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【航空大手】国内線、アジア近距離路線に強み。国際線を拡大。

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ANAが踏み込んだLCCとの連携策 国際線で新ブランドも

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日経ビジネス
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サービス・食品
2020/10/30 2:00
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ANAホールディングスは大型機の削減などの事業構造改革案を発表した(成田国際空港)

ANAホールディングスは大型機の削減などの事業構造改革案を発表した(成田国際空港)

日経ビジネス電子版

ANAホールディングス(HD)は27日、大型機を中心とした機材の削減など事業構造改革の骨子を発表した。目を引いたのが格安航空会社(LCC)との連携策だ。傘下のピーチ・アビエーションとコードシェア(共同運航)に向け検討に入ったほか、国際線で新たなLCCブランドを立ち上げる。航空大手は新型コロナウイルスの影響で、資金繰りなど財務面だけでなく幅広いグループ戦略の見直しを迫られている。

「大変厳しい結果になった」。ANAHDの片野坂真哉社長は上期(4~9月)を振り返ってこう話した。7~9月期の売上高は1702億円、営業赤字は1218億円と4~6月期の1216億円、1590億円から改善したものの、国内線は7~8月の新型コロナウイルスの「第2波」ともいえる感染拡大の影響で思ったほど回復しなかった。国際線も、座席供給量は前年同期に比べ8割以上減ったままで、4~9月の旅客収入は196億円と地をはうような数字だ。

ANAHDの2021年3月期の最終損益は5100億円の赤字となる見通し。片野坂社長は「2期連続の赤字は避けたい。来期はあらゆる手を尽くして必ず黒字化を実現する」と語る。赤字が膨らんだため自己資本が大幅に減少。日本政策投資銀行や、三井住友銀行など民間金融機関から計4000億円の劣後ローンを受け入れることを決めた。

事業規模を縮小せざるを得ず、21年3月期中に大型機を中心として35機を退役させる。加えて、導入予定だった機材の受け入れを遅らせる。これにより、21年3月末の保有機数は計画から1割(33機)減る。5000億円を超す赤字の中には、機材削減などに伴う1100億円もの特別損失が含まれている。

路線網も縮小に向かう。現在8割以上が運休している国際線は、今後、需要の回復が見込みやすい羽田空港発着の路線を優先して再開する。成田、中部、関西空港発着の復便は需要動向を見ながら判断する。20年3月に羽田の国際線の発着枠が拡大し、ANAは発着枠拡大前の46都市から51都市へと就航地を拡大する計画だった。需要低迷が長引くとみられる都市については撤退の可能性もありそうだ。

国内線は羽田・伊丹空港の発着を中心とした高収益路線に期待しているが、それでも機材を小型化して座席の供給数を減らす。今回、撤退する路線について具体的な言及はなかったものの、地方から地方までを直接結ぶ路線では恒常的な減便・撤退が考えられる。ANAHDの関係者は路線縮小の方向性について「現在の減便計画がベースとなっていくだろう」と話す。新千歳空港から富山、小松、静岡、広島を結ぶ路線などでは全便運休が続いている。

ANAHDの事業規模の縮小に伴い、傘下のLCC、ピーチ・アビエーションとの連携を強化することも改革の目玉になる。

10月25日、成田空港第1ターミナル。「南ウイング」1階にはANA国内線のカウンターがあるが、そこに新たに掲げられたのはピーチのロゴが印刷されたボード。ピーチは19年後半から利用してきたLCC専用の第3ターミナルを引き上げ、この日から第1ターミナルを利用し始めたのだ。

第1ターミナルはANAが国際・国内線の拠点としている。ピーチは13年の成田乗り入れ以降、19年10月まで第1ターミナルを使ってきた。ピーチの森健明最高経営責任者(CEO)はコロナ禍前から路線拡大に向けて第1ターミナルの利用を検討していたと説明するが、わずか1年での「出戻り」はANAとの連携を急ぐためでもあろう。

片野坂社長は会見で、構造改革の一環として「(ANAとピーチの)両ブランド間で連携して路線分担の最適化を図る」と説明した。現在、ANAは成田発着の国内線を全便運休している。大幅減便が続く国際線からの乗り継ぎ需要が主の路線だからだ。同様に、ピーチが拠点とする関西空港発着の路線も大幅な減便を継続している。ANAHD幹部は「両空港を発着する路線の需要は当分の間、ピーチが受け入れるという考え方はある」と話す。

■共同運航で乗り継ぎ需要取り込む

ピーチ・アビエーションは10月25日に成田空港での使用ターミナルを第3から第1に変更。国内線では、成田発着路線の全便運休を続けているANAのカウンターをチェックイン業務に使う(10月25日、成田空港第1ターミナル南ウイング)

ピーチ・アビエーションは10月25日に成田空港での使用ターミナルを第3から第1に変更。国内線では、成田発着路線の全便運休を続けているANAのカウンターをチェックイン業務に使う(10月25日、成田空港第1ターミナル南ウイング)

「ANAとピーチが就航する路線はかなり重複している」とピーチの森CEO。国内では、成田と羽田、関西と伊丹を同一視すれば重複している路線は多い。「これまでは事前に(どこの路線で運航するか)話し合うことをあまりしてこなかった」(森CEO)といい、連携の余地はある。

今のピーチの動きは、すでにANAHDの構造改革を見越しているように見える。ピーチは国際線の運休で余った機材を活用し、10月25日に国内最長路線となる新千歳―那覇線や那覇―仙台線を就航。さらに12月には初めて中部空港にも乗り入れるなど、国内線の地方路線網を急速に拡大している。ANAが縮小方向に向かう地方と地方を結ぶ路線のピースを着々と埋め、すみ分けを図ろうとしているかのようだ。

会見では、運航する路線を分担しつつ、ANAとピーチのコードシェアを検討していることも明らかになった。運航自体はピーチが手掛けるものの、ANA便としても航空券が販売される形だ。ピーチの森CEOは、6月の時点では、ANAとのコードシェアについて「ANAで航空券を買ったらたまたまピーチ運航便で、席も狭いしお茶も出ない、というのに納得してもらえるか」と消極的な姿勢を見せていた。

ただ、ピーチにとっては、コードシェアによって国際線と国内線の乗り継ぎ需要を取り込める利点がある。森CEOは「ANA利用客に限らない」と断った上で、成田空港第1ターミナルへの移転によって「国際線利用者の乗り継ぎ需要を期待している側面はある」と話す。日本航空(JAL)はすでに、50%を出資するジェットスター・ジャパンとの間でコードシェアを実施し、国際線と国内線の乗り継ぎ客に限りJAL便として販売している。今後、成田発着の国際線が復便していけば、ピーチの旅客数を底上げする要因になり得る。

乗り継ぎ客に限定しなくても、路線さえ重複していなければ、ANAのマイルをためたい利用者はピーチの販売価格よりも少し上乗せされた額でANAから、安さを求める利用者はピーチから航空券を購入してもらう形にすることで、不満も抑えられるだろう。ANAの「マイル経済圏」にいる顧客を取り込むことにつながる。さらにANAのマイルをピーチの航空券代金の支払いなどに使えるポイントに交換できるようにした。これもピーチの旅客増加に貢献する。

ピーチにとっての懸念は独自性が失われかねないことだ。11年の設立当初、ANAHDの出資比率は4割に満たなかった。その分「ピーチは自由さが売りだった」(片野坂社長)。お好み焼きのようなにおいの強い料理を機内食として提供するなど、業界の常識にとらわれずに様々な施策を打ち、日本のLCCの勝ち組となった。ANAHDの100%子会社ながら苦しんだ旧バニラ・エアとは対照的だ。

ANAHDは段階的にピーチへの出資比率を高め、最終的にバニラ・エアをピーチと統合させた。それでも当時、ピーチCEOだった井上慎一氏(現ANA専務)は何度も「独自戦略を維持する」と口にしていた。これまでANAとピーチは整備や地上業務で協力関係にある程度だった。だが、今やANAHDはそんなLCC戦略を転換せざるを得ない。航空業界に詳しい桜美林大学の戸崎肇教授は、本来、経営の効率を考えれば「フルサービスキャリアとその傘下にあるLCCはすみ分けを図るべきだ」と話す。

■エアージャパンとの新たな戦略

JALは50%出資するジェットスター・ジャパンなどとの連携を強化する方針(成田空港)

JALは50%出資するジェットスター・ジャパンなどとの連携を強化する方針(成田空港)

ANAHDはさらに、グループの戦略として、22年度をめどに新たなLCCブランドの運航を始める。100%出資会社でグループのアジア路線を担っているエアージャパンが母体となり、フルサービスキャリアとLCCの中間のようなサービスをアジア・オセアニア路線で提供する。

エアージャパンは派遣の外国人パイロットが多く、人件費を需給に応じて調整しやすい。これに加え「LCC的なサービスを入れていく」(片野坂社長)ことで、価格をフルサービスキャリアより低く設定する。機体は米ボーイング製の中型機「787」を使用。少なくとも10機体制で運航していく方針だ。ビジネス需要の低迷は長期化する見込みで、レジャー需要を最大限取り込めるよう、シート同士の間隔はフルサービスキャリア並みにしつつ、エコノミークラスの座席を増やすイメージになりそうだ。

新ブランドのサービスが育つと、ピーチの事業が圧迫されかねない。ANAHD幹部は「あくまでピーチは小型機を使い、片道4時間以内の短距離路線を運航していくのがベースになる。小型機と中型機ではビジネスモデルも違う。中型機を使って成功しているLCCは少ないがそれを我々で作り上げていく」と話す。

10月30日に20年4~9月期決算を発表するJALも、LCCとの連携を深める方針だ。100%子会社のジップエア・トーキョー(千葉県成田市)は貨物便でJALとコードシェアするほか、マイレージサービスでの連携も視野に入っている。また赤坂祐二社長は「ジェットスター・ジャパンや(数%を出資し整備支援などで協力関係のある)春秋航空日本と組んでネットワークを作りたい」との考えを示している。「国際線は観光需要で補うしかない。ここは今まであまりやっていなかったところ。フルサービスキャリアでは採算が合わない」(赤坂社長)

東南アジアや中米などでは既に座席供給量ベースのシェアでLCCがフルサービスキャリアを逆転した。日本では、18年の国際線旅客数のLCCシェアが約26%で「LCC後進国」とされてきた。だが、コロナ禍によって事業戦略の見直しを迫られ、グループのLCCといかに連携できるかが課題として急速に浮上した。その成否は、アフターコロナの航空事業の行く末を左右する大きな要因となりそうだ。

(日経ビジネス 高尾泰朗)

[日経ビジネス電子版 2020年10月28日の記事を再構成]

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