日本の中央銀行。上場しているが、株式の取引量は少ない
株式市場では株価を動かすニュースのことを材料と呼びます。政治イベントや為替相場、経済指標など相場全体にかかわる材料から決算発表や社長交代、不祥事など個別の材料まで多岐にわたります。大ニュースでも相場が反応しなかったり、小さいニュースでも敏感に株価が動いたり、株式市場の反応は局面ごとに千差万別です。今回はニュースと株価の関係についてみてみましょう。
まず、株価に影響を及ぼすのは金融政策や経済統計などファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に関するニュースです。
2022年12月20日昼、日銀は長期金利の変動幅を拡大する金融政策の方針転換を発表しました。これを例にみてみましょう。実質的な長期金利の上昇で、株式全体にとっては借入金の金利上昇などにつながる悪材料になります。20日の日経平均株価は後場から前日比669円安と急落しました。
個別の銘柄やセクターに目を移してみると、同じニュースでも別の反応をする場合があります。例えば三菱UFJフィナンシャル・グループの12月20日の株価は、前日比6%高と急伸しました。銀行株にとっての金利上昇は、一般的に融資などの利ざや改善期待を高める好材料になるのです。
経済統計以外の指標も株価に影響を与えます。例えば、原油高は製造コストや輸送費の上昇を招くと見られています。22年の原油高騰局面では空運株や素材株、自動車株などにとっては原油高が株価の足を引っ張る材料となりました。一方で、原油価格の上昇で収益拡大の期待が高まる石油や商社などの資源株に人気が集まりました。
さらに、業績関連の材料にも株価は敏感に反応します。一般的に増益なら株価は上昇、減益なら株価は下落します。企業が決算発表の前に業績予想を修正したり、新聞などで増益や減益に関する観測記事が流れた場合も同様です。
ところが、株価は企業が発表した内容に対して、逆の動きをすることがままあります。
レーザーテックが1月31日の取引終了後に発表した22年7〜12月期決算は連結売上高が前年同期比49%増、純利益は40%増と良い内容でした。ですが株価は翌日の2月1日に一時14%超安と急落しました。
こうした事例では好決算期待から先回りして投資家の買いが入っており、株価はすでに上昇していたのです。決算発表を機に利益確定のタイミングを探っていた投資家が売りに動いたため、株価は下落したのです。こうした動きを市場では「材料出尽くし」と呼びます。
増資や自社株買いなども株価の変動要因になります。増資すれば企業の利益が変わらないのに市場に出回る株数が増えるわけですから、1株当たりの利益が薄まります。このため、一般的に新株発行を決議すると、株価の下げを招きやすくなります。逆に自社株買いを発表した場合は市場に出回る株数が減るため株価は上がるケースが多くなります。
ある材料に相場がどう反応するのかは、金利をはじめとしたより大きな相場の雰囲気でも変わります。売買タイミングを見極めるのはそれだけ難しいと言えます。