【総合建機大手】油圧ショベルに強み。鉱山機械も拡充。
新型コロナウイルスの感染拡大で多くの日本企業のサプライチェーンが寸断された
新型コロナウイルスの感染拡大が世界に広まり、多くの日本企業のサプライチェーン(供給網)が寸断された。コロナ・ショックによる生産活動への影響はどの程度だったのか、危機に備えてサプライチェーンをどう見直していくのか。日経ビジネスが主要企業に緊急アンケートを実施した。
アンケートを実施したのは7月で、自動車や電機、製薬などの116社から回答があった。まず、新型コロナで生産活動に支障があったかどうかを聞いたところ、支障が「あった」と答えた企業は116社のうちの83.6%(97社)だった。
影響が最も大きかった月について、前年同月と比べた生産量の水準を聞くと、回答した77社のうち最も多かったのは「80%以上」との回答で、42.9%(33社)あった。一方で、8割以上の減産にあたる「20%未満」と答えた企業が13.0%(10社)あった。進出する国や地域によっては労働者の出勤や工場そのものの操業を止められたケースも多かった。
米中貿易戦争のような国家間の対立や、世界各地で頻発する天災などを踏まえて、グローバルに展開する日本企業はその都度、リスク回避に向けてサプライチェーンを磨いてきた。だが、新型コロナが最初に報告された中国・武漢から、瞬く間に欧米や中南米、アフリカへと感染が拡大。ある機械メーカー幹部は「迂回路も絶たれて身動きが取れなくなった」と振り返る。
■「コロナで影響なし」でもサプライチェーン見直す企業も
コロナ・ショックを経てサプライチェーンの見直しを検討しているかどうかについて聞いたところ、「対策を決めて具体的に動き出した」との企業が、回答した109社のうちの28.4%(31社)に上った。最も多いのが「対策を検討中」で43.1%(47社)だった。この2つの回答に「これから検討する」を合わせると、80.7%(88社)に上る企業がサプライチェーンを見直すという結果になる。
コロナの感染拡大で生産活動に支障がなかったと回答した19社のうち、13社がサプライチェーンの見直しをすでに実行しているか、もしくは検討すると回答している。直接の影響がなかったとしても、第2波、第3波が世界を襲う際には影響が出る危険性もあり、BCP(事業継続計画)の観点から対策を考える企業もあるようだ。
企業はどのような対策を取ろうとしているのか。上記の80.7%にあたる企業に複数回答で聞いたところ、浮き彫りになったのが仕入れや生産の複線化だ。「複数の企業から材料・部品を調達する」を選んだ企業が56社と最も多かった。次いで、43社が「同じ製品を他の拠点でも生産する」を選んだ。「他の拠点でも生産しやすい製品設計にする」との企業が14社あり、サプライチェーンを見直す作業は開発の上流にまで及んでいる。
42社が「調達先をさかのぼって情報を把握する」と答えた。海外からの部品供給が止まった原因を突き止められず困惑した企業が多かったことの表れともいえる。「海外の供給元が取引している2次、3次企業の生産が止まったが、その情報が入ってこなかった」(電気機器メーカー)。海外を含む取引先の「見える化」もサプライチェーン強化のキーワードとなっている。
在庫をできるだけ持たないことによって無駄のないサプライチェーンを目指してきた企業にとっても、新型コロナは大きな問題を投げかけた。「材料・部品の在庫を積み増す」との回答が30社、「製品在庫を積み増す」が21社あった。在庫の積み増しは業績にとってマイナスとなるが、それでもリスク対応を強める姿勢が見て取れる。
■「国内回帰しない」83%に
人件費や消費地への輸送費が安いことから海外にサプライチェーンを築いてきた日本企業。政府は国内回帰をサポートすべく、今年度に2200億円の予算を計上した。だが、海外に自社工場を保有する企業(103社)に国内回帰の意向の有無を聞いたところ、83.5%(86社)が「検討していない」と答えた。
「検討している」を選んだのは2.9%(3社)にとどまった。コストが高い上、地震や水害など災害のリスクがあることを意識する企業企業もある。各社はコロナ・ショックを経て、サプライチェーンのさらなる強靱(きょうじん)化を図るが、国内回帰という選択肢を検討するのは少数派だ。
(日経ビジネス 白壁達久)
[日経ビジネス電子版2020年8月4日の記事を再構成]