【海運大手3社の一角】自動車運搬船のほか、資源を輸送するばら積み船に強い。
討論するマイクロソフトアジアのアーメド・マザリ社長㊨(20日、シンガポール)
アジアの経営者らが成長戦略を議論する「日経フォーラム イノベーティブアジア」(主催=日本経済新聞社)が20日、シンガポールで開かれた。新型コロナウイルス後をにらみ、競争力を高める方策について議論した。登壇者からはアジア企業が技術革新の発信地となり、世界を先導しているとの意見があがった。
アジアではデジタル経済への移行を受け、シンガポール配車大手のグラブやインドネシアのネット通販大手のブカラパックといった新興ネット企業が存在感を高めている。さらに、コロナ禍で金融のデジタル化や健康とIT(情報技術)を融合した「ヘルステック」などのサービスも急速に発展しつつある。
マイクロソフトアジアのアーメド・マザリ社長は「(日常生活のあらゆる需要をひとつのアプリで満たす)スーパーアプリや、動画投稿アプリなどの技術革新はアジアから生まれている」と指摘。アジアが「世界の工場」からイノベーションの発信地に変容しているとの認識を示した。
マザリ氏はアジア企業による技術革新には「創造性や独自性がある」と述べ、世界の技術やサービスを先導していると強調した。アジアでは世界の半数のスタートアップが誕生しているとして、スタートアップへの技術支援や人材育成を強化する考えを示した。
パネル討論するDBSシンガポールのシー・ズークン代表(右端)ら
アジアではスタートアップを巻き込んだサービス競争が激しく、革新が生まれやすい土壌がある。主戦場の一つが金融分野だ。
グラブなどの新興企業が地場銀行の買収・出資やネット専業銀行の設立を決めた。シンガポールのDBSグループ・ホールディングスなどの大手銀行もデジタル化をテコに顧客基盤を広げつつある。
DBSシンガポールのシー・ズークン代表は「金融のデジタル化はスローガンではなく、すでにビジネスや生活の一部となった」と強調した。大手銀も人工知能(AI)を活用した顧客サービスの最適化などを進めているとして、「スタートアップの独壇場ではない」と自信をみせた。
コロナ禍はスマートフォン決済が広がる転機にもなった。ベトナムのスマホ決済最大手、Mサービスのグエン・マン・トゥオン副会長兼共同最高経営責任者(CEO)は「消費者がQRコードの読み取りに慣れ『難しくない』という意識変革が進んだのは(デジタル金融の普及に)大きな前進となった」と歓迎した。
パネル討論するIHHヘルスケアのライナス・タムグループ最高情報責任者(CIO)㊧とシロアム・インターナショナル・ホスピタルズのキャロライン・リアディ副社長(20日、シンガポール)
ヘルステックに関するパネル討論では、医療機関へのアクセス改善策について意見が交わされた。インドネシアの大手病院グループ、シロアム・インターナショナル・ホスピタルズのキャロライン・リアディ副社長はオンラインサービスが「医療を効率化させる」と述べ、都市と地方間の格差解消に期待を寄せた。
アジア最大級の病院グループ、IHHヘルスケアのライナス・タムグループ最高情報責任者(CIO)は「先端技術が新たな形の医療を生み出す」と指摘した。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といった最新技術が、治療や関連サービスなどにも変化をもたらすとの見解を示した。
環境に配慮した「グリーン」な経営もアジア企業の課題だ。脱炭素化を通じた発展についてのパネル討論で、日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船事業統合会社、オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)のジェレミー・ニクソンCEOは「(化石燃料に代わる)アンモニアやメタノールなどの確保が必要だ」とし、代替エネルギーの価格高騰を防ぐ対策を訴えた。