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「両利きの経営」で製造業に変革起こす

コラム(ビジネス)
2020/10/26 0:37
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

米アップルは洗練されたデザインや使い心地のよさなど顧客が主観的に見いだす「意味的価値」を磨く=ロイター

米アップルは洗練されたデザインや使い心地のよさなど顧客が主観的に見いだす「意味的価値」を磨く=ロイター

既存の大企業がイノベーション(革新)を起こすための理論「両利きの経営」に注目が集まっている。日本の製造業が革新的な製品を生み出し、再び存在感を高めるにはどうすべきか。製造業の経営に詳しい大阪大学の延岡健太郎教授に、両利きの経営の実践法を聞いた。

両利きの経営は成熟事業を深掘りする「深化」と新領域を開拓する「探索」という2つの活動をバランスよく進めることが、イノベーションを生み出すのに欠かせないと説く。2019年に日本で出版した米スタンフォード大学経営大学院のチャールズ・A・オライリー教授らの著書『両利きの経営』では、新規事業が社内の資源を生かしつつ既存事業から独立して動けるよう経営層が支援する必要性を説いている。

のべおか・けんたろう 1981年大阪大工卒、マツダに入社。93年米マサチューセッツ工科大にて博士号取得(経営学)。神戸大経済経営研究所教授、一橋大イノベーション研究センター教授などを経て2018年から現職(経済学研究科)。経営学が専門。

のべおか・けんたろう 1981年大阪大工卒、マツダに入社。93年米マサチューセッツ工科大にて博士号取得(経営学)。神戸大経済経営研究所教授、一橋大イノベーション研究センター教授などを経て2018年から現職(経済学研究科)。経営学が専門。

――そもそもイノベーションとはなんですか。

「単なる『技術革新』ではなく『社会に役立つ新たな価値の創出』だ。つまり、例えば原価10万円の製品を売値50万円でも顧客に欲しいと思ってもらえるなど、ものづくりを顧客の価値に結びつけて初めてイノベーションと呼べる」

「価値は数値や仕様で示せる『機能的価値』と、洗練されたデザインや使い心地のよさなど顧客が主観的に意味づける『意味的価値』に分けられる」

――日本の製造業がイノベーションを生み出すうえでの課題はなんでしょうか。

「従来、日本の製造業が得意としてきたのは技術的な強みを生かした機能的価値の創出だ。1990年までは半導体や液晶など、高機能・高品質な製品を低コストで製造して顧客に新たな価値を提供していた」

「しかし、1990年ごろからデジタル化やグローバル化が進み、薄型テレビなど高機能な製品も新興国で作られるようになった。製品の競争力において模倣しづらい意味的価値の比重が増したが、日本企業は変化への対応が遅れた。そうした現状は量販店に並ぶ大手メーカーの冷蔵庫や洗濯機が似通っていて見分けがつきにくいことからもわかる」

――海外では米アップルや電気自動車大手のテスラが市場からの評価を高め、時価総額を伸ばしています。

「アップルは製品の意味的価値を高めて成長してきた。iPhoneの価格はアンドロイド端末の3倍ほどで性能や仕様はほとんど変わらなかったが、顧客に受け入れられてきた。デザインや使いやすさなどカタログで示せない価値が人々をひきつけたからだ。製品の意味的価値が高いのはテスラも同様だ」

「アップルは生産を外部に委託するファブレスのビジネスモデルやiTunesなどソフトウエアによるサービスが注目されがちだ。ただ自社で半導体を設計したり設備投資に毎年1兆円超を投資したりと、実はものづくりへのこだわりが強い。確かに自社で製品の組み立てはしていないが、委託先に生産を丸投げせず製造装置を貸し出し生産技術も共同で磨いている」

――両利きの経営は日本の製造業が生み出す価値を高める処方箋になりますか。

「両利きの経営は『目の前の顧客の問題解決と新たな顧客への問題提起をどう両立するか』という問題意識に立つ。日本企業はこれに加え『評価基準が明確で目標管理しやすい機能的価値と定量化が難しい意味的価値をいかに同時に実現するか』という視点が必要になる。つまり、『深化と探索の両利き』と『機能と意味の両利き』の2種類の両利きの経営を実践すれば、価値を最大化できる」

■アート思考がより重要に

――具体的にはどういうことですか。

「この2種類の両利きの経営を説明するフレームワークとして、私はものづくりにおいて価値を生み出す4つの機能から考える『SEDAモデル』を提唱している。機能向上を目指す『サイエンス(S)』と『エンジニアリング(E)』、意味を加える『デザイン(D)』『アート(A)』で構成される。両利きの経営ではエンジニアリングとデザインは目の前の顧客の問題を解決する深化にあたり、サイエンスとアートは隠れた問題を掘りおこす探索にあたる」

「従来、日本企業は技術により製品の機能を高めて顧客の課題を解決するエンジニアリングを得意としてきた。今後は意味的価値を具現化するデザイン、そして企業自らの理想とする思いや哲学を表現し新しい意味的価値を提案するアート領域に踏み込んだ開発を目指すべきだ。近年はデザイン思考の手法が浸透しデザイン分野での差別化も難しくなっており、アート思考がより重要になっている」

――どうすれば実践できるでしょうか。

「すでに実践している分野として建築が参考になる。建築家は数量的な構造分析やデザイン、アートを駆使して建築物を作り上げる。隈研吾氏のデザインした新国立競技場は建造物としての機能を備えるだけでなく木材を多用し環境との共生を目指す自身の哲学を体現している。隈氏はデザインや構造設計のほか木材の調達や製造方法までリードして進めている。大量に生産する一般的な工業製品では各機能を分業するのが合理的だが、顧客視点から見直して統合すべき部分もあるだろう」

「このようにリーダーシップを発揮してチームを率い、様々な要素を駆使して顧客を感動させる価値を生み出す『SEDA人材』が両利きの経営の原動力になる。代表的な経営者はアップルのスティーブ・ジョブズ氏だ。日本ではチームラボの猪子寿之氏やバルミューダの寺尾玄氏などが挙げられる。古くは運慶までさかのぼる。弟子や職人を動かして仏像の企画からデザイン、設計、製造まで全てこなしていた」

――どうすればSEDA人材を育てられますか。

「残念ながら必要なスキルを教え育てるのは難しい。生まれ持った感性やセンスのよさが必要だからだ。企業として大切なのはそうした人材を選び出し、若いうちから大きなプロジェクトを任せ成長する機会を与えることだ。参考になるのはソニーが2014年に始めた『シード・アクセラレーション・プログラム(SAP)』だ。20代の若手も登用しリーダーとして新商品の企画から開発まで任せる。リスクの小さい小さな事業で自由に取り組んでもらい、成長するなかでより大きなプロジェクトを任せている」

「近年、東京大学や京都大学のデザインスクールなど、エンジニアリングとデザインの両方を教育するプログラムが増えている。読者にもこうしたプログラムを活用するなどして分野横断的な力を磨き、イノベーションの先頭に立ってほしい」

(聞き手は大阪経済部 梅国典)

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