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米ヒルトンの「ウォルドーフ・アストリア」が日本進出

日経ビジネス
コラム(ビジネス)
2020/11/5 2:00
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米ヒルトンで日本・韓国・ミクロネシア地区の運営最高責任者を務めるティモシー・ソーパー氏

米ヒルトンで日本・韓国・ミクロネシア地区の運営最高責任者を務めるティモシー・ソーパー氏

日経ビジネス電子版

米ヒルトンは10月27日、2026年に東京・日本橋に「ウォルドーフ・アストリア」を開業すると発表した。日本でも長らく期待されていた、欧米資本のホテルにおける最高級ブランドだ。なぜ今、ヒルトンは「真打ち」を日本に投入するのか。日本・韓国・ミクロネシア地区の運営最高責任者を務めるティモシー・ソーパー氏は「ようやくふさわしい場所が見つかったから」と話す。

「マス市場向けのブランドではない。東京で展開できるのは1軒だけ。パートナーとの調整にも時間がかかった」。ソーパー氏は感慨深げに、そう振り返る。実はウォルドーフは2000年ごろから日本での展開を視野に入れていた。ただ、立地や条件面での制約が思いの外、大きかったようだ。

確かに、開業するのは、日本全体で見ても一等地だ。三井不動産が中心となり3000億円以上をかけて開発する超高層ビルの39~47階部分。2000年代以降、東京には世界の名だたる高級ホテルが相次いで進出した。ヒルトンは高級ブランド「コンラッド」を展開したが、ウォルドーフは構えなかった。ナンバーワンのプライド、というべきだろうか。

■聞かれる前に、要望をくみ取ってサービス

そもそも、ウォルドーフとはいったいどんなホテルなのか。1893年に誕生し「ルームサービス」を最初に始めたホテル、とホテル史に書かれてはいる。ソーパー氏は、魅力の根源はハードではないという。「お客様から聞かれる前に、要望をくみ取ってサービスするのが基本」。つまり、最大の特徴はソフトであり、スタッフだ。

通常、ホテルは利用者からの要望を受けてスタッフが対応する。ただ、ウォルドーフでは、それは許されず「(思わず)ハイタッチしたくなるサービス」が必要とされる。そうであれば、スタッフを育成するのは最重要課題。ウォルドーフには通常のホテルの2~3倍の時間を要するトレーニングプログラムがあるという。

新ホテルの接客スタッフの2割はヒルトンの国内ホテルからの配置転換となる見通し。顧客のニーズを事前に察知し、言われる前に対応するというサービスは、経験したことがない者からすると想像し難いが、例えば「お客様の様子やふとした会話などから気を回す」(ソーパー氏)のだという。このノウハウがグループ全体に広がれば、サービス水準が一層高まるのは確かだろう。

■地力を高めるには格好の時期

新型コロナウイルスの感染拡大で、国内のホテル業界は紛れもなく苦境にある。政府は「Go To」事業などで観光産業を支援するが、近年の好景気を支えていた外国人観光客はいつになれば戻ってくるか、見通しが立たない。コロナの流行から半年以上がたち、資金が枯渇してくる今後は、廃業や撤退が増える可能性もある。

ただ、財務が切羽詰まっていないホテル大手にとっては、ある程度の余裕を持って、地力を高めるには格好の時期。相対的な競争力が高まる今だからこそ、ヒルトンは真打ちを投入するのかもしれない。「重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、米国の同時多発テロなどがあってもその後に旅行者は増えた。コロナの後も需要は必ず戻る」(ソーパー氏)。米マリオット・インターナショナルに次ぐ世界大手であるヒルトンの積極策は、日本への期待の裏返しなのだろう。

(日経ビジネス 北西厚一)

[日経ビジネス電子版2020年10月30日の記事を再構成]

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