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女性奏者だけのオーケストラ、東京女子管弦楽団が発足した。12月12日に紀尾井ホール(東京・千代田)で初の定期公演を開催、お披露目となる。日本では音楽大学の卒業生の大半が女性だが、名門オーケストラの団員の多くは男性が占める。実力があっても演奏機会を得にくい女性音楽家に活躍の場を与える。
同楽団は6月に設立され、楽団員は約40人。オーディションで200人以上のなかから選ばれた。審査は、読売日本交響楽団のコンサートマスターで、昭和音楽大学教授でもある小森谷巧さんが担当した。初公演では若手作曲家の松永悠太郎さんが同楽団のために書き下ろした「内なる音」をはじめ、チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」、ベートーベンの交響曲第7番を演奏する。
設立に奔走した理事長の福元麻理恵さんは自身もバイオリニストで2児の母だ。音楽家をイベントなどに派遣する企業も経営する。福元さんは女性だけのオーケストラを設立した目的について「子どものころから一生懸命練習して音大を卒業しても、なかなかオーケストラの欠員は出ないし演奏の仕事をしにくい環境がある。これまでオーケストラに入れなかった人にも演奏の機会を与え、雇用機会を増やしたい」と話す。
当初は「男女平等の概念が進んできた今、『女性だけで』というのは逆差別ではないか」との迷いもあったという。しかし、設立に向けて調査を進めると「日本では音大卒業生の8~9割が女性なのに、メジャーなオーケストラの団員は3~4割にとどまる。まだ格差は大きい」ことに気づいた。
福元麻理恵(ふくもと・まりえ) 北海道出身。2003年北海道教育大卒。16年サウンド東京代表取締役。22年、一般社団法人東京女子管弦楽団を設立し、代表理事理事長に。42歳。
出産や育児で1~2年休むと技術が衰えたり、キャリアを諦めたりする女性奏者もいる。審査を担当した小森谷さんは、一般的に音楽家同士では「小さい子供がいると聞くと、『この人はあまり練習時間が取れないかもしれない』と配慮が働き、急な仕事や拘束時間の長い仕事などを頼みづらくなる可能性がある」と打ち明ける。
コンサートは夜に開かれることが多い。小さい子を抱える女性奏者には負担が大きく、演奏活動と育児の両立に悩む女性は少なくない。実際、楽団員の4分の1は子どもを持つ。福元さんは「ベビーシッター代を楽団が負担したり、子育てのことを前向きに相談できるような制度を設けたりして、キャリアを諦めなくてもいい組織をつくりたい」と話す。楽屋に子どもを連れてきてもいいと楽団員に伝えるなど、女性が演奏しやすい環境づくりにも気を配る。
小森谷巧(こもりや・たくみ) 茨城県出身。1978年桐朋学園大卒。84年英国王立音楽院演奏家ディプロマ主席修得。87年東京交響楽団コンサートマスター。99年読売日本交響楽団コンサートマスター。63歳。
クラシック音楽の世界では、カルテットなど小規模な女性だけの音楽家グループは存在するが、女性だけのオーケストラは珍しい。小森谷さんによると、「40年ほど前、男女雇用機会均等法が制定されるまでは、男性に限ったオーディションも行われていた」。事実上、女性に名門オーケストラの門戸は閉ざされていたのだ。現在は改善されてきていて、男女半々のオーケストラも出てきている。小森谷さんは「今回の女性だけのオーケストラがそうした流れを加速するきっかけになる」と評価しながらも「本来は性別も年齢も国籍も関係なく、いろいろな人が共に演奏することが好ましい」と主張する。
欧州で生まれ、発展したクラシック音楽は歴史的にも男性が作曲や指揮、演奏を担ってきた。福元さんは「この楽団の活動がジェンダー平等の最後の仕上げになれば」と意気込む。将来的には規模を大きくし、著名な交響曲のほか新曲の公演も定期的に実施していきたいという。また、「子ども向けの本格的なコンサートも実施し、クラシック音楽の裾野も広げていきたい」といった構想もある。
(高橋里奈)
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