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ヤフー、副業人材100人採用の真意 雇用は脱オフィス

日経ビジネス
コラム
ネット・IT
2021/1/8 2:00
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ヤフーが16年10月に移転した紀尾井タワー(東京・千代田)のオフィス風景。細部にわたってヤフーが目指した理想の働く環境づくりの思想が宿っていた

ヤフーが16年10月に移転した紀尾井タワー(東京・千代田)のオフィス風景。細部にわたってヤフーが目指した理想の働く環境づくりの思想が宿っていた

日経ビジネス電子版

ヤフーは2020年10月、副業人材104人を受け入れる「ギグパートナー」制度の運用を始めた。7月に募集したこの制度に応募したのは4500人超。この中から104人を選抜し、事業プランアドバイザー、戦略アドバイザー、テクノロジースペシャリストの3領域で外部人材が既に働いている。

採用された人材は多種多様だ。「20年3月から副業を認める制度ができたため応募した」と語るのはカシオ計算機でイメージング事業開発を手掛ける石田伸二郎氏。数多くのモバイル関連サービスを手掛けてきた経験を生かして高速通信規格「5G」のサービスをヤフーで作れればと意気込む。

上場企業の経営陣もヤフーで働く。20年12月に東証マザーズに上場したばかりのKaizen Platform(カイゼンプラットフォーム)取締役CTO(最高技術責任者)の渡部拓也氏だ。ヤフーが企業向けに提供する分析サービスに対し、テクノロジースペシャリストとして定期的にアドバイスをしている。

「規模が圧倒的なヤフーでの仕事は個人的にいい経験になる」と渡部氏が手応えを語れば、「ヤフーは広告を除けば企業向けのサービスは少ない。知見を基にしたアドバイスがとても役に立っている」とヤフーでデータソリューション事業本部長を務める谷口博基氏もその効果を口にする。

日本企業の間でも副業を認めたり、フリーランスなど外部人材を活用したりする動きは活発になっているが、ここまで大規模に受け入れるケースは異例だ。ヤフーはなぜこの決断をしたのか。

ヤフーの親会社であるZホールディングスは21年3月、LINEとの経営統合を控えている。米グーグルや米アップルなど「GAFA」とも対峙していくために決めた経営統合だが、「国内企業としては誰も手本にできない未知の領域に踏み込む。非連続成長を目指すなら積極的に異なる経験、異なるスキルを取り込まなければ」とヤフーの藤門千明取締役常務執行役員CTOは危機感をあらわにする。

そこに重なったのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。「もう働き方は以前には戻らない。デザインし直さなければ」。ヤフー執行役員でピープル・デベロップメント統括本部長CCO(最高コンディショニング責任者)を務める湯川高康氏はギグパートナー制度に踏み切った背景をこう語る。

オフィス刷新による意識改革を狙ったが

ヤフーは新型コロナウイルスの猛威が顕在化してきた20年初頭から矢継ぎ早に社員に向けた対策を打ち出してきた。14年に設けていたリモートワークの制度「どこでもオフィス」を拡大する形で社員の在宅勤務を推奨。民間取引先とのすべての契約締結において電子サイン化を進める方針も打ち出した。

そして、10月からはリモートワークの回数制限とフレックスタイム勤務のコアタイムを廃止し、「新しい働き方への移行」を宣言。午前11時までに出勤できる場所であればどこに住んでもいいし、原則リモートワーク勤務でかまわない体制を整えた。

振り返ればヤフーはこの10年、焦燥感に駆られていた。イノベーションを絶えず求められる宿命を抱えながら、組織間の壁など「大企業病」にも似た雰囲気に覆われる社内。「先進性よりも安定性が勝っていた」とヤフーでCOO(最高執行責任者)を務める小澤隆生氏は胸の内を明かす。

てこ入れは必至だが、どう実現していくべきか。具体的な形で表れたのが16年10月に移転した紀尾井タワー(東京・千代田)の新しいオフィスだった。レイアウトや設計の細部にヤフーが目指した理想の働く環境づくりの思想が宿っていた。歩きにくくするためにわざとジグザグに配置された机や社外の人も利用できるコワーキングスペース。人と人のセレンディピティー(すてきな出会い)を起こすことで社内の分断を克服し、イノベーションの芽が生まれることを期待した。

だが、コロナ禍はオフィス前提の意識改革に無残にも待ったをかけた。

ヤフーは20年4月から10月にかけて社内アンケートを実施した。そこから見えてきたのは思わぬ結果だ。「コンディション」について「向上した・変わらない」と答えた社員は4月は84.6%だったが、10月は92.5%に上がった。「パフォーマンス」についても同様で、「向上した・変わらない」と答えた社員は4月は83.1%だったが、10月には95.5%に達した。

正規・非正規の断絶を超えて

「鳥のさえずりが聞こえるし、空気もきれい。QOL(クオリティー・オブ・ライフ、生活の質)が格段に上がった」。20年11月、ヤフー入社5年目の女性社員は渋谷区の住まいを引き払い、実家のある群馬県みなかみ町へと引っ越しを決めた。新型コロナウイルスの脅威が本格化した20年2月から始まった在宅勤務。狭いワンルームでは衣食住の切り替えができず、ストレスを感じていた。「働き方の選択肢を増やしてくれた会社に感謝している」という。

社員がみなリモートワークで問題なく働けるのであれば、むしろ社外の人材との協業を進めやすいのではないか。危機を逆手に取って一気に外部から多様性を取り込もうとするヤフーは、コロナ禍における様々な変化を武器に変えようとしている。

「オフィス前提の雇用はもう終わった。働き方の多様化も今後さらに進めていく。今後は物理的スペースも気にせず、必要なタイミングで必要な人材を採用できる柔軟性が生まれる」(小澤COO)

ヤフーの脱オフィスは粛々と進む。オフィスで使われなくなったチェアをリモートワークで仕事がしやすいようにと、社員向けに中古販売を始めた。20年9月末から11月中旬にかけて東京や近県在住の社員に873脚を販売。21年1月からは名古屋・大阪近隣府県在住者向けに、年度内には北海道や福岡などその他地域向けにも販売を拡大するという。

ギグパートナーで採用された104人には、10歳の小学生や80歳の人材も含まれている。「申し込みいただいた数、質ともに非常に手応えを感じている。ニューノーマル(新常態)の新しい働き方として、今後必ず広がるはずだ。ヤフーはこの方面でフロントランナーとして走り続ける」(小澤COO)という。

正規雇用と非正規雇用。日本は長らくこの2つの選択肢の呪縛から逃れることはできなかった。コロナ禍でサービス業を中心に多くの非正規社員が職を失うなど、格差と分断はさらに加速している。コロナ禍がもたらした新たな組織や経営のあり方は、これを反転させる可能性を秘める。そしてニューノーマル(新常態)では、社員間の関係性も変わろうとしている。

(日経ビジネス 原隆)

[日経ビジネス電子版 2021年1月6日の記事を再構成]

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