【製造業首位】海外展開加速。環境技術も優位。資金量9兆円規模。
ロシア自動車大手のアフトワズは23年の生産台数を前年比8割増やす計画=ロイター
ロシア最大手の自動車メーカー、アフトワズが低迷する同国の自動車市場で積極投資に踏み切る。長期化するウクライナ侵攻への制裁で外資系自動車メーカーが相次ぎ撤退を決めるなか、撤退企業の生産設備を引き継ぐなどして2023年の生産台数を前年比8割増の40万台超とする計画だ。ただ消費の冷え込みを受け、計画の実現には不透明感が残る。
アフトワズは22年末、ロシアのサンクトペテルブルクにある旧日産自動車の生産工場を活用する方針を示した。ロシアメディアによると「高級車を生産する」(ソコロフ社長)として、少なくとも3種類の「ラーダ」ブランドを23年後半から生産を始める。中国の自動車メーカーとの協業も検討するとみられており、生産規模は最大1万台という。
日産はサンクトペテルブルクの工場で多目的スポーツ車(SUV)の完成車を生産していた。ウクライナ危機を受けたサプライチェーン(供給網)の混乱で生産を停止し、22年秋にロシアの政府機関に売却する方針を決めていた。
アフトワズは22年12月中旬に開いた取締役会で、23年に前年比約8割増となる40万台超を生産する計画を承認した。同年に約400億ルーブル(約760億円)を投じ、増産する予定としている。
22年2月に始まったウクライナ危機後、ロシアの自動車市場は厳しい状況だ。欧米諸国は半導体などのロシアへの輸出を禁止し、ロシア国内のサプライチェーンは混乱した。
欧州ビジネス協議会(AEB)によると、22年通年のロシア新車販売(小型商用車含む)は前年比59%減の68万7000台だった。ロシア市場から撤退したり、事業を停止したりした外資系メーカーは軒並み8割ほど販売が落ち込んだ。アフトワズのラーダの新車販売も46%減の18万8000台と落ち込んだ。
アフトワズは部品調達が難しいことなどを理由に、22年は一部工場の生産を数カ月単位で停止する事態となった。同社は6月、経済制裁から部品輸入が難しく、安全装備を簡素化してエアバッグなどの標準装備がない新車の生産・出荷に踏み切った。
外資系メーカーの生産停止が長引き、ロシア国内での自動車の需要が高まるなか、アフトワズは部品の代替調達を増やして生産を増やしつつある。同社によると、従業員の勤務形態を22年9月には週6日とし、工場稼働日も増やしている。結果、22年の新車販売に占めるシェアは6ポイント超上昇した。
ウクライナ危機後、事業を停止していた外資系自動車メーカーはロシア市場からの撤退の動きを強めている。仏ルノーは保有していたアフトワズの株式約7割をロシアの政府系機関に売却した。ルノーにとってロシア事業はフランス事業に次ぐ規模で、世界販売全体の2割弱を占めていた。
EVの試験生産を始めるアフトワズのイジェフスク工場=ロイター
独高級車のメルセデス・ベンツグループは22年秋にロシア市場から撤退することを明らかにした。同社はモスクワ郊外の工場で、セダンの「Eクラス」やSUVを生産していた。日本の自動車メーカーでは日産のほか、トヨタ自動車も22年秋に撤退を発表した。
アフトワズは今後、自社で電気自動車(EV)の生産にも乗り出す方針だ。ロシアのイジェフスク工場で23年中に試験生産を始める。乗用車のほか、商用バンも生産する予定で、ロシア国内での部品生産・調達を進め、国産部品の比率を過半に高めるとしている。
ロシアのマントゥロフ産業貿易相は22年12月、厳しい状況が続いているロシアの自動車産業が安定し始めたとの認識を示した。「23年はアフトワズのシェアが50%程度に高まる」(ロシアの金融機関)とする声もあるが、ロシア国内はインフレなどを受け、小売業などで不振が続いている。23年以降も国内自動車市場は低迷が続く可能性がある。
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