日本の中央銀行。上場しているが、株式の取引量は少ない
長期金利は国や企業、家計が1年を超える借金をしたりする際の金利のことです。代表的な指標として、国が償還までの期間10年の借金をするときに発行する「10年物国債」の利回りが使われています。
長期金利の水準は理論的にはその国の①実質経済成長率②物価上昇率③政府債務への警戒に対する上乗せ分――の3要素で決まるとされ、「経済の体温計」とたとえられています。景気が良くなり物価が上昇する局面では、金利も上昇する関係にあります。
ただ日本の長期金利は長年、「体温計」としての機能を果たしていないとの見方が広がっています。日銀が2013年にはじめた量的・質的金融緩和で、国債を大量に買い入れて長期金利を意図的に低く(債券価格は高く)抑えたためです。
16年には短期金利をマイナス0.1%、10年物国債の利回りをゼロ%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)も始めました。伝統的な金融政策では短期金利のみを操作するため、長期の金利に誘導目標を設けるのは異例です。
日銀が10年物国債の利回りを操作している理由は、民間が設定する幅広い金利に影響を及ぼすためです。銀行などは住宅ローンの固定金利について、10年物国債の利回りなどを参考に決めています。金利が低ければ、ローンの借り手は住宅を買いやすくなり、国内での消費の増加につながります。
企業が返済期間の長いローンや社債で資金調達する際の金利の参考にもなります。低金利で資金を集めることができれば、設備投資が増えて経済が活性化する可能性があります。
このように長期金利を低くすることによる家計・企業への効果は大きいものの、基本的に国債利回りは市場での投資家の売買によって決まるため、短期金利と異なり金融政策による誘導には難しさがあります。
22年以降は日本でも物価が上がりつつあります。10年物国債を保有している人は、物価上昇によって満期に受け取る金額が実質的に目減りしてしまいます。そのため投資家は国債を売っており、長期金利に上昇圧力がかかっています。
日銀は22年末に10年物国債の利回りの具体的な許容上限を「0.25%程度」から「0.5%程度」に引き上げました。今後の金融政策の動き次第で、長期金利はさらに上昇する可能性があります。