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2020年10月27日(火)
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【地銀中堅】個人ローンが9割。不適切融資問題から再建急ぐ。

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菅首相がメス、「限界地銀」はなぜ放置されてきたのか

日経ビジネス
コラム(ビジネス)
2020/10/1 2:00
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小栗直登(おぐり・なおと)氏。 和キャピタル社長。1981年4月、静岡銀行入行。支店勤務後は国内外の市場運用業務に従事した。2005年4月に資金証券部長、13年1月に理事を務める。16年2月に和キャピタルを設立して社長に就任

小栗直登(おぐり・なおと)氏。 和キャピタル社長。1981年4月、静岡銀行入行。支店勤務後は国内外の市場運用業務に従事した。2005年4月に資金証券部長、13年1月に理事を務める。16年2月に和キャピタルを設立して社長に就任

日経ビジネス電子版

菅義偉新首相は、9月2日の自民党総裁選の出馬表明会見で「地方の銀行について、将来的には数が多すぎるのではないか」と発言。翌3日には「再編も一つの選択肢になる」と明言し、収益力に乏しい「限界地銀」にメスを入れる意志を示した。第一地銀が加盟する全国地方銀行協会(64行)の損益合計をみると、本業から得た利益となる「業務純益」は2010年度に1兆3818億円だったが、直近の19年度には9761億円まで減少している。地域金融機関の投資アドバイザーなどを務める和キャピタル(東京・千代田)の小栗直登社長は「地銀が自ら合併や廃業を進めてオーバーバンキングを解決するのは不可能に近い」と指摘する。地銀改革がはらむ課題を小栗社長に聞いた。

――菅首相が地銀再編に踏み込む姿勢をみせています。地銀再生は地方経済活性化の第一歩となりますが、なぜこれまで放置されてきたのでしょうか。

「地銀改革は長年の懸案ですが実行に移すのが遅すぎた感があります。課題となっているのは銀行数の多さ、『オーバーバンキング』です。10年前ならまだ残っていた地銀再編のメリットも、現在ではほとんどありません」

「近年はインターネットバンキングの普及により経営資源の軽量化が進んでいます。そこで地銀が一緒になっても固定費用が重くなるだけです。そもそも、この10年で地銀の体力は大幅にそがれました。これほど市場環境が悪い状況で合併を促しても、他行を吸収する体力を残した地銀はほとんどありません」

「地銀再生の動きは過去から続いていますが、自発的に改革に取り組む地銀が少なかった。高度経済成長期のビジネスモデルから脱却できなかったからです」

「かつては国が金利水準を保っていたおかげで、地銀は国債買いによる『イールド・ハンティング(利回り追求)』で容易に利ざやを得ることができました。そのため地銀は大胆な経営改革に踏み出さず、新規事業を興す人材も育ててこなかったのです。変化に鈍感な地銀の尻をたたくべく、国は10年も前から改革を促してきました。その過程で『優等生』と呼ばれたスルガ銀行の不正融資問題が発覚するなど、改革は迷走しました」

「日本は少子高齢化が進んでいます。だいぶ前から地銀は、旧来の事業のみでは収益が厳しくなると分かっていた。それでも地方の盟主であるが故に、時代の変化を直視してきませんでした。『規制があるから』などと言い訳をして抜本的な改革に手をつけなかった。実行できた改革といえば、人件費を減らすなど縮小均衡の経営です。地銀の改革は国や他業種企業などによる外圧がなければ、進めるのは不可能に近いでしょう」

■預金残高の増加が経営の重荷に

――東北地方にある地方銀行の運用担当者から「自然災害や経済危機の度に支援金などが預金残高に積み上がる。預金が積み上がっても本業の収益が少なければ資本金が増えず、自己資本比率の低下はリスク許容度も下げるため、経営の選択肢が狭められる」と聞きました。地銀の経営はリスクを取りにくくなっているのでしょうか。

「いずれ預金者に返す預金は銀行にとっては負債となります。地方銀行の預金残高は過去10年をみても増え続けています(全国地方銀行協会の2019年度の預金額は64行、単体ベースの平均残高で272兆7154億円となり、過去10年で約66兆円増加している)」

「東日本大震災では数十年かけても消化できないほどの資金が地方にばらまかれました。今回のコロナ禍でも1人10万円の特別定額給付金をそのまま預金に置いておく人が多く、預金残高が膨らんでいるでしょう」

「実際、全国地方銀行協会に加盟する地銀の自己資本比率(国内基準行54行)は、10年度に11.58%だったのが19年度は9.46%に低下しています。預金残高が増えても業務による収益が減っているため、自己資本は漸減傾向が続いています」

「これでは、地銀はリスクを取った経営にかじを切るのは難しい。IT(情報技術)や流通などの異業種が金融業に参入しており、銀行経営の根幹だった決済業務も新規プレーヤーに奪われている。それでも、効果的な手立てを打てていないことからも分かるでしょう」

「地銀の武器は地域での信用力ですが、それを生かしている地銀は少ない。地域企業とのコミュニケーションが不十分だからです。例えば企業への融資ならば、経営者とじっくり話しながら人柄を判断する。加えて事業性を評価して融資の中身を吟味するのが本筋です。しかし、企業のリスク評価はスコアリングによる客観的な判断が主流になった。経営者との時間をかけた対話は非生産的と見なされ、銀行員は地域企業に足を運ばなくなった。情報は入らなくなるし、信用力が失われるのも当然です」

――菅首相は就任後、全国の地銀に出資して連合をつくる構想を進めるSBIホールディングスの北尾吉孝社長に連絡を取っているようです。民間企業が旗振り役となる地銀改革は再編の起爆剤となるのでしょうか。

「地銀の統廃合を国からの圧力で進めた場合、その影響は計り知れません。仮に金融庁が収益力の乏しい地銀に業務改善命令を迫り、その結果として廃業となった場合には、金融システムにマイナスの影響が及びます。取り付け騒ぎになることはないでしょうが、経営が厳しい他の地銀も格付けが下がるからです。ですからインターネット金融大手で民間企業のSBIが体力のない地銀に出資する方法は、地銀改革の一つの策になると思います」

「ただ、SBIが地銀の連合をつくる構想について、参加する銀行は最大10行になると聞いています。出資できる数にも限りがあるので、人口減少に悩む地方のオーバーバンキングが適切な場所で解決できるかは未知数です。また、SBIは出資者ではありますが、地銀同士の統廃合にどこまで参画できるかは未知数です。地銀の『再編』を考えると、出資では限界があるのではないかとみています」

■地銀は本来「町のかかりつけ医」のような存在

――地銀が再生するにはどのような変化が必要なのでしょうか。

「地銀は本来『町のかかりつけ医』のような存在です。地域の日々の経済活動が円滑に回るように手立てし、手に負えない大きな課題は『大病院(メガバンク)』を紹介する機能が求められています。目下はコロナ禍によって傷ついた中小企業を数年かけて再生させる事業でしょう」

「地域金融機関としての存在意義を問い直して収益モデルを再構築しなければなりません。これまで地銀は『地方大名』でしたから、統廃合には否定的な態度を示しながら、旧態依然とした経営で生き永らえてきました。しかし、預貸業務で食えない状況はもう10年も続いているのです」

「地銀の悩みは『預金残高をどうやって減らすか』になっています。日銀当座預金にブタ積みした(利益を生まない)お金をどうするか。自己資本比率の低下で過大なリスクを取れない状況に陥っているのは分かりますが、しっかりしたビジョンを持った資金運用を考え、そのための人材育成にコストをかけなければ、外圧による強制的な変革に甘んじるしかないでしょう。個々の地銀が社会に存在意義を提示できなければ、淘汰されるのは仕方がないのだと思います」

(日経ビジネス 江村英哲)

[日経ビジネス電子版2020年9月29日の記事を再構成]

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