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伊藤忠は原則出社に 在宅ワーク定着の壁とは
グロービス経営大学院教授が「現状維持バイアス」で解説

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新型コロナ
コラム(ビジネス)
2020/7/3 2:00 (2020/7/3 7:28更新)
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作業スペースの確保やオンライン・ツールの支給など環境整備が重要だ

作業スペースの確保やオンライン・ツールの支給など環境整備が重要だ

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、都市部を中心にオフィスワーカーの多くが在宅勤務になりました。感染のピークがいったん過ぎた今、在宅勤務を継続するかどうか、企業の対応は分かれています。伊藤忠商事ダイキン工業は生産性の低下やコミュニケーションを考慮して通常の出社に戻し、日立製作所などは継続を決めました。

企業にとって在宅勤務を推進するメリットは、通勤時間の削減による社員の生産性向上や柔軟な働き方、多様な人材の獲得などです。こうした利点があるにもかかわらず、在宅勤務を元に戻そうする企業も少なくありません。いったい何が在宅勤務の定着を妨げるのでしょうか。グロービス経営大学院の金子浩明教授が、「現状維持バイアス」の観点で解説します。

【解説ポイント】
・現状変更のリスクを避ける習性が壁に
・雑談できる「インフォーマルな組織」が重要
・リアルとオンラインで交流機会を

■自宅の環境整備が大切

在宅勤務を始めて最初に感じる不安は、仕事環境が整っていないことです。自宅はオフィスと違って通信環境や執務スペース、机や椅子などの備品などが整備されていません。子ども部屋や寝室を緊急の仕事部屋にした人にとって、在宅勤務の継続は住環境の見直しを伴います。

しかし思い切って仕事環境を整えてしまえば、こうした問題は無くなります。この点については企業が手当などで支援すれば解決可能です。

日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は、日本は欧米などに比べて住宅事情がテレワークに適していないので、作業スペースの確保やオンライン・ツールの支給など環境整備が重要だと述べています。ちなみに、日本電産では在宅勤務を導入した当初、生産性が3分の1まで落ちたそうです(定時株主総会後の記者会見より)。

■現状変更を避ける、人の習性

ここは経営者の判断が分かれるところです。生産性を向上させるために、元の仕事スタイルに戻すのか、それとも在宅勤務を前提に生産性を向上させるのか。永守氏は「現状維持」ではなく「現状変更」を選びました。

人は現状維持と現状変更の選択に直面したとき、「現状を変更したことで、現状を失うことを後悔するだろう」と想像しがちです。そして、その損失リスクや後悔を回避しようと現状維持を選ぶ傾向があります。これは人間の習性のようなもので「現状維持バイアス」と言われます(Samuelson&Zeckhauser,1988)。

在宅勤務への変更で会社が失うものは何でしょうか。それは後悔するようなことでしょうか。そして、それは在宅勤務への変更で得られるメリットより大きいのでしょうか。

在宅勤務でまず頭に浮かぶのは、自然発生的でインフォーマルな交流の減少です。典型例が雑談です。職場でバッタリ会って、じゃあ今日は飲みに行こうか、ランチに行こうか、というようなことも起こらなくなります。

組織論の大家であるC・I・バーナードは、こうした人々の個人的な交流や、集団のつながりを「インフォーマルな組織」と呼びました。社内の自然発生的な仲良しグループによる雑談をイメージするといいでしょう。彼によると、会社(フォーマルな組織)にとってインフォーマルな組織の存在は不可欠です。個人にとって仲間との交流は大切なように思いますが、なぜ会社にとって不可欠なのでしょうか。

■組織の活力はインフォーマルな組織が支える

バーナードはインフォーマルな組織には次の3つの働きがあると指摘しています。

(1)コミュニケーションを促進する働き

インフォーマルに人々が交流し、お互いの理解が進むと、フォーマルな組織(会社)おけるコミュニケーションも円滑に進むようになります。なぜならコミュニケーションの基盤は相互理解にあるからです。コミュニケーションは公式なルートよりも、こうした非公式なルートに依存しているといいます。

(2)凝集性(一体感)を高める働き

有効的なインフォーマルな交流はフォーマルな組織の魅力となり、人々の貢献意欲は高まります。また、共に活動する人々の間に信頼感が育ってくると、個人の利害だけでなく、組織自体の利害を共有している感覚が高まります。これらはフォーマルな組織の凝集性を高めます。

(3)個人の人格を統合させる働き

フォーマルな組織において、個人は組織の一機能であることを求められます。また、会社組織は、売り上げや利益などの「非人格化された共通目的」に従って活動します。こうしたことは個人の人格を分裂させる可能性があります。言い換えれば、自分が独立した1人の人間として認められていないという感覚です。そこでフォーマルな組織の統制を離れたところで、インフォーマルに人的な交流や相互作用の機会を持てれば、個人の人格的な統合感が守られます。

以上のように、会社というフォーマルな組織はインフォーマルな組織によって活気づけられています。一方がなくては他方が存在しません。

■経営陣の多くはインフォーマルな世代

私の推測ですが、在宅勤務に反対する経営陣が恐れているのは、インフォーマルな組織の衰退ではないでしょうか。「真面目な雑談が減ることへの影響」を口にする人が典型です。

歴史ある大企業の経営陣、その多くは50~60代と思います。こうした方々の多くは、毎日のように職場の上司や同僚と飲みに行き、社員仲間でのゴルフや社員旅行、運動会などを通じて、インフォーマルで濃密な人間関係を築いてきた世代です。

無礼講という言葉は、インフォーマルな関係に切り替わるサインでした。こうした営みがフォーマルな組織にとって重要なことは、肌感覚で理解しています。そのため、働き方に関する現状維持バイアスが大きくなるのです。

裏を返せば、在宅勤務でもインフォーマルな交流が活発に行われるなら、こうした人たちの懸念は低減します。オンライン飲み会などは解決策のひとつです。しかし、決められた時間に決められた参加者が集まるため、偶然の出会いや自然発生的な雑談は起こりにくいです。

最近では、参加者が仮想空間のテーブルを自由に移動しながら会話できるウェブ会議システムも出ています。こうした技術が進化すれば、いずれ在宅勤務を阻む壁が消えるかもしれません。しかし、それは少し先の話です。

■リアルとオンラインの融合目指す

現時点における解決策は、リアルとオンラインのハイブリッドだと思います。在宅勤務を基本にしつつ、インフォーマルなコミュニケーションを促す目的で、物理的に顔を合わせる機会を作るというものです。

注意しなければならないのは、社内のヒエラルキーや会社での人格を強く意識させられる場は逆効果ということです。ヒエラルキーの上に立っている人にとっては心地いいかもしれませんが、インフォーマルな組織の生成にはマイナスです。同じ理由で、インフォーマルな場づくりにたけた人材の価値は、これまで以上に高まるでしょう。

在宅勤務の普及は、まだ初期段階です。日本企業が在宅勤務を日常的にできるかどうかは、在宅勤務下の「インフォーマルな組織」を活性化させられるかにかかっています。今後の各社の取り組みに注目です。

かねこ・ひろあき グロービス経営大学院教授。東京理科大学院修了。リンクアンドモチベーションを経て05年グロービスに入社。12年より現職。科学技術振興機構(JST)プログラムマネジャー育成・活躍推進プログラム事業推進委員、信州大学学術研究・産学官連携推進機構信州OPERAアドバイザー、長岡技術科学大学 卓越大学院プログラム 教員などを務める。

「現状維持バイアス」についてもっと知りたい方はこちら

https://hodai.globis.co.jp/courses/150b4850(「グロービス学び放題」のサイトに飛びます)

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