【海運大手3社の一角】自動車運搬船のほか、資源を輸送するばら積み船に強い。
上場企業の2020年4~9月期決算を受けたアナリストの業績予想の修正が進んでいる。今期の純利益見通しについて、市場予想(QUICKコンセンサス)と会社予想を比較したところ、ゲームや海運などの企業で市場の業績上振れ期待が高いことがわかった。
3社以上のアナリストが予想を出し、会社の予想純利益が200億円以上の企業を対象に調べた。
上振れ期待が最も高いのはバンダイナムコホールディングス。市場予想は538億円と会社予想の330億円を63%上回る。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の村上宏俊氏は11月18日付のリポートで「ガンプラ(機動戦士ガンダムのプラモデル)等ハイターゲット商品を取り扱う米国大手小売店舗数の大幅な増加が見込まれる」ことなどを好材料とした。株価は好業績期待を背景に12月1日に上場来高値を付けた。
同業のスクウェア・エニックス・ホールディングスの市場予想も304億円と会社計画を27%上回る。ゲームの新作の発売と、巣ごもり消費が重なり収益を押し上げる。同社は21年3月期の営業利益は過去最高を見込む。新型コロナウイルスの影響で消費者が家で過ごす時間が増え、プラモデルやゲームの拡販につながっている。
海運も業績の上振れ期待が大きい。市場予想は川崎汽船で39%、商船三井で23%それぞれ会社計画を上回る。中国などアジアから北米向けの物流が回復し、コンテナ船の積載率や運賃が高騰している。
アナリストによる業績の見直しは上方修正が多い。業績予想の方向感を表す11月末時点の「QUICKコンセンサスDI」は21と、金融を除く全産業ベースで18年8月以来のプラスに転じた。
DIは3カ月前に比べて業績予想が上方修正された銘柄の比率から下方修正された銘柄の比率を引いた指標。米中貿易摩擦の影響が表面化して以降、マイナスが続き、コロナの感染拡大による企業活動の停滞が深刻だった6月にはマイナス71まで落ち込んでいた。
市場の上振れ期待の高い企業には、通期の会社計画の純利益に対する4~9月の純利益の割合(進捗率)が高い企業が多い。ゲーム各社の進捗率は、バンナムHDで96%、スクエニHDで67%、市場予想の上振れ率が26%の任天堂も71%といずれも高水準だった。
製造業は上期に大幅に業績が悪化し、下期の回復を見込むため総じて進捗率が低い。11月13日までに4~9月期決算を発表し、通期の純利益予想を公表した1492社を対象にした集計では、製造業の進捗率は40%と過去5年の平均(57%)を大きく下回った。
進捗率が26%の小糸製作所の市場予想は336億円と会社計画の250億円を35%上回る。ただ、こうした製造業は多くない。アナリストがまだ下期の急回復を慎重にみているためだ。
上場企業全体の進捗率は48%と、過去5年の平均を11ポイント下回った。下期の回復が業績見通しの前提となっているが、コロナ感染の再拡大が業績の回復力を弱めてしまう恐れもある。