【海運大手3社の一角】自動車運搬船のほか、資源を輸送するばら積み船に強い。
川崎汽船は31日、商船の運航中に排出される二酸化炭素(CO2)を船内で回収する取り組みを始めると発表した。三菱重工業傘下の三菱造船と2020年度内に回収装置を共同開発し、21年夏ごろに東北電力向けに運航する石炭運搬船に搭載する計画だ。実験を通じて小型化や安定性向上を図り、実用化を急ぐ。
火力発電所などで使われている回収装置を小型化し、船の機関室の横に設置する。CO2を含んだ排ガスを一度、吸収液と同化させた後に、加熱して再分離し、それぞれ回収する仕組みだ。実験は回収装置が正常に作動するかを確認することが目的で、装置の回収能力は排出量の1000分の1程度になる。将来は同2~3割以上回収できるようにしたい考えだ。
回収したCO2は人工合成燃料の原料や炭酸ガスの消火器など工業用途に転用できないかも検証する。亀山真吾先進技術グループ長は「船上での回収は世界初の試みだ」と意気込んでいる。
海運業界では50年に08年比での温暖化ガス排出量を半分にする目標を掲げている。目標を達成するためには早期にCO2排出が0の船舶を開発する必要があり、メタンや水素など代替燃料の開発を急ぐ。一方、これらの開発にはメドが立っていないのが現状で、重油や液化天然ガス(LNG)といった既存の燃料でも排出を減らせる仕組み作りが必要だと判断した。