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大阪府・市は12日、カジノを含む統合型リゾート(IR)で、事業者に求める条件などをまとめた「実施方針案」を修正した。部分開業を2020年代後半とし、府・市が目指す「世界最高水準」の施設の完成時期は明示しなかった。新型コロナウイルス禍で修正を重ね、直近では吉村洋文知事らは27~28年度の全面開業を目指していた。府・市は選定スケジュールの変更などに伴い、3月から事業者を追加公募する。
現時点で大阪IRの事業者公募に参加しているのは米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同グループのみ。MGMは新型コロナウイルス禍で打撃を受けており、府・市には厳しい条件を求めれば撤退しかねないとの懸念があって計画を見直したとみられる。IRは2025年国際博覧会(大阪・関西万博)と並ぶ成長戦略の柱とされるが、完成時期が事実上白紙となり、先行きが不透明になってきた。
IRはカジノ、国際会議場、展示施設、宿泊施設などが一体となった観光施設。IR実施法は、カジノとともに中核5施設が完成していることを開業の条件としている。同法施行令では①展示施設は2万平方㍍以上②宿泊施設は客室の総面積が10万平方㍍以上――などとなっている。
府・市は12日に修正した実施方針案で、国の基準を上回る規模を求める方針を変えなかった。ただ、段階的な整備を認め、展示施設は▽開業時に2万平方㍍以上▽開業後15年以内に6万平方㍍以上▽事業期間(国の認定から35年)内に10万平方㍍以上――とした。宿泊施設も開業時は国の基準を満たせばよく、府・市が求める水準にするのは事業期間内とした。
米MGMリゾーツ・インターナショナルが運営するカジノホテルが立ち並ぶラスベガスの中心部(2019年12月、米ネバダ州)
背景にはコロナ禍による事業者の経営環境悪化がある。MGMはコロナ禍で20年3月に米国内の施設などを一時閉鎖し、20年4~6月期の売上高は前年同期比91%減だった。9月末までに全施設を再開したものの、10~12月期も同53%減と厳しい状況が続く。
10日(米国時間)の決算会見で、MGMのビル・ホーンバックル最高経営責任者(CEO)は「大阪IR参入に向けて引き続き尽力する」と意欲を示した。オリックスは12日、「コロナ禍での提案となるが、MGMと連携しつつ提案内容を検討する」とのコメントを出した。
ただ、府・市側には撤退への懸念が消えない。大阪と同じくIR誘致に名乗りを上げる横浜市では有力候補だった米ラスベガス・サンズが20年5月に撤退を表明。米ウィン・リゾーツも横浜市内の事務所を閉鎖した。「明日は我が身という思いは常にある」。大阪市幹部は身構える。
府・市は今後、開業時期や施設規模などを巡りMGM側との協議を本格化させる。府・市関係者によると、MGM側は開業時の展示施設の規模について、国が求める水準(2万平方㍍以上)で検討しているもようだ。東京ビッグサイト(展示面積約9万5千平方㍍)や関西最大の展示場「インテックス大阪」(展示面積約7万平方㍍)を大きく下回り、府・市が期待する大型の集客イベント開催が遠のく。
IR予定地で万博の開催地でもある人工島・夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)への地下鉄延伸費202億円も課題になりそうだ。府幹部は「事業者負担は絶対に譲らない」と断言するが、MGM側が見直しを求める可能性もある。
政府はカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を目指す自治体から2021年10月~22年4月に申請を受け付け、候補地から最大3カ所の整備地域を選ぶ方針を示している。現時点で名乗りを上げているのは大阪府・市や横浜市など4カ所だ。
和歌山県は府・市に先駆けて、1月にIR実施方針を公表した。人工島、和歌山マリーナシティ(和歌山市)への誘致をめざしており、26年春ごろの開業を狙う。マカオのサンシティ・グループとカナダのクレアベスト・グループが名乗りを上げており、県は事業提案を審査したうえ21年春ごろ運営事業者を決める予定だ。
長崎県は1月に公募を開始。5グループから応募があったと発表しており、8月に事業者を選定する方針だ。県と佐世保市はテーマパークのハウステンボスの西側31ヘクタールをIR予定地としている。