【陸用小型ボイラー大手】知名度高い。保守・サービス網が充実。
日本経済新聞社は脱炭素社会の実現を後押しするNIKKEI脱炭素プロジェクト(2022年度)の第2回全体会議を9月に都内で開いた。前年度にまとめた脱炭素プロジェクト宣言に基づき、企業がどう行動するか、社会にどう実装するか、具体的な行動をどう起こすか。様々なテーマについて全体会議や分科会で議論を深めつつ、社会実装や行動変容につなげるよう活動している。
COP27を控え熱心な意見表明が相次いだ(9月、都内で)
第2回全体会議にはプロジェクトに参画する企業の代表者、NIKKEI脱炭素委員会(委員長・高村ゆかり東京大学未来ビジョン研究センター教授)の委員らが出席した。
会議では冒頭、西村明宏環境相がビデオメッセージを寄せた。30年度の温暖化ガス排出量を13年度比46%減らし、50年にカーボンニュートラルを目指す日本政府の施策について説明した。「目標達成への道のりは極めてチャレンジングだが、一歩一歩取り組む」と述べた。
その後、出席者がそれぞれ自社の取り組み、脱炭素に向けた意見などを話した。委員は脱炭素が21世紀の国家間・企業間の生存競争であると指摘。日本がGX(グリーントランスフォーメーション)によって脱炭素社会にトランジション(移行)するため、仕組みづくりの重要性を強調した。
プロジェクトでは企業や委員の関心が高く、緊急性の高い個別テーマについて分科会形式で議論を深掘りしている。「生物多様性と自然資本」「ディスクロージャーと金融」についてはそれぞれ2回ずつ開いた。このほか「エネルギー」「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」などのテーマの分科会を順次開く予定だ。
また11月6~18日にエジプトのシャルムエルシェイクで開かれる第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)に合わせ、現地でシンポジウムを開き、企業トップらが英語で世界に情報を発信する。高村委員長は「大きな機会の一つだ。知恵を絞って情報を発信していきたい」と意気込んでいる。先駆的な企業、団体、個人を表彰する「NIKKEI脱炭素アワード」を11月末まで募集するほか、シンポジウムを23年3月に開く予定だ。
脱炭素に向けた取り組みは産業競争力の強化やエネルギー危機克服を通じ、経済成長の実現にもつながる。政府が設置したGX実行会議では今後10年間に150兆円を超える投資を実現するため、必要な政府資金をGX経済移行債(仮称)で先行して調達し、投資支援に回す議論をする。
企業の皆様の取り組みにおいてはサプライチェーン(供給網)全体の脱炭素化が課題だ。環境省は商工会議所や地域金融機関と連携し中小企業を含めた排出量算定や脱炭素投資などに支援する。地域の企業や自治体との取り組みでは30年までに100カ所以上の脱炭素先行地域を実現すべく、今年4月に第1弾として26カ所を選んだ。
プロジェクト参画企業
ジャパン&コリアオペレーティングユニット広報・渉外サスティナビリティー推進本部副社長 田中美代子氏
全国に約80万台保有している自動販売機の省エネに取り組んでいる。販売機の中に使用する断熱材を改良したり、売れ筋の商品のみを集中的に冷やすようにしたり、ヒートポンプ構造も導入している。
コカ・コーラ独自のピークシフト自販機は朝7時から夜11時まで電力を使わない。今では、電力消費量は17㍗程度、従来型に比べ95%の電力削減が可能になった。全体の85%がこうした省エネ型自販機に移行しており、CO2も1台当たり約50%削減している。
経営企画部SX推進チーム部長 沖宏治氏
気候変動は火災保険など損害保険事業に密接に関わっている課題だ。リスクを見つけ、その発現を防ぎ、影響を小さくするとともに、経済的負担を軽減する商品サービスを通じて生活や事業活動を支援することが我々の価値創造ストーリーだ。
4月からの新中期経営計画では、地球環境との共生「プラネタリーヘルス」を重点課題に掲げた。
気候変動に加え、自然資本や生物多様性の保全についても解決を進め、ネットゼロとネーチャーポジティブの両方の貢献に努めていく考えだ。
取締役専務グループ経営委員 進藤富三雄氏
30年度までに温暖化ガスを18年度比で70%以上削減する目標だ。排出量の20%削減と、所有する森林による二酸化炭素(CO2)吸収・固定量拡大に向けておのおの約1000億円を投資する予定だ。
具体的には国内の石炭ボイラーをガス化し液化天然ガス(LNG)などに燃料転換、太陽光などの再生可能エネルギー導入や省エネを進める。国内外に約57万ヘクタールの森林を保有するが、海外を中心に約14万ヘクタール増やして吸収・固定量を拡大する。
森林資源を活用して環境配慮型製品も開発する。
代表取締役社長執行役員CEO 宮内大介氏
脱炭素に向けて2つの決意がある。一つは脱炭素の前にまず低炭素をどう成し遂げるか。低炭素にすることで脱炭素へのハードルが下げられる。「熱ソムリエ」として、企業の低炭素化を支援していく。
もう一つがエネルギーセキュリティーだ。エネルギー源は今後、多様化していくと考えており、それらを熱転換するのが私どもの役割だ。地産地消も進むだろう。メタンや水素、アンモニアといった様々なエネルギー源に対応するオプション力を身に付けていきたい。
日本共同代表 内田有希昌氏
新型コロナウイルス対応やサプライチェーンの不安定化、組織や人事の課題、インフレの加速……。企業を悩ませる様々な問題が顕在化しているが、それでも気候変動への取り組みの重要度は揺るがないと感じている。
我々自身も当然、CO2削減に努めるとともに、コンサルティング会社として企業や社会の努力を様々な形で支援していく。11月に開かれるCOP27でもコンサルティング・パートナーとして議長国のエジプトを支援する。いろいろな形で連携させていただきたい。
執行役副社長海外管掌兼SDGs担当兼シンクタンク担当 田代桂子氏
仲介機能を使い、脱炭素に必要な膨大な資金をどう集めるかという課題に取り組んでいく。
投資銀行部門は2月に航空業界で世界初となるトランジションボンドをアレンジした。アセット・マネジメント部門は昨年7月に脱炭素ソリューション企業に投資するファンドを設定。投資家に投資資金が生み出したインパクトを実感していただくために、CO2削減量をポジティブインパクトとして数値化した。
今後も変化に先手を打ち脱炭素のゲームチェンジャーを目指していく。
執行役リサーチ&コンサルティングユニット長兼サステナビリティ推進担当(グループCSuO) 牛窪恭彦氏
時代環境の変化に対応するためサステナビリティ推進体制を強化した。社長直下にCSuOを置き、グループ内に散在している様々なリソースを集約し、部署を新設。お客様のカーボンニュートラル戦略の立案やファイナンスなどを支援する体制を強化した。
脱炭素に向けた取り組みは、明治維新や第2次世界大戦後の国を挙げたチャレンジにも匹敵するものだと考えている。みずほグループは金融と非金融を一体として、戦略立案からファイナンスまでを一気通貫で支援する。
執行役員ESG推進統括部長 石原亮氏
製造燃料の水素やアンモニアへの転換、太陽光発電や蓄電池の自社内設置など再生可能エネルギーの活用を拡大している。
同時に新技術の開発を進め、30年ごろからカーボンニュートラル関連製品が具体化する見込みだ。そのマーケティングを強化し事業化を加速する新組織を今年度設置した。
期待する製品の一つがサブナノセラミック膜。CO2を分子レベルで分離する膜は実証試験中だ。水素の生成や、水素とCO2からメタンを合成するメタネーションなどにも取り組んでいく。
執行役員広報部長 藤岡千春氏
物価高の一方で、日本の給与所得はなかなか上がらない。そうした影響は不動産業界にも及び、不動産価格が今後上がる要素は限定的だ。
しかし、そうした状況でも、脱炭素に向けた我々の思いはいささかも変わらない。持続可能な社会、地球でなければ、企業は存在しないからだ。
脱炭素は待ったなし。とにかくCO2排出の少ない建物を造り、改修することが重要だと考えている。そしてオンサイトでもオフサイトでも、再生可能エネルギーをつくっていく。
チーフ・サステナビリティ・オフィサー 滝沢徳也氏
石油・石炭ベースをどのようにしてLNGやバイオ燃料、再生可能エネルギーに移行するのか、悩んでいる企業は多い。
我々が定期的に発行している情報誌の中に、各国がいかに再エネで魅力的なマーケットかを測るものがある。日本は再エネ市場では8位だが、企業が民間事業者と独自に電力の長期契約を結ぶコーポレートPPAに限ってみると28位だ。
今後、選択肢の一つとしてわが国でもPPA市場に一定の成熟度が求められていくのではないかとみている。
コーポレート戦略部門部長 松本一道氏
発電に必要な燃料価格の高騰が続きLNGは買えないようなレベルに、石炭も史上最高額を超えるようなレベルに達している。もともとの想定の2~3倍の値段だ。
そうした中でも、安定供給と脱炭素の両立を目指す。再生可能エネルギーの主力化と併せ、原子力発電を最大限利用するのが基本方針。地域とのカーボンゼロ社会に向けた協創も大切だ。
理想は持ちつつも現実解を求めていくことが重要で、時間軸を考えながら、短期と長期に分けて戦略を練っていく。
取締役副社長執行役員 奥田久栄氏
先進国だけではなく、世界中のすべての国々で脱炭素が実現できる形にすることが重要だ。実現のポイントは3つあり、まず脱炭素に向けた選択肢をできるだけ多く持っておくこと。2つ目は国や地域ごとに選択肢を組み合わせる柔軟性。3つ目は現実的かつ具体的なトランジションのロードマップを描くことだ。
日本でいえば、火力のゼロエミッション化を水素・アンモニアを活用してやっていくのがいいのではないか。こうしたロードマップをアジア各国と一緒につくっていく。
NIKKEI脱炭素委員会メンバー
東京大学未来ビジョン研究センター教授 高村ゆかり氏
需要側が求めているエネルギーの脱炭素化は価格高騰を踏まえてどう安定供給を実現するのか。需要側と最も近い地域での脱炭素への取り組みもカギの一つだ。さらにカーボンプライシングを含めた市場メカニズムによって未来に向けた投資をどう拡大するか。国や地域を超えた施策でどうインパクトを与えるか。COP27は大きな機会の一つとなる。知恵を絞って情報を発信していきたい。
国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問 末吉竹二郎氏
今始まっているGX(グリーントランスフォーメーション)競争は国や地域、産業、経済、企業、社会が21世紀に生き残れるか否かのサバイバルゲームだ。いかに経済成長とCO2排出量を切り離すか、デカップリングの競争だ。エネルギー危機を言い訳にしてGXから外れた短期危機対応をするのは将来に禍根を残す。現実論は現状是認の繰り返し。GX路線から外れない対応こそ重要だ。
CDP Worldwide-Japan ディレクター 森沢充世氏
再生可能エネルギーなど代替がある電力を使う企業と、そうではないエネルギーを使って事業を手掛ける企業に分けて考えなければならない。再エネ由来の電力を使える企業は強みになる。代わりのない場合はCO2排出量を減らす低炭素を実現したうえで、エネルギー源の多様化や地産地消を進める必要がある。自治体や地域との協働、他の企業との協働が改めて重要だと実感している。
アセットマネジメントOne運用本部責任投資グループシニア・サステイナビリティ・サイエンティスト 田中加奈子氏
企業が脱炭素戦略を立てるうえでクリーン燃料の利用のめどが立たない場合は電化への移行を模索するだろう。再エネ由来の電力購入がカギだ。脱炭素が実行段階に入る中で特に中小企業はビジネスチャンスが見えないと動けない。国の補助金もその場限りではなく、脱炭素努力と機会が可視化されるなど一層の設備投資の動機付けを増やし、持続可能なサイクルに乗せられるかが重要だ。
高崎経済大学学長 水口剛氏
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年に公表した第6次評価報告書では5つのシナリオを示した。地域間対立を想定したシナリオでは2100年に地球の平均気温は産業革命前に比べ3.6度上昇する。ウクライナ危機はまさにこのシナリオだ。グローバル対立が長期化する前提で「1.5度」を実現するための新しいロードマップをつくる必要がある。
東京大学大学院工学系研究科准教授 田中謙司氏
企業のプレゼンテーションを聴き、ウクライナ危機に伴うエネルギー問題はあるものの、脱炭素の動きは定着したとの印象を受けた。脱炭素は官だけでも民だけでも完結しない。需要サイドも含めた形でカーボンニュートラルを目指すことが重要だ。1社がコストを負担するのではなく、産業界や家庭などがうまく分担し、市場メカニズムや社会システムによって実現しなければならない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング フェロー プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト 吉高まり氏
ロシアのウクライナ侵攻や食糧危機など世界の激流の中で脱炭素については短期の目標と長期の目標を同時に進めなくてはならない。2023年の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)はインドで開かれる。ロシアと中国が密接に近づく中、日本はインドとの関係が重要だ。アジアの他の地域で脱炭素に関する協力をどうしていくのか。防衛上もエネルギー経済安全保障上も重要だ。
自然エネルギー財団常務理事 大野輝之氏
東京都が導入を決めた戸建て住宅など新築建物の太陽光発電パネル設置義務付けに都参与として関わってきた。国が昨年検討したものの断念した政策を、地方自治体が実現する意義はある。住宅事業者と議論を尽くし様々な課題、論点が整理されたことは大きな成果だ。初期費用ゼロモデルや保険など制度を超える波及効果が生まれる。脱炭素化に向けた日本のポテンシャルを示した。
Youth Econetの小竹真帆さん㊧と鳥井要佑さん
Climate Youth Japanの栢沼航平さん㊧と高橋桜さん
Fridays For Future Japanの(左から)時任晴央さん、飯野弥波さん、山本大貴さん
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