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NTTドコモが「瞬速5G」のわけ、スピードかエリアか

日経ビジネス
コラム(ビジネス)
ネット・IT
2020/11/18 2:00
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新商品発表会への最後の登壇となったNTTドコモの吉沢和弘社長は「瞬速5G」をアピールした

新商品発表会への最後の登壇となったNTTドコモの吉沢和弘社長は「瞬速5G」をアピールした

日経ビジネス電子版

NTTドコモが「瞬速5G」というキャッチフレーズを打ち出した。高速通信規格「5G」を使うサービスで高速化を前面に打ち出す背景には、KDDI(au)とソフトバンクの2社との方針の違いがある。技術面での厳格さを優先するあまり慎重なマーケティング戦略を選ぶ姿は「4G」への移行期を思い起こさせる。

11月5日に開かれたNTTドコモの新サービス・新商品発表会。12月の社長交代を控え、最後の登壇となった吉沢和弘社長は「新たな価値の創出や社会課題の解決のためには、5Gネットワークの質が何よりも大切。ドコモは3つの新周波数にこだわり、『瞬速5G』として展開していく」と述べた。

ただの「5G」ではなく「瞬速5G」というサービス名を打ち出したのはなぜか。背景にあるのは、5Gのエリア拡大のスピードでKDDI、ソフトバンクの2社が先行することへの危機感と対抗意識だ。

ドコモは5G基地局を2021年6月に1万局、22年3月に2万局、23年3月に3万2000局まで増やし、人口カバー率を約70%に引き上げる計画だ。これに対し、KDDIは5G基地局を21年3月に1万局、22年3月には5万局にすると20年6月に公表。従来の計画から2年近い前倒しを決めた。ソフトバンクも同様の計画見直しを公表しており、KDDIとソフトバンクの2社の5Gサービスの人口カバー率は、22年3月に90%超に達する見込みだ。

■4G向け周波数を5Gに転用

KDDIとソフトバンクが5Gのエリア拡大で先行するのは、総務省が既存の4G向け周波数を5Gで使うことを認めたためだ。KDDIとソフトバンクは22年3月までにそれぞれ約1万の既存基地局を5G対応にする計画。両社とも最終的には全国で2~3万の基地局を5Gに転用する予定だ。

ドコモも4G周波数の5Gへの転用を否定しているわけではないが、「21年度の後半から徐々に進めていく」(吉沢社長)と慎重だ。利用者の5Gへの乗り換えが進んでいない状態で4Gの周波数を5Gに切り替えると、既存の4G利用者の通信速度が遅くなる可能性があるためだという。

他社より取り組みが遅れるのは「採用する基地局メーカーが違うから」(業界関係者)とみられている。KDDIとソフトバンクはスウェーデンのエリクソンが開発した、1つの基地局で5Gと4Gの電波を同時に扱える技術を採用する予定。ドコモは否定するが、主に国内メーカー製の基地局を使うため技術面で対応が難しい可能性がある。

4Gで使われている周波数は、5G用として新たに割り当てられたものと比べて電波が遠くまで届きやすく、少ない基地局でも一気にエリアを広げられる利点がある。ただし周波数の転用には泣きどころもある。

使える周波数の幅が同じである限り、5Gに切り替えても通信の大幅な高速化は難しいのだ。通信方式が5Gになっても通信速度は4Gと同程度のため、業界内では「なんちゃって5G」とも皮肉られている。自ら5G規格の策定を主導してきたドコモは「5Gエリアと言っても4G並の速度しか出ないのであれば、消費者の優良誤認につながる」と、一貫して批判的な立場を取り続けてきた。

■4G移行期の苦い過去

とはいえ、利用者が区別できるのは5Gがつながるかどうかだけ。ドコモは5Gの展開で後れを取っていると捉えられかねない。そこで自社の5Gエリアなら確実に高速通信ができるとアピールするため、瞬速5Gというフレーズをひねり出したわけだ。

実はドコモには苦い過去がある。4Gサービスがスタートした際にも、その呼び方を巡ってKDDI、ソフトバンクと足並みが乱れたのだ。後に4Gと呼ばれることになった「LTE」規格は、3G向けの周波数を使いながら新しい世代の技術を先取りするという意味で「3.9G」と呼ばれていた。規格の策定を主導してきたドコモは他社に先駆けて10年12月にLTEのサービスを開始するに当たり、4Gとは呼ばずに「Xi(クロッシィ)」と名付けた。

ところが、同月に国際電気通信連合(ITU)が「LTEも4Gと呼称してよい」と声明を発表。遅れて12年にLTEのサービスを始めたKDDIとソフトバンクは「4G LTE」として次世代の通信規格であると大々的にアピールした。「ドコモだけ4Gサービスをやっていないと誤解されることになった」とドコモ幹部は苦々しく当時を振り返る。

結局、ドコモが4Gを名乗るようになったのは、厳密な意味での4G規格を満たすサービス「PREMIUM 4G」を始めた15年のことだった。5Gでも、技術に厳格なドコモと、通信規格もマーケティングの一つと捉えるライバル2社の戦略が分かれる形となった。ドコモは瞬速というネーミングで他社との違いをアピールする構えだが、消費者にどこまで理解されるかは未知数だ。

エリアは狭いけれども5Gなら高速で通信できるドコモと、広範囲で「5G」でつながるKDDIとソフトバンク。いずれにせよ、積極的に5Gに乗り換えたいと消費者に思わせるにはまだ力不足に見える。とにかく5Gサービスを利用者獲得につなげたいという通信各社の前のめり感が、「瞬速か否か」という消費者の混乱を招こうとしている。

(日経ビジネス 佐藤嘉彦)

[日経ビジネス電子版 2020年11月16日の記事を再構成]

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