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大戸屋、TOBで敗北 戦いの場「キッチン」にあらず

日経ビジネス
2020/9/14 2:00
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大戸屋HDはコロワイドに敗北した。早くも臨時株主総会の開催を請求されている

大戸屋HDはコロワイドに敗北した。早くも臨時株主総会の開催を請求されている

日経ビジネス電子版

外食大手のコロワイドは9日、定食チェーンの大戸屋ホールディングス(HD)への敵対的TOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。コロワイドの持ち株比率(議決権ベース)はこれまでの19.16%から46.77%に高まり、子会社化がほぼ確定したと言える。大戸屋HDはコロワイド傘下になると「店内調理やおいしさが維持できなくなる」と訴え抵抗してきたが、株主を引き留めることはできなかった。今回のTOBの戦いの場は株式市場、つまり「マーケット」であって「キッチン」ではなかったのが敗因だろう。

大戸屋HD買収を目指したコロワイドに対し、大戸屋HDは一貫して「コロワイドのセントラルキッチンが導入されれば、店内調理の良さ、大戸屋の味が失われてしまう」(窪田健一社長)と株主に訴え続けてきた。創業者精神とも言える、店内キッチンで生み出される味へのこだわりを前面に押し出して戦ったとも言える。

しかし「大戸屋で食事をする消費者=株主」ではない。もちろん、大戸屋で食事を楽しむ株主も多いだろうが、大戸屋で一度も食事をしたことがなくても株主にはなれる。実際にいたはずのそういう株主には、大戸屋HDの訴えは何も響かないということになる。逆に大戸屋の愛好家でその主張に賛同しても株を持っていなければ今回のTOBでは蚊帳の外、つまり大戸屋HDを応援しようにもできない。

選挙に例えるならば、大戸屋HDは選挙権を持たない未成年にも一生懸命アピールする一方、肝心の投票権を持つ一部の人には全く刺さらない主張をしてきたということになる。

対するコロワイドは大戸屋HDの株主をピンポイントで攻めた。そのために用意した「ごちそう」はプレミアム。TOB価格は開始直前の株価に46%も上乗せした1株3081円だった。このごちそうは確実に大戸屋HDの株主だけを射抜くものだった。

大戸屋HDも株主に絞ったアピールが皆無だったわけではない。コロワイドから経営陣刷新を狙った株主提案を受けてプロキシーファイト(委任状争奪戦)を繰り広げていた5月下旬、将来の成長戦略を記した中期経営計画を公表した。メニューの数や価格構成を変えて直営店の収益改善を進め、別業態や海外事業の拡大で復活を果たすというプランだ。

だが今後3年で売上高を17%伸ばすという中期計画を株主はうのみにしなかった。既存店の低迷で売上高は2019年3月期に2%減、20年3月期には4.5%減となった。そして復活に向けた中計初年度となる4月以降の既存店売上高を前年対比で見ると、コロナ禍もあり48.4%減(4月)、40.4%減(5月)、30.0%減(6月)、28.6%減(7月)と苦しいままだ。少しずつ改善傾向にはあるが「とても17%増収を信じられる状況ではない」(大戸屋HDの個人株主)。絵に描いた餅を株主は食べなかった。

TOBという株式市場を土俵にした戦いで、確実にターゲットだけを捕捉し、魅力的な手を打ったコロワイドと、それができなかった大戸屋HD。あくまでも味を訴え、戦いの場をキッチンに設定していては勝ち目がなかった。

大戸屋は手作り感を強く訴えて勝ち抜こうとしていた

大戸屋は手作り感を強く訴えて勝ち抜こうとしていた

■コロワイド側は資本市場のプロ

そもそもコロワイドはM&A(合併・買収)巧者でもある。野尻公平社長は岡三証券出身で証券市場を熟知している。そして今回コロワイドの現場で陣頭指揮を執り、大戸屋HDへの株主提案(取締役選任議案)でも候補に名を連ねた澄川浩太取締役は、監査法人トーマツやM&A助言などを手掛けるみずほコーポレートアドバイザリーを経てコロワイドに入社しており、これまた資本市場のプロだ。

赤字で苦戦する大戸屋HD株に46%ものプレミアムを付けたことは、今後の「のれん」を膨らませるリスクこそ抱え込むが、今回のTOBの動向だけを考えると有効な「ホワイトナイト(白馬の騎士)封じ」だった。大戸屋HDの買収に関心を寄せる企業や投資ファンドがないわけではなかったが、みな「46%のプレミアムを上回る金額ではペイしない」(国内投資ファンド幹部)としてホワイトナイトになってくれなかったからだ。

コロワイドは9日、大戸屋HDに対し、9月30日を基準日とする臨時株主総会の開催を請求した。議案は現取締役11人の解任と新取締役7人の選任だ。仮に大戸屋HD側が9月15日までにコロワイドの要求をのむ形の取締役人事案を公表すれば、現取締役の複数名の留任も認める考え。コロワイドは「早期に役員を派遣して経営改善に取り組みたいので、臨時株主総会の開催を請求した。素早く大戸屋の再建に取り組むには既存の役員の力も必要と考えているので、現経営陣との協議を打診している」とコメントした。

ただ、コロワイド関係者は「TOBへの強烈な反対声明などを見れば大戸屋HDの現経営陣が残るという選択肢はないと思う。仮に協議があったとしても決別するだろう」と話す。株主総会の開催請求も「協議を打診しても無視されては困るので、タイムリミットを設ける意味で行った」という。

大戸屋HDが抵抗を続けた場合は再び臨時株主総会の場で戦うことになる。行使された議決権の過半数を取ることが取締役選任の条件だが、コロワイドが47%弱を握った今、議決権行使比率(6月は72.9%)を考えると6月の定時株主総会とは違ってコロワイドの勝ちは見えている。

そして経営権を握ってしまえば、実質支配力基準のもと、47%弱の株式保有でも大戸屋HDを子会社化することができるというわけだ。コロワイドが水面下で買収を打診したとされるのが昨秋。そこから1年近くかかった攻防戦はようやく終わりを迎えようとしている。

(日経ビジネス 奥貴史)

[日経ビジネス電子版 2020年9月10日の記事を再構成]

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