【ファミレス大手】国内重視。郊外で強いが都市部出店も進める。
かんちさんの手元には株主優待で受け取ったおこめ券が数トン分あるという
かんちさんは優待株への投資で5億円の資産を築いた専業投資家。約600もの優待銘柄を保有し、食品や旅行・レジャーだけでなく、趣味のクルマから孫のベビー用品までを優待品と優待券で賄う。その投資スタイルはこうだ。
まず優待銘柄を①値上がりは期待できないが生活費の節約に役立つ優待品が受け取れる銘柄と②値上がりが期待できる銘柄に色分けする。①の「節約銘柄」への投資で浮いた生活費を②の「成長銘柄」に投資。そして株価が上昇したら優待獲得用に一部を残して利益確定し、その資金を新たな値上がり期待銘柄に投資する。このパターンを30年以上にわたって繰り返しながら資産を膨らませてきた。株価が調整した時は、優待品と配当を受け取りながらひたすら耐える。
コロナショック以降もこの投資スタイルに大きな変化はない。だが、投資成果が生活に直結する専業投資家ゆえ、守りを固めるために3つの対策も講じている。
まず保有株のチェック。節約目的の外食銘柄は9割が株価下落に見舞われた。業績も当面厳しそうだ。株価上昇で投資元本を回収済みの「恩株」も多いので、株価下落にはある程度耐えられるが、倒産だけは避けたい。
そこで業績・財務をチェックして、危ないと思える銘柄は処分した。一方、すかいらーくホールディングス、ジェイグループホールディングス、クリエイト・レストランツ・ホールディングス、DDホールディングスなどは、「2020年3月以降の株価はさえないが、倒産リスクは小さいと判断」。保有株数は減らしたが、優待食事券獲得のために保有継続を決めたという。
2つ目はコロナの影響が小さいと思える銘柄への資金シフト。時価総額が大きく、業績悪化懸念が小さく、配当と優待で冬の時代をしのげそうな、倒産は考えにくい優待銘柄に、保有銘柄の見直しで得た資金を移している。
具体的にはオリックスや、KDDIなどだ。「どちらも優待投資の定番銘柄で、優待廃止の気配も今のところない。配当利回りも魅力的。10年持つつもりなら比較的安心して投資できる」。
3つ目がコロナショックで割安になった優待銘柄の購入だ。株価が調整している銘柄の中から、コロナによる社会変化で恩恵を受けそうな銘柄や、過去5年や10年といった長期で売上高・利益を伸ばしている銘柄を見つけ出して投資している。「デジタルトランスフォーメーション(DX)、電子商取引(EC)、人材不足、コロナ消費などのテーマからの連想で、割安だと思える銘柄を物色している」
実際には、コロナ消費で富裕層が輸入車を買っているという話から、ウイルプラスホールディングスやVTホールディングス、イエローハットなどを購入。また、人手不足からの連想で、アウトソーシング、ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスなども新規で買ったり、買い増したりしている。
手持ち株の守りを固めるだけあって、かんちさんの相場の先行きに対する見方は厳しめ。警戒感を強める背景の一つが、相次ぐ優待廃止だ。20年4月以降、かんちさんはポイント制優待の『プレミアム優待倶楽部』採用企業だけでも6社の優待廃止や改悪に遭遇している。
「優待開始が5年以内で業績が悪い所は廃止・改悪リスクについて慎重に見ている。自社商品や食事券など、優待実施コストの低い所は比較的安心だが、金券などコストの高い優待を実施している銘柄も要注意だ」
かんちさんはこれまでの投資経験から、足元の経済実態と株価の乖離(かいり)には大きな違和感を持っているという。「今は業績面の不安が小さい優待銘柄への投資が良いような気がする。この先、全体として株価が下げたところが本当の買い場ではないか」と考え、相場の行方を見守っている。
(本間健司)
[日経マネー2021年3月号の記事を再構成]