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コンブや灰から次世代電池材料 大容量で環境に優しく

福岡
コラム(ビジネス)
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環境エネ・素材
2020/10/19 2:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

キシダ化学(大阪市)の電解液

キシダ化学(大阪市)の電解液

次世代電池の材料開発が熱を帯びている。けん引役はスタートアップや中小企業。思わぬ素材を取り入れたり、他のメーカーや人脈を頼ったりすることで量産化に本腰を入れている。材料は電池の容量や安全性など性能を左右する。競争軸となって開発が盛んになれば、次世代電池の普及も早まりそうだ。現場を追った。

「ぜひ一緒にやりましょう」。東京工業大学発スタートアップのEnpower Japan(エンパワージャパン、東京・港)のもとに2018~20年、日本の素材・装置メーカー約10社が集結した。各社がほれ込んだのは、エンパワーが持つ全固体リチウムイオン電池向け電解質だ。

現行のリチウムイオン電池は正極と負極の間にある電解液をリチウムイオンが行き来することで充放電する。全固体は電解液に代わり、固体の電解質を使う。発火の恐れが小さいうえ、電気の容量を増やしやすいことから次世代電池の大本命とされる。

■ノーベル賞受賞者の知見も生かす

富士経済(東京・中央)によると、全固体電池の世界市場は35年に約2兆7000億円と18年の1000倍ほどに増える見通し。トヨタ自動車日立造船などが実用化を進めている。

だが、全固体電池は固体の電解質を使う分、電解液よりイオンが動きづらく充放電に時間がかかる。低温で使えないのも弱点だ。難題克服のため、エンパワーは東工大の菅野了次教授らが開発した特殊な結晶構造を持つ硫化物を活用。イオンの動きやすさを一般的な固体電解質の10倍以上と、電解液を上回る水準に高めた。

同社は東工大出身でアイシン精機の電池研究者だった車勇社長と戴翔会長らが18年に創業した。実は戴会長は米テキサス大に留学しジョン・グッドイナフ教授に師事した。グッドイナフ教授といえば、旭化成の吉野彰名誉フェローとともに19年、リチウムイオン電池開発でノーベル賞を受賞した電池の大家だ。

戴会長はグッドイナフ氏と酸化物を使った電解質で共同研究を進めており、知見を分かち合う。東工大が特許を持つ技術と組み合わせて、21年に全固体電池の電解質の生産を始める計画だ。車社長は「日本は世界でも高機能な電池材料に強みを持つ。開発に適した場所だ」と話す。

全固体向け材料を巡っては大手も力を入れている。出光興産は石油精製の時に出る副産物「硫化水素」を使い、硫化物を使った全固体電池向け電解質を開発中。水と反応して有害なガスを出す課題を乗り越える途上にあり、20年代前半に量産する計画だ。

全固体ではなく、液体電解質を使った次世代電池の材料でも新興勢が台頭。アイ・エレクトロライト(大阪府吹田市)は、正負の電極基板に塗るバインダー(接着剤)を手掛けるが、材料に使うのはコンブのぬめり成分だ。

電極基板のアルミ箔にニッケルなどを使った材料をバインダーで高密度に塗れれば、収まるイオンが増え電池の容量は高まる。高密度に塗れる材料は何か。アイ社は惑星探査機やロケット向けの電池を開発する途上で、電解質にコンブのぬめり成分「アルギン酸」を使うと電流を増やせることを突き止めた。

アイ社の石川正司最高経営責任者(CEO)は「これはバインダーにも使える」と直感。ニッケルなどの材料を電極基板に分散させやすく、しかも分厚く塗れると考え、試験を繰り返したところ性能向上を確認した。

コンブ効果はほかにもある。「欧州で強まる電池工場への環境規制」(電池業界のアナリスト)だ。高容量を出せる電極のバインダーは主に有機溶剤を使うが、環境への悪影響は大きい。対照的にアイ社は水を使い環境負荷が小さい。しかも、使うのは南米沖でごみとして処分される食べられないコンブ。無用の長物が利益を生み出そうとしている。

バインダーは日本企業のお家芸。正極向けはクレハ、負極向けでは日本ゼオンが世界シェアの5割近くを占めるが、アイ社はここに勝負を挑む。

■無用の長物で利益生む

LEシステム(福岡県久留米市)は、「レドックスフロー電池」に使う電解液の量産を目指している。同電池はタンクにためた電解液をポンプで循環。電極で化学反応をおこして充放電する。同じ重量にためられる電気はリチウムイオン電池より少ないが、製品寿命は20年と長く発火する恐れもない。

レドックスフロー電池は5年前に商用化された技術だが、普及してこなかった。理由は価格。電解液はレアメタルのバナジウムを使い、生産・設置コストの3~4割を占める。だが、LEシステムは風穴をあけた。突破口は火力発電に使う石油コークスの灰という用無しの材料だ。

同社は従来廃棄していた灰から、硫黄やカーボンなどと混ざったバナジウムを効率的に取り出すことに成功。従来より5~6割安く調達できるようになった。足元では、福島県に工場を建設中で21年に生産を始める。国内外の電池メーカーに供給し、太陽光や風力発電向け蓄電池への搭載を狙う。

競合大手は、初めてレドックスフロー電池を量産した住友電気工業。こちらはバナジウムをチタンとマンガンで代替する技術で普及を狙う。

矢野経済研究所(東京・中野)によると、リチウムイオン電池の主要部材の世界市場は18年で2兆円を超える。中国が数量ベースのシェアで過半を握り、日本や韓国のメーカーも競い合う。

中国勢に押されている部材は多い。セパレーター(絶縁材)の世界シェアで19年に中国・上海エナジーが旭化成を抜いて世界首位に浮上したのは象徴的だ。みずほ銀行の湯進主任研究員は「生産を増やす日系電池メーカーが少なく、日本勢はシェア争いで不利な立場にある」と分析する。

いち早く有望素材を掘り起こして量産化にこぎつけ、シェアを奪うためには時間がカギを握る。その時間勝負の切り札となりそうなのが、人工知能(AI)を使って新素材を探索するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)だ。

三菱ケミカルやパナソニックなど大手で導入が広がるが、創業100年近くの老舗化学メーカーでも利用が始まっている。研究用試薬を手掛けるキシダ化学(大阪市)だ。MIのソフトウエアを開発するMI-6(東京・港)と連携。電解液向けに画期的な素材を探る。

MIは論文や実験データをもとにAIが研究者の求める素材の候補を列挙する。研究者が論文を読むなどして候補を洗い出す手間を省け、開発期間を短くできると期待されている。

キシダ化学はMIを使って導き出した材料の組み合わせで発火を抑える電解液を開発。18年にノートパソコン向けなどに生産を始めた。有機溶剤に「酢酸プロピル」を使い、難燃剤を混ぜても出し入れできる電気の量や寿命は一般的な電解液と同等の水準に保った。

もっとも、「開発期間は短くなっていない」と効率化は道半ば。現在、MIのシステムがあげる候補は300~400種と多く、それぞれを研究者がまだ検証している段階にあるためだ。今後、解析の精度を高め勝ち残りを目指す。

スタートアップや中小は高い技術力を誇るが、量産化も課題だ。多額の設備投資と人員も必要になり、安定した増資引受先の確保が求められる。技術の先を見据えた経営に投資家の視線が集まっている。

(大阪経済部 梅国典)

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