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束ねたガラス溶かし球体 山月工房の和泉蜻蛉玉
匠と巧

関西タイムライン
2020/6/29 2:01
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粉状のガラスを玉に溶かし込み、千枚通しで線を刻むと模様が生まれた=目良友樹撮影

粉状のガラスを玉に溶かし込み、千枚通しで線を刻むと模様が生まれた=目良友樹撮影

大阪・泉州北部では奈良時代以前よりガラス玉が作られ「泉州玉」「さかとんぼ」と呼ばれていた。明治期に製造技術が確立、現在の大阪府和泉市周辺はガラス玉の産地となった。昭和に入り安価な中国産におされ担い手が少なくなるなか、伝統的な技を受け継ぐのが山月工房(和泉市)だ。

バーナーから噴き出る火に、数本束ねた色つきのガラス棒の先を近づけ、割れないよう徐々に熱していく。ゆっくりと溶け出したガラスを、先端に剥離剤を塗った細いハリガネを回転させて巻き取る。

1本のガラス棒を溶かしてガラス玉にする場合に比べ、数本束ねることで玉の表面に色の変化が出やすい。ただ溶け出すガラスの量が多くなるとでこぼこになりやすく、きれいな球体にする技が求められる。同社代表で大阪府伝統工芸士の松田有利子さんは「ガラス棒の位置や火の具合の調整に気を配る」と話す。

砕いてすり鉢などで粉にした色とりどりのガラスを玉に付着させる。加熱しながら千枚通しの先で表面をひっかくように動かすと、線が刻まれた。灰に入れて冷やし、水に漬け玉を回してハリガネから抜き取る。

ひもを通す穴が開いたガラス玉「とんぼ玉」が姿をあらわした。トンボの複眼に似ているのが名の由来という。商品ごとに玉の表面に花柄など様々な模様が付けられる。自社開発した板に玉を押しつけ、球体以外の形にも仕上げられる。

ガラス玉の技法は、世界遺産・平等院鳳凰堂の阿弥陀如来坐像(国宝)の装飾具の瓔珞(ようらく)の復元に使われた。本物を手本に、緑や青などのガラス玉を約2カ月で完成させた。

松田さんは幼い頃から先代である父の工房に通った。地元独自の技法を継承する職人が父のみとなり「このままでは伝統が途切れてしまう」との危機感から後を継ごうと決心した。伝統の技を歴史に残そうと文献などを調べて約10年。和泉蜻蛉(とんぼ)玉として2002年に大阪府の伝統工芸品の指定を受けた。

現在は玉を使ったブレスレットや根付けストラップなど20種類ほどを取り扱う。世界遺産の百舌鳥(もず)・古市古墳群の前方後円墳をかたどったお香立ても開発。府立堺工科高校定時制の生徒らが手掛けたお香とセットにした商品は、大阪府の19年度大阪製ブランドに認定された。

一連の商品は高島屋の堺店(堺市)で販売している。新型コロナウイルスの感染拡大で同店が一時的に休業したことを契機に、年内には自社ホームページでも販売を始める方針だ。

疫病の流行を予言するとされる妖怪「アマビエ」の体の一部を模様に採用した商品も売り出す。銀箔を使い伝統の技を応用して生み出す。開発のアイデアは長女の有綺さんが出した。看護の仕事をしつつ、工房に顔を出し教えを受けている。いずれ家業を継ぐつもりだ。有綺さんは「母のように、妥協せず一つ一つを大切につくる職人になりたい」と話す。

(皆上晃一)

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