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航空のグリーンリカバリー支える新技術

CBインサイツ
スタートアップGlobe
コラム
2021/3/1 2:00
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大手航空会社はCO2排出量の削減に動いている(サンフランシスコ空港に駐機するユナイテッド航空の機体)

大手航空会社はCO2排出量の削減に動いている(サンフランシスコ空港に駐機するユナイテッド航空の機体)

CBINSIGHTS

新型コロナウイルスによる景気後退への対策で、環境を重視した投資などを通して経済を浮上させる「グリーンリカバリー」が注目される。航空業界は大量の二酸化炭素(CO2)を排出しており、旅客需要が回復に向かえば排出削減の取り組みが一段と求められそうだ。バイオ燃料やCO2からの燃料生成、電動航空機といった注目技術を取り上げる。

航空業界はCO2排出量の削減に動いている。

米デルタ航空はCO2排出量を排出枠購入などで間接的に相殺する「カーボンオフセット」や、燃費性能の高い旅客機を増やすなどのサステナビリティー(持続可能性)策に10億ドルを投じる方針を明らかにしている。米ユナイテッド航空は2018年、50年までにCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言し、英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)を傘下に抱える英インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)も間もなく同じ目標を掲げた。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ここ数年の燃費改善により飛行距離1マイル当たりのCO2排出量は減ったが、従来のジェット燃料が深刻な大気汚染源である事実は変わらない。そこで、航空各社は温暖化ガス排出量を大幅に削減するために、持続可能なバイオ燃料やCO2回収、電動旅客機など一連の再生可能テクノロジーに懸けている。

もっとも、こうした新興テクノロジーや代替燃料はコストが高く、現時点では規制の壁に直面している。欧州エアバスのハイブリッド水素旅客機「ゼロイー(ZEROe)」のように、実用可能な試作機の開発にはまだ何年もかかる技術もある。このため、各社は将来を見据えた新技術への投資と、短期的な排出削減目標とのバランスをとる方法を見いださなくてはならない。

今回のリポートではCBインサイツのデータに基づき、航空業界の再生可能テクノロジーと、各社が次にどんなテクノロジーを導入するのかについて取り上げる。

主なポイント

・バイオ燃料は既存燃料の持続可能性を高め、ごみ問題への対応策を提供する。だが、採算を確保するには規制による奨励策や政府支援が必要となる。

・航空各社はカーボンオフセットだけでは排出量削減目標を達成できないかもしれないが、燃焼の際に出るCO2を回収して新たな航空燃料を生成することで、カーボンオフセットの仕組みを改善できる可能性がある。

・電動旅客機は環境面では抗しがたいメリットがあるが、軽量の蓄電池が必要な点が導入の大きな壁になっている。

なぜジェット燃料からのCO2排出が焦点なのか

ジェット燃料からの大量のCO2排出は、航空会社が環境負荷を軽減できるかのカギを握っている。英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、航空業界は世界のCO2排出量の2.5%を占めている。

航空機の燃費は着実に改善しているが、その効果は旅客の増加により相殺されるとみられている。一方、持続可能な新燃料を利用すれば航空会社のCO2排出量は最大80%削減できるとの試算もあり、電動航空機による排出量削減の可能性はさらに高い。各社がカーボンニュートラルを掲げるなか、航空機の動力源は重要な検討事項になるだろう。

持続可能な燃料は高価かもしれないが、バイオ燃料やCO2から生成する代替燃料の支持派は当局がCO2排出規制を強化し、炭素税を導入すれば新燃料のコストは従来のジェット燃料と変わらなくなる可能性があると指摘する。さらに、従来のジェット燃料にバイオ燃料を混ぜることで、航空各社は持続可能性を徐々に高めながら、燃料コストをもう少し予測しやすくなる。

現時点では、飛行を大幅にクリーンにする電動航空機は旅客機として実用可能な段階に達していない。もっとも、さらなる投資やバッテリー技術の進歩により台頭する可能性は高い。

バイオ燃料

バイオ燃料は植物や有機廃棄物など生物素材に由来するジェット燃料だ。

バイオ燃料が有望視されている理由の一つは、ごみからエネルギーをつくりだす点だ。さらに、少量のバイオ燃料を既存のジェット燃料混合物の添加剤として使えるため、航空会社はより持続可能な燃料を使う手段を得られる。米航空貨物アトラスエアはこのほど、植物油を原材料の一部とする新ジェット燃料混合物を使った航空機の試験飛行を実施した。

投資家はこのアプローチに関心を寄せている。ごみからメタノールやエタノールを生成するカナダのエネルケム(Enerkem)は19年、カナダのエネルギー会社サンコー・エナジーやカナダ・ナショナル銀行などから1億ドル弱を調達した。エネルケムはオクタン価の高いバイオ燃料を手掛けており、自社製品をジェット燃料の添加剤としている。

(出所:エネルケム)

(出所:エネルケム)

さらに、最近の排出規制によりバイオ燃料製品の導入に拍車がかかっている。バイオ燃料を手掛ける米レッドロック・バイオフューエルは、(米カリフォルニア州などが定める)低炭素燃料基準を最近の好業績のけん引役に挙げる。同社は米サウスウエスト航空や米物流大手フェデックスなどにジェット燃料を提供する契約を結んでいる。

各企業も様々な方法でバイオ燃料の生成に取り組んでいる。スタートアップの英バイオビーン(Bio-bean)はコーヒーかすを原材料にしたジェット燃料を生成する。オランダのスカイNRGは農業廃棄物からジェット燃料に混ぜる燃料をつくっている。同社は燃料を増産し、サプライチェーン(供給網)を短縮化するためにオランダに工場も建設している。サプライチェーンの短縮化は従来のジェット燃料と競合する上で重要な要素だ。

国際エネルギー機関(IEA)はこの分野が勢いを増しつつあることを織り込み、40年には航空業界で使われる燃料の約2割がバイオマス由来になると予測している。

カーボン・キャプチャー

カーボン・キャプチャーを手掛ける企業は排出量を相殺するために大気中からCO2を回収し、新たに燃料を生成する。

このアプローチはジェット燃料の副産物の一部を使うのに加え、バイオ燃料生成施設ほど大きなスペースが要らず、世界のどこからでもCO2を回収できるというメリットがある。

この技術は航空各社からの引き合いが増えている。ごみからエタノールをつくる米ランザテック(LanzaTech)から分離・独立したジェット燃料の米ランザジェット(LanzaJet)は20年、三井物産とサンコー・エナジーから出資を受けて創業した。ランザグループは燃焼で出た副産物からジェット燃料をつくるために、米国防総省から1400万ドルの助成金も受けた。

さらに、CO2排出枠を売却する企業も燃料生成に参入している。スイスのクライムワークス(Climeworks)とドイツのサンファイヤー(Sunfire)はこのほど、回収したCO2を再生可能燃料に変換するために提携した。同様に、カナダのカーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)が開発した大気中のCO2を直接回収するシステムは、100ドル程度の費用で大気から1トンのCO2を除去し、炭化水素燃料を生成できる。同社は1ガロン当たりの生成コストはバイオ燃料と同水準だとしている。もっとも、従来の燃料よりはなおやや割高だ。

航空各社は排出削減戦略の一環として燃料調達に加え、カーボンオフセット企業を活用している。ユナイテッド航空はCO2回収で提携する米ワンポイントファイブに数百万ドルを投資した。ワンポイントファイブは年間100万トンのCO2を恒久的に貯留する。

CO2回収への投資の増加と研究活動の活発化により、CO2から燃料を生成するコストはいずれ下がるだろう。英オックスフォード大学の研究者らはこのほど、回収されたCO2からジェット燃料を生成する新たな方法を発見した。

電動航空機

電動航空機はバッテリーと発電機を使って推進力を得る。

クルマの電動化技術は軌道に乗ったが、重量制限や極めて厳しい蓄電池の要件により航空機の電動化はそれほど実用的ではない。とはいえ、多くの企業がこの新たな市場を目指している。

電気エンジンメーカーの米マグニエックス(MagniX)はこのほど、オーストラリアの水上飛行機運営シドニー・シープレーンズ、英電動航空機メーカー、ファラデアに電気モーターを供給する契約を結んだ。これとは別に、米連邦航空局(FAA)は18年、スロバキアの航空機メーカー、ピピストレルが開発した個人向けの小型電動航空機「アルファ・エレクトロ」を承認した。

電動航空機の開発を手掛けるスタートアップの一部は短距離路線を対象にしている。今のバッテリー技術では長距離路線に対応するのは難しいからだ。米電動航空機メーカー、アンペア(Ampaire)はこのほど、ハワイの島々を発着する一連のハイブリッド試験飛行を完了した。

一方、旅客機の開発にまい進している企業もある。米ライト・エレクトリック(Wright Electric)は現在、英格安航空会社(LCC)イージージェットとエアバスと共同で完全に電動の短距離旅客機を開発している。9人乗り旅客機を手掛けるイスラエルのエビエーションは今年前半に試験飛行に乗り出す予定だ。

最近のバッテリー技術への多額の投資により、電動航空機が1回の充電で飛行できる距離は大幅に伸びている。いずれはさらに多くの商業路線で実用的な選択肢になるだろう。20年末に上場した全固体電池メーカーの米クアンタムスケープは最近、自社の電池は間もなく航空機にも活用できるようになると主張した。

次の展開

燃料や再生可能技術への投資は、航空業界のサステナビリティー戦略で引き続き大きな役割を担うだろう。

バイオ燃料は短期的な解決策としては説得力がある。だが、助成金頼みでコストが高いため、米サンドロップ・フューエルズや米レンジ・フューエルズなど多くの企業が経営破綻している。地方自治体のごみの回収に対する外部からの圧力や炭素税がなければ、一部のプロジェクトは従来の燃料とコスト面で競えないだろう。

CO2回収やカーボンオフセットは排出削減目標を達成しようとする航空各社にとって手っ取り早い手段をもたらしてくれる。だが、こうした取り組みは脱炭素戦略の主役としては不十分だと批判されている。さらに、燃料生成プロセスも持続可能にするには、大気から燃料を生成する工場にエネルギーを供給する安定した再生可能エネルギーのインフラが必要になる。

電動航空機メーカーも壁にぶち当たっている。米ボーイングが出資する米ズーナムエアロなどのプロジェクトは結局、中止に追い込まれた。だが、米ヘリコプター大手ベルの「空飛ぶ(電動)タクシー」など都市輸送への関心の高まりから技術革新が進み、商用機に波及する可能性がある。電気自動車(EV)の開発によりバッテリーの性能も大幅に向上し、電動航空機の実用化を推進する可能性もある。

将来的には水素エネルギーも航空業界で使われるようになるかもしれない。水素で飛ぶ燃料電池の航空機を手掛けるスタートアップ、米ゼロアビア(ZeroAvia)は20年12月、米アマゾン・ドット・コム、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、米ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズなどから2140万ドルを調達したと発表した。ゼロアビアはブリティッシュ・エアウェイズと提携して化石燃料からの切り替えを支援しているほか、昨年には商用機として世界初となる燃料電池旅客機を完成させた。

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