期経営計画は必要ない

例えば「第2条 具体的な目標を立てる」。その中で稲盛さんは、「長期の経営計画を立てる必要はない」という。なぜか。工場をつくる、人を増やす、借入金を増やすといった「経費が増える計画」は、景気変動と関係なく自分たちで決めた通りに進んでいくが、顧客から注文を受けて売上を上げるといった「売上を増やす計画」は、自分たちの力だけでは解決できないからだ。こうして、経費だけは計画通りに増えていくが、収入がそれに伴わないといった食い違いが起こる。

1979年5月、インタビューに答える京都セラミック(当時)の稲盛和夫社長

1979年5月、インタビューに答える京都セラミック(当時)の稲盛和夫社長

だから、京セラでは創業以来ずっと「1年間だけの経営計画」を立ててきたという。3年先や5年先は予測できないが、1年先のことなら見通せる。そして、その1年間の計画を何が何でも達成するように努め、1年間の計画が済んだら、その次の1年間の計画をさらに立てていく。このような尺取り虫のような歩みで会社を発展させてきた。

また「第5条 売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える」。その中で稲盛さんは、「足し算式の経営をしてはならない」と説く。経営の常識として「売上を増やせば、経費もそれに従って増えていくものだ」と考えがちだが、そうではない。こうした誤った常識にとらわれることなく、売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑えていくための創意工夫を徹底的に続けていくことが大切であり、そうした姿勢が高収益を生み出すのだ。

日本航空の再建では、航空業界の利益はフライトから生まれるのだからと、すべてのフライトの路線ごと、路便ごとの採算が、翌日には分かるようにした(それまでは分からなかった)。そうすることで、需要に応じて臨機応変に機材を替えたり、臨時便を飛ばしたりすることが現場の判断でできるようになった。全社員が実績を見て、少しでも採算を良くしようと懸命に取り組んでくれるようになったのだ。

■1962年に、今主流の「パーパス経営」に気づく

いずれも、実践者として、経営の本質と向き合ってきたからこそ生み出すことができたものばかりだ。「事業の目的、意義を明確にする」といえば、今でこそビジネス書のトレンドである「パーパス経営」を思い浮かべるが、稲盛さんがそれに気づいたのは京セラ創業3年目の1962年、「経営12カ条」としてこれを掲げたのは95年である。

振り返れば、98年に出版された『稲盛和夫の実学』(稲盛和夫著、日本経済新聞出版)もそうだった。同書は、その後に当たり前となる「キャッシュフロー経営」を先取りした本となった。「キャッシュフロー計算書」の作成が上場企業に義務づけられるようになったのは2000年3月期からだ。

時流にとらわれず、物事の本質に迫ることでしかたどりつけない、価値ある原理原則だからこそ、時代が追い付くかたちになったのだろう。

著者の稲盛さんは22年8月に逝去され、本書『経営12カ条』は、稲盛経営の集大成でありながらも遺作となった。先の見えない時代だからこそ、本書に込められた稲盛さんの思い、世界的経営者の教えが、私たちに大きな力を与えてくれる。

また、本書を読むだけでなく、そのエッセンスを稲盛さんの肉声から直接得てはどうだろう。稲盛さんによる「経営12カ条」の解説動画(講演録)が、期間限定で無料公開されている。23年2月末まで「日経BOOKプラス」の特設コーナーで閲覧可能だ。こちらの貴重な秘蔵動画もぜひご覧いただきたい。

経営12カ条 経営者として貫くべきこと
著者 : 稲盛和夫
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1870円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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