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ベンチャー投資、年金も政府系も(The Economist)

The Economist
2021/11/30 0:00
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レーニンは、小さな先駆者でも意志の力で歴史の力を動かせば、世界の資本主義の在り方を一変できると考えていた。それは正しかった。ただ資本主義に革命を起こしているのはひげをはやしたボリシェビキらではない。世界の機関投資家の資産の2%弱を運用する数千人のベンチャーキャピタリストたちだ。その多くは米シリコンバレーに拠点を置く。

ナスダックに上場した米EVメーカーのリヴィアン・オートモーティブなどVCの支援を受けた企業の上場が増えている=ロイター

ナスダックに上場した米EVメーカーのリヴィアン・オートモーティブなどVCの支援を受けた企業の上場が増えている=ロイター

ベンチャーキャピタル(VC)業界がこの50年間に資金を投じた革新的なアイデアは、ビジネスや経済を世界規模で変えてきた。今の世界の大企業上位10社の7社はVCの支援を受けた。検索エンジンやiPhone、電気自動車(EV)、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを開発した企業にはVCが出資している。

資本主義をよりダイナミックにするVC

今年、VC業界に業界外から4500億ドル(約51兆円)もの前例のない規模の新規資金が流入し、資本主義の夢を現実にする装置といえるVCの業界は今、急拡大し大きく変貌しつつある。

巨額資金の流入は大きなリスクを招く。増長した創業者が資金を浪費したり、過大評価されたスタートアップに年金資金が投じられたりする。

だがVC業界への資金流入は長期的には同業界がもっとグローバル化し、リスクマネーがより幅広い業種に流れ、VC投資に一般投資家も参加することにつながる。資金が幅広い様々な発想を求めるようになれば競争が進み、イノベーションに拍車がかかり、資本主義はよりダイナミックになるだろう。

1960年代に誕生したVCは金融業界の異端児だった。ウォール街がスーツやニューヨーク郊外の避暑地ハンプトンの豪邸を好み、何事にも洗練さを求めるのに対し、VCはフリースを着て技術や科学に強くこだわり、カリフォルニアに別荘を持つのを好む。何より際立つのは知的発想を重視する点だ。

従来主流だった投資は、投資規模は大きいが、投資先が既に成熟した企業や資産に限られ、その売上高や利益、キャッシュフローの管理に重きを置く。これに対しVCは規模はあまり追求せず、保守的な銀行員を説得する経験がなかったり風変わりだったりする起業家や、経営大学院で学んだ財務モデルでは評価できないような斬新な発想を発掘し資金を投じてきた。

その実績は目覚ましい。過去数十年のVCによる投資額はそれほどでもないが、米VCの支援を受け上場した企業の時価総額は少なくとも18兆ドルに達する。この額はVCがグーグルなど巨大プラットフォームの価値をいかに飛躍させてきたかを物語る。

10日の上場で驚異的な評価額を記録した米ピックアップトラックのEVメーカー、リヴィアン・オートモーティブから、やや地味なスラック・テクノロジーズまで、VCの出資を受けたユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の多くが上場を果たしている。黄金時代と呼ぶべきこの10年の米国のVCファンド指数は年率平均17%という投資リターンを記録してきた。この実績を上回るファンドも少数ながら存在する。

VC業界の成功は今、金融界に広く波及しつつある。VCの出資を受けた企業が上場し、それで生じた利益が新たなファンドに再投資される。一方、低金利が続くなか年金基金や政府系ファンド、事業会社はVCの成功をうらやみ、競うようにベンチャー投資に特化したファンドに資金配分を増やしたり、独自のVCファンドを新設したりしている。今年VCが企業に投じた資金は既に6000億ドルに迫り、10年前の10倍だ。

世界に広く深く流れ出したVC資金

VCに資金が流入するに従い、その資金は経済のより広い分野により深く浸透しつつある。VC投資は以前は米国にしかなかったが今は世界的な動きになり、2021年の投資額の51%は米国外に投じられた。中国のVC投資は習近平(シー・ジンピン)国家主席の消費者向けテック企業への締め付け強化を受け減少傾向にあるが、他のアジア諸国のVC業界は活況を呈している。過去数十年、眠っていたかのような欧州もイノベーションに目覚めつつあり、既に65の都市でユニコーンが登場している。

これまでVCの投資先は、米民泊仲介大手エアビーアンドビーや英料理宅配大手デリバルーなど消費者向けサービスを提供するテック企業が多かった。だが創造的破壊があまり進んでいない分野にも資金が流れそうだ。クリーンエネルギーや宇宙産業、バイオテクノロジー業界への投資額は今年、19年から倍増した。

しかも業界自体が開放的になりつつある。かつては限られた数のファンドがあまり競争もなく絶大な力を握っていたが、最近は主流の金融機関とも連携し、一般投資家も手ごろな価格で投資できるVCも登場している。競争の激化で、どんなタイプのVCもクリエーターの経歴を追跡するなど様々な新戦略を試さざるをえなくなっている。

もちろん危険もある。一つにお金はどうしても腐敗を招く。企業価値が高まり、資金を潤沢に抱えれば企業も支援者も慢心する。21年に上場した評価額上位100社のうち54社が赤字で、その累積損失は710億ドルに達する。ガバナンスも緩みがちだ。

ソフトバンクグループ傘下の「ビジョン・ファンド」は他社に先駆けてスタートアップに次々巨額を投じ、急成長するよう駆り立てたが、投資先の企業が競合するなど利益相反に苦しむ。創業者が暴走することもある。米シェアオフィス大手ウィーワークの創業者ニューマン氏は同社のサービス利用者や従業員をビール飲み放題にすることで自分を個人崇拝させるカルトのような企業文化を築いた。

また、どの資産クラスも資金が流入するほど収益率が下がるという問題もある。主流のファンドからすればVC業界は浮き沈みが激しく、それに対応しなければならないうえ、長期的な収益率が期待を下回る可能性もある。

だが投資家にとって魅力の乏しい企業が経済に好影響をもたらすこともある。わずかな資金でも既に肥大化した住宅市場や資金があふれかえる債券市場に流れるより、成長しようとする企業に振り向けた方がいい。金利上昇に伴いVCが破綻してもスタートアップは多額の負債を抱えていないため金融システムが不安定化することはない。

VCが支援する企業が資金を無謀に使ったとしても、その大半は消費者に回る。配車サービスや料理宅配サービスを提供するスタートアップがVCから調達した資金を原資に値引きしたことを考えてほしい。少なくともVCブームはより競争につながる。

VCもどう優れたアイデア発掘し磨くかだ

21年のVC投資額は、米大手テック5社の設備投資と研究開発費の合計を超えそうだ。大手テックは反トラスト法(独占禁止法)が強化される可能性があることから、自社の競合となりそうな企業の買収に慎重になっている。

VCブームがもたらす最大の成果はイノベーションの促進だ。大金を投じたからといって素晴らしいひらめきにつながるわけではない。また、各国政府の資金は基礎研究に突破口を開きそうな技術に投じられることが多い。

だが世界の起業家の数に限りがあるわけではないし、まだ活用されていない発想は多い。前回のVCブームでは投資家はリスクを取る範囲を難しい分野にまで大胆に広げた。こうしたVCの資金が世界に広がれば、米国以外の起業家のチャンスも広がる。クラウドコンピューティングや遠隔勤務のコスト低下で新規事業を立ち上げる障壁も下がっている。

VCの基本理念は優れたアイデアを見いだして磨き上げ、大きく育てることだ。その理念をVC業界そのものにも当てはめることは正しいはずだ。

(c) 2021 The Economist Newspaper Limited. November 27, 2021 All rights reserved.

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