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日本経済新聞社は、脱炭素社会の実現を確実に進めるために始めた「NIKKEI脱炭素(カーボンZERO)プロジェクト」の一環で、NIKKEI脱炭素委員会の第3回円卓会議を9月中旬に都内で開いた。気候変動対策は一刻の猶予もならない状況で、社会や経済の仕組みを大転換する志と実行力が問われる。一方で課題解決の取り組みやそれを支える技術は新たな事業機会をもたらす契機にもなり得る。プロジェクトを通じ、意識改革と行動変容を促していく。
NIKKEI脱炭素委員会はプロジェクトの中核を担う組織。東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授を委員長に、合計9人の専門家で構成する。第3回の円卓会議には委員会メンバーのほか、プロジェクト参画企業12社の代表者らが出席した。一部はリモート参加となった。
12社が自社の取り組みを説明した(9月、都内で)
円卓会議ではまず、分科会の活動内容を報告した。プロジェクトとして提言を発信することを目指し、VISION2050分科会(座長・高村教授)と金融分科会(座長・水口剛高崎経済大学学長)の2つが7~8月にそれぞれ複数回の会合を開き、提言の内容について議論を重ねてきた。
分科会は委員、参画企業の代表者で構成。6月に実施したユース対話会に参加した環境問題に取り組む学生らの3団体からも意見を求めた。
金融分科会では「金融投資編」という形で議論を進めた。地球温暖化の進行をこれ以上許せば、安定した社会の基盤を失い、企業活動が成り立たなくなる。また、生活圏や生存権を脅かし、弱い立場の人により大きな影響を与える人道的な問題でもある――。こうした前提から、経済活動の根幹に位置する金融の原理原則にも大転換が迫られていると結論付けた。
具体的には①サステナビリティーを金融の根幹に組み込む②投融資ポートフォリオ全体を脱炭素化する③脱炭素化の実現のために十分な資金を振り向ける④公平で公正な移行をめざす――の4項目を提言の柱としてまとめた。水口座長は「これをたたき台に議論を深めていきたい」と話した。
VISION2050分科会では、脱炭素を踏まえた2050年のあるべき社会像を幅広く議論してきた。金融分科会での結論も踏まえ、足元の現在、非常に重要な意味を持つ今後10年、そして中長期でみたこれからの30年と、多角的な視点で意見を取りまとめた。
「なぜ今、脱炭素に取り組むのか」という点を科学的にしっかりアピールする一方で、将来の気候変動リスクを低減することが生活を豊かにしたり、地域の課題を解決したり、新たな事業機会を生み出したりする可能性もあると打ち出すことに腐心した。
大きな柱に①脱炭素社会のビジョン②エネルギーの在り方③インフラ、特に建築物の脱炭素化④カーボンニュートラル目標と整合性あるインフラ・設備の導入・更新⑤森林資源の活用⑥炭素固定の価値の見える化や持続可能な森林経営が経済的に評価される仕組みづくり――などを掲げた。 分科会報告に続き、各企業が脱炭素社会の実現に向けた自社の取り組みについて説明。この日の円卓会議を終えた。
円卓会議後、NIKKEI脱炭素委員会は金融分科会とVISION2050分科会の議論に基づき「NIKKEI脱炭素プロジェクト 中間宣言」をまとめた。19日に開くNIKKEI脱炭素プロジェクト第1回シンポジウムでも紹介する。
また、10月末から英グラスゴーで開催される第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)にあわせて、英紙フィナンシャル・タイムズに掲載し、英国を中心に世界に発信する。
NIKKEI 脱炭素委員会の高村ゆかり委員長
中間宣言はこれまでの円卓会議や分科会で議論した内容を踏まえ、提言としてまとめた。プロジェクトとしての考え方を示した前文と、行動指針とする8項目で構成。工業化が進展した産業革命前と比べ世界の平均気温の上昇をセ氏1・5度以内に抑える「パリ協定」の目標と、2050年のカーボンニュートラル実現をめざすものだ。
取りまとめの過程では「脱炭素社会に向かう企業の運営、人事を含めたマネジメントの在り方について、さらに踏み込んだ議論が必要との指摘が複数あった」(高村委員長)。分科会の議論がすべて中間宣言に反映されているわけではなく、プロジェクトとして「盛り込めなかった項目についても今後の課題に位置付けたい」としている。
プロジェクトではシンポジウムに続き、COP26にあわせたイベントを11月上旬に現地で開く。12月には第4回円卓会議と第2回ユース対話会も予定している。
NIKKEI脱炭素プロジェクト 中間宣言(抜粋)
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