日本の中央銀行。上場しているが、株式の取引量は少ない
2023年の公示地価で、北陸3県の商業地を見ると、県都の回復が目立った。金沢市と富山市が3年ぶりに上昇、24年春に北陸新幹線の敦賀延伸を控える福井市は6年連続で上昇した。上昇率は金沢市が1.7%と最も高く、福井市の0.7%、富山市の0.6%と続き、上げ幅には差がある。
金沢駅西側で建設中の大規模マンション(左)。日銀金沢支店の新しい建物(手前)も工事中だ
上げ幅が最も大きかったのが金沢市。新型コロナウイルス禍の影響で21、22年が下落だったが、上昇に転じた。不動産鑑定士の西田雄一氏は「観光需要が回復し、経済活動が平常化してきた。街中でも店舗の出店などが見られ、繁華性が回復している」と説明する。
石川県内で最も高い上昇率となったのが金沢駅西側の3.9%。近くでは野村不動産などが15階建て全287戸の大規模マンションを建設中だ。同社は「購入者のボリュームゾーンは40〜60代の地元の方。15%ほど首都圏からの購入もある」としている。開発が進む周辺の将来性や発展性を期待する声が目立つという。
駅の西側では20年にハイアット系ホテルなどで構成する大型複合施設「クロスゲート金沢」が開業。22年にJR西日本グループの大規模なオフィスが完成した。日銀金沢支店の新しい建物の建設が進むなど業務・商業施設の集積が進んでいる。
富山市の商業地も構図は似ている。コロナ禍からの人流の回復に加え、富山駅周辺でにぎわいのまちづくりが進む。22年、駅前に商業施設「MAROOT(マルート)」が開業し、その近くに富山駅を南北につなぐ新しい道路が開通。北口の駅前広場も供用が始まった。駅前にある富山県の最高価格地点は3.9%上昇した。
福井県内で最も伸び率が大きいのは福井駅東口周辺の3.4%。西口周辺も3位に入った。西口周辺では大型再開発が進んでおり、「コートヤード・バイ・マリオット」などが入る福井県で最も高い120メートルの複合ビルも姿を現しつつある。
県都の3市は新幹線が金沢に開業する前年の14年、いずれも下落していた。開業の15年に金沢市、富山市が上昇に転じ、その後、両市とも20年まで上昇を続けた。この間、最も上昇率が高かったのが金沢市の20年の5.5%で、けん引役は旺盛なホテル需要だった。
金沢市の調査によると、15年の客室数は8838部屋で前年比2.3%の伸びにとどまる。その後も16年、17年の前年比伸び率はそれぞれ1.6%、3.1%だが、18年には6.4%、19年には20%と急速に伸び率が大きくなった。新幹線開業後の活況を確認し、不動産や宿泊施設各社が投資を活発化したことが読み取れる。
これに対して福井市の商業地の地価は18年から一貫して上昇している。新幹線開業への期待感が早くから地価に反映された格好だ。石川県は新幹線金沢開業の翌年、16年に商業地が上昇に転じた。
不動産鑑定士の宮岡広英氏は「金沢市ではホテル需要が逼迫し、上昇率が20%を超えるなど飛び抜けた地点があったことが全体を引き上げた。福井県ではそこまでの状況にはならないのではないか」と分析する。