【高い原発依存度】関西経済界の代表格。原発代替電源確保が課題。
大和証券グループ本社は2030年までの温暖化ガス排出量実質ゼロ、50年までの投融資ポートフォリオの実質ゼロを目標に掲げる。再生可能エネルギーへの投資に加え、トランジションファイナンス(移行金融)やファンドを通じ、脱炭素社会の実現に向けた資金循環の確立をめざす。脱炭素は永続的かつ不可逆的なテーマだとして、中田誠司社長CEO(最高経営責任者)は「脱炭素社会への移行促進はまさに証券会社の本分だ」と力説する。
なかた・せいじ 1983年早大政経卒、大和証券入社。大和証券グループ本社専務執行役、代表執行役副社長などを経て、2017年から現職。東京都出身。61歳
21年8月にカーボンニュートラル宣言を発表した。30年までの自社の温暖化ガス排出量ネットゼロ(スコープ1、スコープ2)、50年までの投融資ポートフォリオのネットゼロ(スコープ3)が目標だ。証券会社はトレーディングシステムなどで相応の電力を使う。10年度から毎年1%以上の二酸化炭素(CO2)排出量削減を続け、20年度の国内排出量は2万6097トン。10年度に比べ6割減った。
ネットゼロ達成の一環として21年度から本社ビルで使う電力を再生エネに切り替えた。入居するグラントウキョウノースタワー(東京・千代田)の賃貸人である三井不動産から、トラッキング付き非化石証書が付与された電力の供給を受けている。さらに21年7月からは子会社の大和エナジー・インフラ(同)が所有する再生エネ発電設備にトラッキング先を切り替えた。今後は全国にある営業店、データセンターなどにも再生エネを広げていきたい。
スコープ3のうち従業員の通勤や出張、リース資産である営業車のガソリン使用に伴う排出量は開示済みだ。投融資にかかる排出量は開示要請が非常に高まっているものの、残念ながら当社を含めて開示している大手金融機関はほとんどない。
50年までのネットゼロに向けた中間目標は23年度までに設定する。脱炭素は永続的で不可逆的な流れだ。それゆえ短絡的かつ拙速に動くのではなく、持続可能性のあるモニタリング管理手法や国際的な枠組みであるパリ協定と整合的な中間目標を検討する。とはいえ、できることからやろうと一部の投融資先については気候変動対策などESG(環境・社会・企業統治)の観点から関与を強めている。
当社はESGファイナンスのトップランナーとして市場拡大に努めてきた。08年に国内初の個人向けインパクトインベストメント債券を発行した。調達したお金を難病で苦しむ人のワクチンに使うワクチン債だ。
18年には住友林業のユーロ円建て転換社債型新株予約権付き社債(グリーンCB)の主幹事を務めた。21年1月には欧州復興開発銀行(EBRD)のグリーントランジションボンドをアレンジした。当社が主幹事を務め、21年4月に新規株式公開(IPO)した省エネ関連のテスホールディングスは、エネルギー・環境分野における日本初の「SDGs(持続可能な開発目標)―IPO」となった。
ESG・SDGsファイナンスのさらなる発展をめざし、21年10月には大和証券に「サステナビリティ・ソリューション推進部」を新設した。
コロナ禍を機に個人投資家や機関投資家の関心が高まり、社会課題を意識した投資行動が広がっている。ESG関連の上場投資信託(ETF)の資金流入額は21年4~8月に8・8兆円に上り、すでに20年度を上回った。そうした状況に対応し、当社グループと米運用会社が共同出資する「グローバルXジャパン」は21年に、ESG関連のETFを3銘柄上場させた。
21年7月には大和アセットマネジメントが「脱炭素テクノロジー株式ファンド(愛称・カーボンZERO)」を設定した。ファンド内の個別銘柄のCO2排出量を算出し、それと同等のCO2削減が見込まれるグリーンプロジェクトに資金を拠出。ファンドとしてカーボンゼロをめざす。信託報酬の一部はNPO団体の植樹プロジェクトに寄付する。顧客の共感を得て非常に多くの資金が集まっている。
21年公表の「2030ビジョン」で、グリーンファイナンスやトランジションファイナンスの促進を掲げた。再生エネ市場、カーボンニュートラルへのトランジションファイナンスなどを含めると、マーケットは数十兆円、数百兆円と巨大。脱炭素社会への移行促進はまさに証券会社の本分だ。
保有する太陽光の資産を金融商品に転換(宮城県栗原市)