【テープ基幹の総合材料メーカー】液晶・半導体、医療用など多角展開。
「コンクリートパイル」は構造物の基礎に用いるくいの一種(写真はイメージ=PIXTA)
技術的な観点から有望銘柄に注目する「工藤特許探偵事務所」。過去2年間におけるYK値(下囲み参照)の成長率が高い銘柄を、業種ごとに紹介している。
今回取り上げるのは「ガラス・土石製品」。電子機器向けのレンズや建築材料など日常生活を支える分野であるとともに、工業用の原材料など産業の基礎となる分野だ。この分野で注目されているのは高性能な光学ガラスや、強化ガラス、セラミックスなど先端材料に関する特許。これに建築材料や、セメント、化成品に関する特許が続く。中小企業では特殊な用途に用いる建築材料、工業用化成品に注力する企業が多い。以下、YK値成長率の高い4銘柄を紹介する。
第1位のトーヨーアサノはコンクリートパイルを製造する会社。トンネル用製品や不動産賃貸事業なども手掛けるほか、近年はスマートエネルギー事業にも進出している。コンクリートパイルとはビルなどを建てる際に、地盤を強化するために地面に打ち込むくいのこと。YK値を押し上げているのもコンクリートパイルに関する特許だ。同社のコンクリートパイルを使用した工法は、高強度でありながら施工が容易。手間とコストが低減できる。近年、土木建築の現場では労働力不足や原材料費の高騰が問題となっている。手間とコストを軽減する同社のこの工法には、大きな需要があると予想する。
第2位はMARUWA。電子機器に用いるセラミック部品などを手掛ける。2021年3月期の売上高比率は海外が54%とグローバルに事業を展開しているが、中でもアルミニウム粉末関連技術の特許がYK値を押し上げている。プラスチックにアルミニウム粉末を混ぜると放熱性が高くなるのだが、同社の粉末は特にその効果が大きい。この放熱技術は電子機器の小型化などに必須となる技術で、電気自動車向けの部材にも使用できるもの。今後、同製品の売り上げを拡大していくのではないか。
第3位の神島化学工業は不燃建材とマグネシウム化成品を提供している会社。両分野で技術力を伸ばしたが、特にマグネシウム関連の技術が成長している。中長期の経営戦略として、マグネシウム分野とセラミックス分野に注力することを掲げている。マグネシウム化成品は、医薬品、食品添加物、ガラス、セラミックスなどの原材料となる産業に必須の化成品で、同社の売り上げも堅実に推移するだろう。
第4位はニチハ。セメントなどを使った建築外装材大手だ。YK値を伸ばしたのは外壁材の「鏡面仕上げ」に関する特許。「鏡面仕上げ」とは風景が映り込むように外装部を磨き上げること。セメント系外装材での実現は従来困難とされてきた。意匠性が高く、特に商用施設などでの活用が期待できる。鏡面仕上げの外装材などを活用し、非住宅市場の開拓にも取り組んでいる。
今回取り上げた企業はBtoB企業ながら、意外と身近な製品を手掛けていた。堅実な事業を高い技術力で成長させている。紹介した4銘柄以外では、ガラス繊維に強みがある日本板硝子、セメント大手の太平洋セメント、電子機器用光学ガラス大手のオハラなどが技術優良銘柄として挙げられる。
[日経マネー2022年4月号の記事を再構成]