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渡部恒雄・笹川平和財団上席研究員 1995年に米戦略国際問題研究所(CSIS)入所。客員研究員、主任研究員などを経て2003年から上級研究員として、日米関係、アジアの安全保障などを研究。三井物産戦略研究所、東京財団を経て現職。米ニュースクール大学政治学修士課程修了。
ロシアのウクライナ侵攻や中国の軍事力拡大を踏まえて、与野党問わず外交・安全保障で具体的な議論をしなければならない。参院選は政権交代につながる選挙ではないが、野党がどれだけ現実的な提案ができるかが試される。
米国の拡大抑止が重要になる一方で、米国に経済・軍事の両面で以前のような圧倒的な力はない。
東アジアの安保環境が厳しくなり、米国が日本や周辺地域の安定のために出していた公共財を日本がより多く引き受けないといけない。
かつて民主党は朝鮮半島有事を念頭においた周辺事態法の整備で与党と建設的な審議をした。政権批判に終始しない提案型の姿勢を示すことが重要だ。
東西冷戦期とは異なり、日本はいま米中対立の最前線にいる自覚を持たなければいけない。中国は日米を切り離す機会を狙っている。有事に日本が米国を支援すれば自衛隊基地も攻撃を受ける可能性がある。
しかし日本側が引けば日米同盟は事実上消滅する。そうしないために日本は米国との抑止力、対処力を強化するとともに自ら中国と対話し続けなければいけない。各党の具体的な考えと方策を聞きたい。
岸田文雄政権は参院選後に韓国との関係改善を進めるだろう。米国が中国と北朝鮮をにらんだ構図で日韓の連携を望むからだ。元徴用工や慰安婦など歴史問題の解決を韓国へ過度に期待せずに、米国も交えて現実的に関係立て直しをはかるべきだ。
通常国会で経済安保推進法が成立した。次の課題は輸出規制だ。中国への新しい技術の流出を防ぐことが安保上の課題だ。日本は経済安保で米欧におくれを取っている。さらに必要な措置について活発な協議を期待したい。
今村卓・丸紅執行役員経済研究所長 丸紅経済研究所チーフエコノミストなどを経て、08年から17年まで丸紅米国会社ワシントン事務所長。19年から現職。専門は米国政治・経済。ワシントン・ウオッチャーと丸紅の米国での政府渉外活動を長く続けて培った独自の米国観で分析する。
外交は継続性が大事だ。選挙結果がどう出ても国際社会が日本の政治の停滞を受け入れ、対応してくれるわけではない。外交方針がぶれると信頼を得られない。
中国が戦略的な競争相手になった。世界が一つになるグローバル化の方向性が変わり、自分の国だけよければいいという覇権主義的な考えが広がる。
この流れに日本が対処するには日米同盟を基盤にするほか代替策はない。かつて民主党が政権についたとき、代わりがあるような方向性を示して失敗した。
台湾有事への軍事的な備えは重要だが、中国にこれ以上野心を持たせないよう外交的に働きかけていくことが大事だ。米国を東アジアに関与させる方向に誘導するのが日本の役割といえる。
アジアはまだ成長する余地がある。米国は国内雇用を重視するあまり海外への投資がしぼんでいる。
中国がその隙を突いてくる。それを防ぐためにも米国と東南アジアがしっかり結びつくことが重要であり、そのために新しくできたインド太平洋経済枠組み(IPEF)を通じて日本が果たす役割はまだある。
日米関係のみを強固にしようと伝えるよりも有権者が日本と米国、東南アジアとのつながりをイメージしやすい外交戦略を各党に競ってほしい。
各国が戦略的な競争を始めると、技術保護など経済と安全保障の境目がなくなることは避けられない。経済安保はコストが増えるが、体制のつくりかえが必要だ。ウクライナ侵攻で供給に不安が出た食料やエネルギーの確保も重要な課題になる。
野党には人権外交に踏み込むべきだ。中国の新疆ウイグル自治区の人権問題は、かつては自民党よりも民主党など野党が熱心だった分野だ。積極的に提案して議論が活発になることが望ましい。