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2020年12月4日(金)
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【海運大手3社の一角】自動車運搬船のほか、資源を輸送するばら積み船に強い。

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三菱グループの日本郵船、「源流だが主流にあらず」
三菱とニッポン(3)

新型コロナ
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2020/10/16 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

日本郵船創業当初の社船「横濱(はま)丸」=日本郵船歴史博物館所蔵

日本郵船創業当初の社船「横濱(はま)丸」=日本郵船歴史博物館所蔵

日本郵船は2020年、創業135年の節目を迎えた。三菱グループの源流事業である海運を担うが、三井系にもルーツを持つスリーダイヤでも珍しい存在だ。その生い立ち故か、グループの枠組みにとらわれない経済合理性を重んじた経営に徹してきた。コロナ禍の荒波のなか、ESG(環境・社会・企業統治)経営を新たな羅針盤に掲げ、自動運航技術や洋上風力で次世代を切りひらく。

日本郵船の生い立ちは1870年に土佐藩開成館が九十九商会と改称したことに始まる。同社の防火用に雨水をためておく桶(おけ)には、「九十九商社」の文字とともに現在の三菱マークの原型となる船旗号(せんきごう)がついている。蓋の銅板には「日本郵船の礎を象徴する記念物である」と刻まれ、今も日本郵船歴史博物館(横浜市)に保管されている。

岩崎彌太郎は九十九商会の経営を任され、東京―神戸―大阪―高知間の航路を開いた。三菱商会と名を改めたのちの75年には、横浜―上海に日本初の定期航路を開設した。77年の西南戦争の軍事輸送も一手に引き受け、日本の海運業界の覇権を握った。

三菱マークの原型となった船旗号が入った九十九商会(現日本郵船)の防火用のおけ=日本郵船歴史博物館所蔵

三菱マークの原型となった船旗号が入った九十九商会(現日本郵船)の防火用のおけ=日本郵船歴史博物館所蔵

■三井系にもルーツ

日本郵船となったのは85年。彌太郎の郵便汽船三菱と、これに対抗するために三井系や渋沢栄一が発起人となり設立された共同運輸との統合により誕生した。両社が値引き競争による積み荷の奪い合いで体力を消耗し、共倒れを案じた当時の政府が主導した。

この交渉のさなか、彌太郎は病没し、初代社長には共同運輸出身の森岡昌純が就任している。こうした経緯もあり、設立当初は三菱グループに属していなかった、というのが日本郵船の認識だ。

三菱グループに再び名を連ねるようになったのは1964年になる。海運再建整備に関する臨時措置法に基づき、三菱海運と合併した際だ。現在は三菱重工業、三菱UFJ銀行、三菱商事の御三家に次ぐグループの主要企業に数えられる。

ただ、80年近い空白があったことから、日本郵船の長澤仁志社長は「源流ではあるが、主流ではない」と話る。

三菱グループには戻ったが、資源開発では三菱商事だけでなく、三井物産住友商事とも連携する。船の発注では今治造船や韓国系の造船会社と組むことも少なくない。長澤社長は三菱グループとの付き合いを「ビジネスライクな関係」と話す。

■ライバルの財閥系とコンテナ船事業を統合

三菱グループとのしがらみのなさは、日本郵船のコンテナ船事業の再編に象徴される。2017年、コンテナ船の事業会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE、シンガポール)を設立した。A・P・モラー・マースク(デンマーク)など欧州、中国勢に押されるなか、生き残りをかけて三井グループである商船三井川崎汽船とコンテナ船事業の統合に踏み切ったのだ。

コンテナ船は海運の主役と言われ、日本郵船にとっては祖業にあたる。ライバル企業との統合ということもあって、日本郵船幹部は「OBからは相当怒られた」と語るが、他の財閥系との統合を「許容しない」という反応ではなかったという。

日本郵船は9月、2020年4~9月期の連結経常利益予想を従来より320億円上回る440億円に上方修正した。業績を押し上げたのはコンテナ船事業だ。海運業でもコロナ禍による経済の停滞は逆風だが、統合により機動的な減便を実施できたことで運賃が上昇した。長澤社長は「統合しか選択肢がなかった。やって良かった」と振り返る。

日本郵船は財閥の枠を超えて、コンテナ船事業の再編を決断し、ONEを設立した(17年)

日本郵船は財閥の枠を超えて、コンテナ船事業の再編を決断し、ONEを設立した(17年)

他の船種も姿勢は同じだ。自動車輸送船が最も運ぶのは三菱自動車の車ではなく、トヨタ自動車の車だ。日本郵船は30年をめどに自動車輸送船の約半数にあたる40隻の燃料を液化天然ガス(LNG)に切り替える方針だが、まずトヨタ向けに導入を決めている。

LNG燃料船の拡充に備え、LNGの供給インフラの整備にも乗り出した。豊田通商やJERA、川崎汽船と組み、伊勢湾と三河湾で供給船の運営を始める。供給船は川崎重工業が建造中で、「かぐや」と名付けた。

独フォルクスワーゲン(VW)は海運会社を選ぶ際に、燃料をLNGにしていることを条件にしている。LNG燃料船の対応にはスピードが求められており、三菱グループの枠組みにとどまっている余裕はない。

■三菱グループとは是々非々で連携

21年にはESGの専門部署を立ち上げる予定だ。経済性とESGの2つを同等の行動指針とするため、全社で意識改革を進めることを目的としている。洋上風力の建造船運航など、非輸送事業にも商機を探る方針だ。

これらの個別の事業・プロジェクトは、是々非々で判断するが、部長、役員以上のリーダー育成では三菱グループの和が残る。「人員的なつながりは圧倒的に強い」(長澤社長)と話す。

長澤社長自身も専務時代、3泊4日で伊豆で泊まり込みの三菱グループのセミナーに参加した。ここでのつながりから、東京海上日動火災保険や三菱商事の経営陣とは率直に相談できる関係を築いたという。テレワーク導入などの働き方改革やESG経営の考え方など、社会の共通課題では相談もしたようだ。

新技術開発など事業化の手前の段階でも、あらゆる重厚長大産業に網を張る三菱グループと連携できる利点がある。海運業界が今、最も注力する自動運航技術では、三菱グループとも協力する。

日本郵船は自動運航船の研究を強化している

日本郵船は自動運航船の研究を強化している

日本財団が助成金を出し、国内をつなぐ内航船の無人化を目指すプロジェクトには日本郵船や東京海上日動、三菱総合研究所など40社超が参加する。陸との通信環境整備や船員の目の代わりとなるカメラやセンサーを開発する。遠隔で船を操作したり、人工知能(AI)が自動で航路を策定したりする技術を確立する。

ライバルの商船三井と三菱商事が電動船開発の共同出資会社を立ち上げるなど、三菱グループとの連携が必ず優先されるわけではないが、「知見や実績が同じレベルなら、まず日本郵船に声を掛けるだろう」(日本郵船)と自負する。

コロナ禍でも物流を止められない海運は、今後も社会に必要なインフラだ。三菱グループ内外の知見を取り込みながら、持続的な成長を目指す。

(企業報道部 吉田啓悟)

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