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神戸になぜ医療スタートアップ 起業支える黒子たち

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2020/10/26 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

電動キックボードに乗る高島宗一郎市長(福岡市)

電動キックボードに乗る高島宗一郎市長(福岡市)

地方発スタートアップが存在感を見せようとしている。政府は7月、スタートアップが成長しやすい環境を整える拠点として4都市圏を選んだ。スタートアップは追い風を受けて事業にアクセルを踏み、自治体や大学も新産業を育む地域の「エコシステム」作りに力を注ぐ。各地の現場を追った。

10月、神戸市内の4病院に新型コロナウイルスと戦う"パートナー"を呼び出せるシステムが導入された。専門医が遠隔地にある病院の集中治療室(ICU)に治療方法を助言できる専用端末だ。現場に専門医がいなくてもコロナなどの重症者に対応できる。

■国連が選んだアジア初のスタートアップ都市

手掛けるのは医療スタートアップのT-ICU(兵庫県芦屋市)。地方病院では脳卒中や心臓血管疾患などICUでの治療に対応できる専門医は不足している。同社は2019年に神戸市に拠点を開設。今後、医療格差解消の切り札として市外にも拡販していく。

「イノベーションを起こす文化と知見がある」。国連幹部のグレテ・ファレモ事務次長は神戸市をこう評価する。神戸市は昨年、国連から世界で3カ所目、アジアでは初となるスタートアップ育成拠点に選ばれた。理由は何か。

神戸は医療関連の370社・団体が集まる医療産業集積地だ。電子レンジにも使われるマイクロ波で乳がんを見つける技術を世界で初めて開発したインテグラル・ジオメトリー・サイエンスや、安全性の高いゲノム編集技術を手掛けるバイオパレットなど神戸大発企業が本社を構える。

神戸のエコシステムの要となっているのが、スタートアップの世界で「アクセラレーター」と呼ばれる起業支援家だ。

目玉は世界でも指折りのアクセラレーターでVCでもある米500スタートアップスだ。世界75カ国2400社に投資、支援実績があり、神戸市を通して収支計画から経営戦略まで同社メンター(助言者)から起業の手ほどきを受けられる。選出企業の6週間におよぶプログラムは無料だ。

実はこのプログラムは神戸市の企業に限らず、世界のスタートアップに開放している。これまでに国内外71社がプログラムを受け、計113億円の資金調達に成功した。この実績から20年度は海外からの応募が国内を上回る162件と過去最多を更新した。

プログラム終了後、神戸に拠点を置くなどの条件はない。取り組みは一見、遠回りのようにも見えるが、このプログラムを受けた米国やインドなど国内外の企業が神戸にみせられ続々と拠点を開設。予定も含め今年から7社が神戸に拠点を構える。

その代表格が、筋肉などの遺伝子検査をもとに最適な健康増進プログラムを提案するエリクサー(シンガポール)だ。遺伝子の型から筋繊維のたんぱく質の合成具合を判別し、運動時瞬発力があるか、持久力があるかを判定できる技術を持つ。

■実験都市としてスタートアップを歓迎

政府は7月、4都市圏をスタートアップ育成の「グローバル拠点都市」に認定。地域ごとに行政や大学、起業経験者らが一体となって経営体力の弱いスタートアップを強くする「エコシステム」を形成するなか、国としても4都市圏に積極関与する方針を打ち出した。

内閣府でスタートアップ集積拠点をつくる政策を担当した石井芳明企画官は「地方創生や東京からの分散という文脈ではなく、各都市が強みをもつ分野で世界と競い合ってほしい」と話す。デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)の斎藤祐馬社長は「政府はオンライン化を生かし、東京の人材が副業や社外取締役として地方スタートアップに関わりやすくする仕組み作りをすべきだ」と政府に注文する。

20日、福岡市の西日本鉄道大橋駅近くの公道を、電動キックボードが軽やかに駆け抜けていった。「ようやくここまでたどり着いた」。キックボードのシェアリングサービスを手掛けるモビーライド(福岡市)の日向諒社長はその様子を感慨深げに見守った。

西日本初の走行実証実験が実現したのは、日向社長の粘り腰と福岡市の熱意があったからだ。電動キックボードは原動機付き自転車に分類され、乗るには原付き免許やヘルメットの着用などが義務付けられている。

「危ない」「前例がない」。日向社長はこれまで20超の自治体に出向き、走行実験の協力を願い出たが首を縦に振るところはなかった。「諦めそうになったとき、福岡市だけが協力してくれた」という。

くしくも同じ19年には次世代移動サービス「MaaS」でJR九州西鉄トヨタ自動車が提携。アプリを使い福岡市などでバス、鉄道、レンタカーなど移動手段を組み合わせ、ルート検索から決済までできるサービスが始まった。

今後、こうした交通手段にキックボードが加わり、移動の選択肢が広がれば他都市に先駆けたMaaS経済圏が立ち上がる可能性がある。福岡市は高島宗一郎市長の強力なリーダーシップのもと、モビーライドのような全国の有望な起業の「種」を集め、福岡市での実証実験を全面的に支援する事業を推し進めている。ドローン(小型無人機)関連サービスのトルビズオン(福岡市)もその1社だ。

同社は福岡市の認可のもと、九州大学箱崎キャンパス跡地で自動運転のドローンを使った荷物の配送実験に取り組み、成功させた。これが起爆剤となり、茨城県つくば市や神戸市など各地の自治体から声がかかり、増本衛社長は今年、全国を飛び回っている。

同社は上空の利用権を土地所有者とドローンを飛ばしたい人が貸し借りできるサービスを始めた。目指すのは「空というインフラのシェアリング」(増本社長)だ。福岡市の19年度の開業率は5.8%と主要21都市の中でトップを誇る。

■課題は人とカネ

スズキヤマハなど世界的に名だたる企業を輩出してきた浜松市。いっとき起業は落ち込んだが、再度新たな産業の担い手を育もうと歩み始めている。拠点の1つが6月に開設したコワーキグスペース「FUSE」だ。

「まず仮説を検証してアイデアを絞り込むことが大事」「ビジョンに共感してくれる仲間を探すには、いろんな場に顔を出さないと」――。FUSEでは先輩起業家らがスタートアップ経営者の卵たちにアドバイスをおくる。

FUSEを開設したのは行政ではない。投融資を通した新産業の育成を狙う浜松いわた信用金庫だ。起業の志を持つ者が集い、考えや経験を共有する場は「コミュニティー」と呼ばれる。FUSE以外でもコミュニティーのイベントは市内で毎月のように開かれる。

こうしたコミュニティーの成果がここにきて芽吹き始めている。静岡大学発スタートアップのANSeeN(同市)は、21年に高解像度の画像を撮影できるX線センサーの量産を始める。年400台を製造できる生産ラインを設ける計画だが、試作品を見た顧客が目を見張るのは解像度の高さだ。

センサーには特殊な半導体を使っており、X線を一度光に変換してから画像に変える従来の製品と比べ解像度が2~3倍高く、鮮明に撮影できるという。マジックシールズも介護施設など向けに転倒時に衝撃を吸収する床「ころやわ」を商品化した。

日本を代表する研究学園都市から、スタートアップの街へと変貌しつつあるのは茨城県つくば市。約150の研究機関が集積し、約2万人の研究従事者がいる同市で、スタートアップを育む拠点となるのが筑波大学だ。

経済産業省によると、19年度の同大発スタートアップは114社と東京大学など旧帝国大学に続き6位につける。同スタートアップの資金調達額は14年、ゼロだったが18年には17年比3.5倍の50億円にまで膨らんだ。

地方の課題は人とカネだ。19年にベンチャーキャピタル(VC)投資の約75%は東京都内の企業に向かっている。資金の約6割を地方に投じているVC、リアルテックファンドの室賀文治グロースマネージャーは「研究インフラや開発拠点の充実では地方が都市をしのぐこともあるが、必要な経営や財務の人材が足りない」と指摘する。

DTVSの斎藤社長は「各地固有の課題が解消されると日本のスタートアップ勢力図が変わってくる」とみる。東京と地方発スタートアップが競い合えば日本の新産業の底上げにつながりそうだ。

(沖永翔也、千住貞保、荒木望、北戸明良、浅沼直樹、山田遼太郎)

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