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日本新薬の筋ジストロフィー治療剤は遺伝子工学を応用して作られている
技術的な観点から有望銘柄に注目する「工藤特許探偵事務所」。過去2年間におけるYK値(下囲み参照)の成長率が高い銘柄を業種ごとに紹介していく。今回取り上げるのは「医薬品」。特許が最も存在感を発揮する分野の一つで、医薬品自体の特許の他、製剤技術などの周辺特許も重要となっている。
この分野で特に注目されているのは遺伝子工学を利用した創薬技術の開発だ。薬を飲みやすくするための製剤方法など周辺技術の開発も同じくらい活発に行われている。大企業に比べ資本力の弱い中小企業では、製剤技術に注力する企業が多い。以下、YK値成長率上位の4銘柄を紹介する。
第1位は日本新薬。泌尿器科、血液内科、難病・希少疾患、婦人科などが重点分野。AI(人工知能)やビッグデータを活用した創薬にも取り組む。YK値を押し上げているのは、アンチセンス核酸関連の特許だ。この特許は遺伝子工学を利用した医薬の組成物となるもので、筋ジストロフィーの治療などに利用できるとのこと。遺伝子工学は現在、最も注目されている技術分野だ。先端医療分野での同社の活躍を期待したい。
第2位の日本ケミファはジェネリック医薬品を中心に提供する企業。錠剤への印字に関する特許でYK値を伸ばしている。錠剤に表示される成分情報などの視認性を向上させることで、誤った医薬品を処方してしまうといった事故を防ぐことができる。近年、医療事故が大きな社会問題の一つとなっており、同社の技術は医療関係者にとって福音になるのではないか。
第3位は持田製薬。高脂血症治療剤を主力とする。YK値が伸びているのも高脂血症治療剤の原材料に関する特許だ。この特許技術を用いると原材料成分をより高純度で製造できるため、医薬品としての品質が高まるとのこと。同社はこの分野でさらに強みを伸ばしていくと予想する。
第4位の東和薬品はジェネリック医薬品を提供している。高血圧症治療に用いる錠剤に関する技術がYK値を押し上げた。医薬品を錠剤に成型する際に、圧力などの影響でその有効成分が分解してしまう場合があるのだが、同社の製剤技術はこの分解を抑制。有効成分を安定させることで、品質向上につなげる。競争の激しいジェネリック医薬品の分野で他社との差別化ができると考えられる。
今回取り上げた企業は、いずれもそれぞれ異なる観点の技術でその競争力を高めている。個性的な技術を生かし医薬品業界でさらなる成長を遂げていくだろう。紹介した4銘柄以外では、食品も手掛ける大塚ホールディングス。ドリンク剤で有名な大正製薬ホールディングス、大衆向け目薬でトップシェアを誇るロート製薬などが技術優良銘柄として挙がる。
[日経マネー2022年5月号の記事を再構成]